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『日本・収容所列島の六十年――その後の十年』

竹村 堅次 19981215 りん書房,390p.


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竹村 堅次 19981215 『日本・収容所列島の六十年――その後の十年』,りん書房,390p. ISBN-10: 4795273936 ISBN-13: 978-4795273931 \3150 [amazon][kinokuniya] ※ m

■内容

・(「BOOK」データベースより)
日本の精神科医療は、新精神保健福祉法のもとで地域精神保健福祉活動に脱皮する!病院経営管理者、精神科医、ナース、ほか職員、障害者家族、保健所、福祉関係者必読の書。

・(「MARC」データベースより)
日本の精神科医療は、新精神保健福祉法のもとで、地域精神保健福祉活動に脱皮する-。精神科医療に長年携わってきた著者が語る、日本のノーマライゼーション運動とメンタル・ヘルスの歩みと、今後の展望第3弾。

■目次

第1部 その後の十年
 一 開講の言葉
 二 講義 最近の病院精神医療
 三 病院の不祥事件あとを絶たず
 四 論説 日本の精神保健活動の地域化を阻んだものは何か
 五 講演 市民にとって心の健康とは何か
 六 お別れ講演 私の生きた時代と私の歩いた道、これからの道
 七 随想 戦後五十年、マインド・コントロール
第2部 未来像
 講演 精神科医療の現状から患者・家族の立場を考える
 講演
 精神保健福祉の明るい未来像
 病棟機能分化の経過とチーム医療の完成に向けて
 ほか
第3部 回顧
 ケネディ教書とライシャワー大使刺傷事件
 私の家族会運動
 新しき医療の展開を求めて
 ほか

■引用

◆六 お別れ講演 私の生きた時代と私の歩いた道、これからの道
 19980320 東京武蔵野病院にて
 (財)精神医学研究所業績集 1997年に収載 →79-121

 「烏山紛争の真相
 あれは、要するに反体制運動、それが次いで反精神医学になったときにどうなるかというと、精神病は社会が作るというわけです。病院に入院させるとかえって悪くなる。全部解放すべきだ。そして世の中がめちゃくちゃになろうと、彼らの自由にやらせろ。自殺したい患者は死んでいいと、そういう極端なことを言っていました。あの連中に任しておくと何がおこるかわからんということだったんだけれども、私は大学紛争の中にいたわけではなくて、烏山の中でリハビリのいい態勢を築いていたという立場にいたんですね。そこを目指していけばいいと考えて、いわゆる市中病院をねらってきたのが東大紛争の中心にいた精神科を目指す連中だったのです。共産主義を信奉してた連中ですね。それで医者の方も大変になった。その当時先輩の西尾院長の時代だったんですが、医者が一〇人いると、五人はその連中、五人は我々といったことで、たえずはりあった形でしてね、精神病の診断能力がまだつかないうちにあのインターン闘<0116<争をやったあと、何でも反対でやってきて、日本の国を改革するんだという具合でしたね。今の精神病院はなっておらん、俺たちに任せろという気負いで、もう無法なことをやりだしたんてすね。それが烏山紛争の発端であったわけです。で、烏山病院の紛争は、その中の一人の若年医師を解雇して八年も裁判が続いたのですが、いまだに真相が分からない人がたくさんいると思うんです。
 もう今になってみると、ある程度話さなければわからないだろうから話しましょうということをいってもいい時代だと思うんだけれども、私はね、声を大にして実は精神科の医者が問題なのだといっているわけです。精神科の医者は一番常識がないといけない。それから一番物を見るのが正しい中立の立場にいなくちゃいけない。その人たちが精神的に偏ったらどうなるか、ということを言っているのです。理論的な根拠がどうだこうだというんじゃなくて、日常の生活態度において、精神科医として何をするかということがですね。烏山病院の紛争の真の発端であり、またのちの世に残す忠告であったわけです。ですから連中がね、どんな思考や理論でやろうと、共産主義であろうと、社会主義であろうと、何でも構わないけれども、まずちゃんとした勉強をしろということで叱ったのだけれども、一人の医者がおかしくなってしまって、ワーッと躁状態になってね。それに同調むしろそれを利用、患者を完全開放する。それを誰もとめられなかった。とめようと思っても説得不可能。だからあとで私いろんな検討をしてみたんだけれども、あの躁状態になる時というのは絶対自分では止められないんですね。前から予防しよ<0117<うと思っても、薬飲んでよく寝ろとかいってもだめ。分裂病の場合はどうかというと、薬の飲ませ方を非常に注意深くやっているでしょう。その効かせ方もね、副作用がないように飲ませればいいんですからね。だが躁欝病は、仏教でいえば、業だというんです、業。こういうことで、問題は、朝日新聞が増幅して、世の中に、いままでの精神病の治し方は間違ってると報道したのです。あの若手医師たちの反精神医学理論は、明らかに誤りだったのだが、烏山紛争はこれだけでは起こらなかった。それが真相なのです。」(竹村[1998:116-118])

■言及

◆立岩 真也 2013 『造反有理――精神を巡る身体の現代史・1』(仮),青土社


*作成:山口 真紀
UP:20110331 REV:20110730, 20130805
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