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『「終のすみか」は有料老人ホーム』

滝上 宗次郎 19981201 講談社,278p


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滝上 宗次郎 19981201 『「終のすみか」は有料老人ホーム』,講談社,278p. ISBN-10: 4062093308 ISBN-13: 978-4062093309 [amazon][kinokuniya] ※ a06

出版社/著者からの内容紹介
人生最期の日をどこで、どうやって迎えるか。
「介護」の大問題を自ら解決し、より充実した積極的人生を送るための生き方提案。有料老人ホームにはこんなにたくさんの長所がある。

内容(「BOOK」データベースより)
人生最期の日をどこで、どうやって迎えるか。「介護」の大問題を自ら解決し、より充実した積極的人生を送るための生き方提案。有料老人ホームにはこんなにたくさんの長所がある。

第1章 思うままに生きる幸せ
第2章 入ってみなければわからないこと
第3章 質のよい介護、悪い介護
第4章 要介護者の声は聞こえない
第5章 介護の誇大広告にだまされるな
第6章 安心できる有料老人ホームの選び方
第7章 介護サービス情報の正しい読み方
第8章 知っておきたい介護保険のこと
第9章 少子・高齢社会で何が起きる

第1章 思うままに生きる幸せ

 「自分自身で親の介護を体験した人で、作家や評論家、学者といった職業についている人は、必ずといってもよいほど、体験談を雑誌に載せたり、本にして出版したりしています。
 そのブームの口火を切ったのは、作家の有吉佐和子さんの痴呆老人をテーマにした『恍惚の人』でした。昭和四七年の出版です。[…]<0017<
 次いで、社会に問題を投げかけたのは、昭和五四年に出版された作家沖藤典子さんの『女が職場を去る日』だと思います。[…]
 作家以外の人たちによる介護の体験記が流行しはじめたのは、ここ一〇年ぐらいのことです。私は、これらの体験記は有料老人ホームの経営者としての仕事柄、手当たりしだいに呼んでいるつもりですが、私の記憶では、もっとも早く親の介護をめぐっての兄弟姉妹の葛藤を描いてみせたのは、週刊誌『アエラ』が、平成元年の敬老の日に出版した『老人を捨てるな』と題する臨時増刊号だったと思います。」(滝上[1998:17-18])

第3章 質のよい介護、悪い介護

 「第一章でもふれましたが、自分自身が親を介護した体験のある人で、作家や評論家、学者といった職業についている人は、かならずといったよいほど、体験談を雑誌に載せたり、本にして出版したりしています。[…]<0070<
 […]
 ですが、その一方で、介護を受けている高齢者自身が書いた本はありません。
 当然、痴呆の人は自己の体験を書くことはできません。文章を書くというのは、知的作業ですから簡単なことではありませんし、それ以上に体力が必要ですから、介護を受けている<0071<高齢者が書いた本は見当たりません。介護の内容がいいのか悪いのか、いわゆるユーザーからの評価がないのです。二〇〇〇年四月からの介護保険制度の実施を前にして、ホームヘルパーの数を増やせとか、施設が足らないとか大騒ぎをしていますが、肝心の介護の質については評価されてはいないのです。」(滝上[1998:72-73])

 「銀行員から有料老人ホームの経営者になったばかりの私が、業界のことを、いろいろと勉強しようとたくさんの参考書を読んでみても、やはりいいものをみつけることはできませんでした。
 ただ、一つ収穫がありました。大熊由紀子さんというジャーナリストが、新聞でも講演でも「寝たきりは、寝かせきり」だと繰り返し言っているのを知ったことです。」(滝上[1998:76])
 「私が、北欧諸国の介護と、そこに住む高齢者を、この自分の目でみたくて現地を訪れたのは、平成二年のことです。訪問を強力に支援してくれたのは、大熊由紀子さんと現在は神戸市看護大学教授をしている医師の岡本祐三さんでした。」(滝上[1998:77])
 *この時点で、滝上はこの2人に対して肯定的
 ↓
◇滝上 宗次郎 20010210 「(続)介護保険はなぜ失敗したか――21世紀の社会保障制度とは」,『週刊東洋経済』5677:78-81

 「なぜ厚生労働省は、市場規模の予測を極端に低く見積もるという過ちを犯したのか。それは、二つのアプローチの方法がともに間違っていたことと、二つの計算結果が偶然にも一致したからでもあろう。
 […]
 二つめのアプローチは、人口五〇〇万のデンマークでの総介護費用をそのまま一億二〇〇〇万の日本に置き換えるというものである。高根の花に見える北欧の福祉を日本でも実現できると説き明かし、デンマーク神話の端緒を開いた『デンマークに学ぶ豊かな老後』(岡本祐三著、90年、朝日新聞社)はこう語る。
−−訪問看護婦、ホームヘルパー、補助器具支給などの各種社会資源について、その項目だけみて、日本で「デンマークなみ」の老人ケアを実現しようとしたら、いわば「最低限度」の必要分として、「四兆円強かかるだろう」という結果になった。
 すなわち、四兆円強から施設介護の費用を除くと、在宅ケアは同じく年間約二兆円となる。そして「わずかな金額ではありませんか」と付け加えた。理想の福祉国がわずかな金額で維持できるはずはない、という矛盾にはまったく気づかなかったようである。筆者が前作で指摘したように、実際はデンマークのヘルパーは家事援助が主体であり、医療は不完全であるために高齢者が要介護である期間が相当に短いから、「わずかな金額」ですむのである。」
 「朝日新聞の社説は、長年にわたり歯の浮くようなデンマーク神話を増幅させながら、介護保険推進の世論をリードしてきた。訪問介護の混乱が誰の目にも見えてきた昨年9月15日の敬老の日には、デンマークでは施設をなくしてしまい、多数が在宅でケアスタッフによって「食事の介助」を受けている。国際的には、デンマークのような方向が当たり前、と訪問介護を一段と強調した。
 これでは、誰もがデンマークでは手厚い医療と介護があるために家族が同居していなくても家で死ねる、と思い込むのも無理はない。しかし、事実はそうではない。」


UP:20070319 REV:20080329
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