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『なぜ人を殺してはいけないのか?』

永井 均・小泉 義之 199810 『なぜ人を殺してはいけないのか?』,河出書房新社,148p.


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永井 均小泉 義之  199810 『なぜ人を殺してはいけないのか?』,河出書房新社,シリーズ・道徳の系譜,148p. ISBN-10:4309242103 ISBN-13:9784309242101 \1470 [amazon][kinokuniya]  c0112

■内容

中学生に「なぜ人を殺してはいけないの?」と聞かれたら、何と答えますか。ニーチェなら何と答えるか、哲学に何ができるかなど、日本を代表する哲学者2人が、真っ向からぶつかり合うスリリングな哲学入門。

■目次

第1章 道徳は殺人を止められるか? 対話
第2章 きみは人を殺してもよい、だから私はきみを殺してはいけない
第3章 なんで殺ったらいけないのかだって? 殺ってもイケルしイケテルのに 95-148

■引用

◆「道徳は殺人を止められるか?」,永井・小泉[1998:7-56]

 「永井 善悪ということがはっきり言えなくなったのくやむを得ないから病だという形でとらえるということだと思うんです。病・病でない、健康・不健康みたいな対立のほうをまだ信じているんだと思うんです。これはニーチェもそうなんですね。ニーチェも、善悪を信じていないくせに、健康・不健康――そして病気は悪いという価値を信じているんですよ。ニーチェにはいろいろ欠陥があるんだけれども、それも大きな欠陥だとぼくは薄々感じているわけで△043 それはなぜかというと、病気という概念は善悪に依存するんじゃないかという、ある種の疑いがある。全面的かどうかわからないけれども、どこか非常に決定的なところで依存しないと成り立たないんじゃないかという疑いがあるわけです。純粋に生理学的な病気みたいなことが言えればいいんだけれども、それが成り立たないとすると、病気だったとか何とかいくら掘り下げていっても、それからは実は何もわからないことになるんですね。
 それと関連するのですが、ニーチェには「道徳の系譜学」という議論があって、系譜学的研究というのをやるんだけれども、あれは実は何も明らかにしていないとも言えるんです。系譜学的探究というのは、いわば心理主義なんですよ。なぜそういう病気が発生したか、発生せぎるをえなかったかという話をしているんだけれども、あれをいくらやっても、なぜその病気が悪いのかということは一向に明らかにならない。ルサンチマンはなぜ悪いのかとか、ルサンチマンでなぜいけないのかとか、キリスト教道徳がなぜ悪いのかという、究極の根拠は与えられないんですよ。病気だか弱いとか卑賤であるとか、そういう悪口を言うだけなんですね。悪口の根拠はいったい何かということは、実は系譜学的研究からは出て来ない。それと同じことがあって、心理的な探究というのは結局のところ、事柄を細かく見ていけば細部にわたりてわかっていくんだろうけと、それがだから何なのかということば究極的には何もわからないというところがあると、ぼくは思うんです。」(永井[2018:43-44])

◆「なんで殺ったらいけないのかだって? 殺ってもイケルしイケテルのに」,永井・小泉[1998:95-148]


 「かつての私は殺人は良い場合があると思っていた。国家統治機構の一部である人や、君主の血統をリレーする人物や、資本輸出に加担する人物を、世間から消去することは良いことだと思っていた。しかも私は、殺人と死体化を区別していなかったので、死体化は殺人のためには避けられない必要悪であると思っていた。現在でも私は、特定の人物が特定の世間的な舞台から退場して消え去るほうが良いと思うことはある。しかし舞台が残っているかぎりは、いくら人物を消去しても必ずや別の人物が登場すると思い知らされてきた。切りがないのである。切りがないはずなのに、恣意的に何人かを選ぶのは日和見である。だから殺人のためのより良い方法は、舞台を破壊することだと考えるようになった。
 同じことは、私的な殺人についても成り立つと思う。殺したいほど憎い人物がいるなら、その人物を消去したところで、必ずや別の殺したいはと憎い人物が登場してくる。憎む精神と憎い人物を絶えず登場させるような舞台が残っているからである。舞△125 舞台を破壊するか、舞台から降りてしまうほうが簡単だと思う。実際、近年のサイコな舞台は演じるのが簡単であるだけ、そこから降りるのも簡単だ。心的異常者の役ほど演じやすいものはないし、演技賞をとりやすいものはない。心的異常者とは、そもそもの初めから、舞台で演じられる人物にすぎないし、現代版悪魔学であるプロファイリングで表象される人物にすぎないからである。だからこそ、簡単に流行る。だからこそ、簡単に降りられる。
 同じことは、殺し合いの舞台についても成り立つ。」(小泉[1998:125-126])

■書評・紹介・言及

◆立岩 真也 2022/**/** 『人命の特別を言わず*言う』,筑摩書房


*作成:本岡 大和立岩 真也
UP:20100214 REV:20211230
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