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『医師はなぜ安楽死に手を貸すのか』

McKhann, Charles F. 1999 A Time to Die: The Place for Physician Assistance
= 杉谷 浩子 訳 200003 中央書院,350p.

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last update: 20151017

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■McKhann, Charles F. 1999 A Time to Die: The Place for Physician Assistance=杉谷 浩子 訳 200003 『医師はなぜ安楽死に手を貸すのか』,中央書院,350p. ISBN-10: 4887320817 ISBN-13: 978-4887320819 [amazon][kinokuniya] et

■内容

(ブックレビュー社)
回復の見込みもなく苦痛にさいなまれる末期患者の死を選ぶ権利と医師の義務について,問題提起を行う 安楽死は,別名尊厳死ともいわれる。癌の末期のようにもう手を施しても治る見込みがなく,心身両面にわたって痛み,苦痛にさいなまれているような場合でも,医の倫理としては1分でも1秒でも長生きさせるのが医師の務めということになる。しかし,最後まで人間らしく尊厳を保って生きたい,酸素,栄養,薬剤をチューブで与えられ,苦痛の中で死を迎えるのはいやだという意識が患者の間に強くなってきている。最後まで人間らしく生き,人間らしく死んでいくという意味で尊厳死というのである。
 安楽死には,積極的安楽死と消極的安楽死がある。消極的安楽死というのは,末期に積極的に治療をしないとか,栄養を与えないとか,直接死の引き金を引くのではない,結果として死を早めさせる安楽死をいう。これに対して積極的安楽死というのは,患者が医師に対して死を要求し,それに基づき医師が死の引き金を直接引く安楽死をいう。消極的安楽死はこれまでかなり行われるようになってきているが,積極的な安楽死は,医師の殺人罪につながる行為として医師は行ってはならない行為とされてきた。
 しかし,本書の筆者は,自ら死の決断を下した患者に対して,医師が自殺に手を貸すことの合法性を訴え,法律の改正の必要性を主張している。世間では安楽死を支持する声が高まり,医師の間にも賛成派が大勢いるとしている。尊厳の問題は日本よりも欧米で強く求められるだけに,安楽死についても積極派が多いことは確かだ。また安楽死の問題には,末期治療が経済負担が大きいことも絡んでいる。無意味な延命にばく大な経費をかける意味があるのかという問いかけもある。
 筆者は,自殺は長い間神や自然,社会に背く恥ずべき行為と考えられてきたが,必要な例外として合理的自殺があると主張する。終末期の医師の役割は緩和ケアと安楽死であるとしている。30人もの終末期の患者とインタビューし,安楽死の実際の例を比較し,法制化した場合の悪用の恐れなども指摘しながら最終的には適切な法律を作ることが必要不可欠であると主張している。
(日経BP社 医療局 澤井 仁) (Copyrightc2000 ブックレビュー社.All rights reserved.)

■目次

第1章 患者が望むこと
第2章 合理的自殺―論点となる問題
第3章 助けを求めて―医師の介助
第4章 ひとりで死ぬか、医師の手を借りて死ぬか―尻ごみするアメリカ社会
第5章 医師の懸念
第6章 国民の懸念―悪用と危険な坂道
第7章 法律から見た安楽死
第8章 患者の訴えが医師や政府を動かす

■引用

■書評・紹介

■言及



*更新:小川 浩史
UP: 20120826 REV: 20151017
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