『こころの病と暮しています――京都洛北・YOUYOU館の日々』
YOUYOU館 編 19980525 白馬社,238p.
■YOUYOU館 編 19980525 『こころの病と暮しています――京都洛北・YOUYOU館の日々』,白馬社,238p. ISBN-10:4938651211 ISBN-13:978-4938651213 \1575 [amazon]/[kinokuniya] ※ m01b, i05, s02
■内容(「MARC」データベースより)
京都の洛北にあるYOUYOU館は、心に障害を持つ人たちの共同作業所である。そこで暮らす人たちの日々、心の病をマイナス一方で捉えず、お互いを面白がり、楽しんでいる伸びやかな生活の様子を記録する。〈ソフトカバー〉
■目次
推薦の言葉 筑紫 哲也
推薦の辞 大友 勝
第一章 ぼくたちの胸のうち
ことば
作業所で人生観が変わった
大きなしあわせ
ぼちぼちやろう
絵が描けることがうれしい
作業所は「くつろげる場所」
一番夢に近いところ
悩みを打ち明けられる
病気と「添いとげる」
一番気になるのは娘のこと
作業所ができて楽しい
第二章 みんなで話そう
1 小さなしあわせ
2 家族の愛と憎しみ
3 こころの病気ってどんなもの
4 こんな病院がほしい!
5 こんな作業所がほしい!
6 YOUYOUグラフ
第三章
ルポ・YOUYOU館
YOUYOU館スタッフ紹介
YOUYOU館を取り巻く人々
YOUYOU館チャート
あとがき
■引用
■書評・紹介
決して多面的ではない。また、客観的でもない。作業所「YOUYOU館」に集う人たちが描いたものである。書くというより描くと表した方が近い。一章では作業所を利用している人たちが、その人の生きようや、思いや、経験を「YOUYOU館」を軸に語る。二章では語り合う座談会。出席者のプロフィール付き。三章はスタッフの語り これらの語りが「YOUYOU館」を描き出している。
「作業所」というものを知っている人もいるだろうが、知らない人の方が多いかもしれない。多面的で人によって定義のされ方が変容する「作業所」。そのようなものであるから、本書のような客観的でないモノの方が「作業所」とそこに集う人々を描くのには適しているのかもしれない。(文責:三野宏治)
以下、本書冒頭の推薦文
◇推薦の言葉 筑紫哲也
状況は必ずしも明るくない。だからこそ、明るく生きようとする。社会から閉じ込めようとする圧力もある。だからこそ、外に向かって窓を開けようとする。だが、取り巻く条件はきびしい。だからこそ、悠々とあせらず、たゆまず生きようとするそうやって自らの置かれた状況に正面から立ち向かっている障害者たちがいること を私は知っている。身や心にハンデキャップを背負っている代わりに、健常者が持 ち合わせない貴重なものを持っていることも多く、そこから学んだり励まされるこ ともまた多い。
京都洛北にある「YOUYOU館」は、心の病を持つ人たちの共同作業所である。
名の示す通り、悠々と明るく生きることを目指している空間である。
この本は、そこで暮らす人たちの日々を描いている。心の病をマイナス一方で捉えず、お互いを面白がり、楽しんでいる様が伝わってくる本である。こんなに、障害を持つ人たちが自ら、明けすけにのびやかにものを言っている記録は珍しいのではないかと思う。
障害者、健常者を問わず、励まされる本である。
◇推薦の辞 全国精神障害者地域生活支援協議会代表 大友勝
知人を介して、作業所の本を出すので前ふりを書いてほしいという依頼があった。私はその任ではないと思ったが、あえて引き受けることにしたのは以下の理由による。
一つには、作業所活動は「明治以降の日本の分裂病の処遇史の中で、素人の手で、初めて地域の中にグループ活動を通じて精神障害者の生活を支える画期的な試みであり」(岡上和雄)、この活動をもっと多くの人に知ってもらいたいと思ったことによる。
二つめとしては、国際障害者年以降、作業所の活動は全国各地で取り組まれることとなったが、作業所の現場レポートがあまりにも少なく、この本は作業所のこれからのあり方を考えていく上で大きな問題を投げかけているからだ。そしてこのような貴重な試みが、作業所活動を担っている現場の実践家によってなされることが今後の作業所活動に関する社会的評価を高めることになると願ってのことである。
折しも平成十一年には精神保健福祉法が改正されることになるのだが、作業所の法的な位置づけも大きな課題となっている。このような時期にこの本が出されるのはきわめて時期を得たものであり、作業所の将来的なあり方に対する議論の一助となれば、と強く願う。
以上があえて引き受けた理由だが、この本はこの期待に応える試みであり、ぜひ一読することを薦めたい。(原文まま)
■言及
*作成:三野 宏治