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『働くことの経済学』

19980530 有斐閣ブックス,240p.  464108615X


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古郡 鞆子 19980530 『働くことの経済学』,有斐閣ブックス,240p.  464108615X [boople][amazon] ※

■内容(「BOOK」データベースより)

労働には多様な側面があるが、経済学の観点からは「働くこと」であり、生計をたてるために「仕事」をすることである。働くことは単に生活のためだけではない。人によっては自己実現の手段でもある。経済現象の中で労働にかかわる問題がどのように体系的にとらえられるのかを、読みやすく解説する労働経済学入門。

■内容(「MARC」データベースより)

急速に変化する現代において「働くこと」とは何かに焦点をあて、その諸側面を家計、企業、一国の経済現象の中で考え、やさしく解説した労働経済の入門書。労働を自己実現の手段の一つとして捉える。

■目次


第1章 労働の担い手
第2章 労働の売り手の行動
第3章 労働の買い手の行動
第4章 賃金とその決定
第5章 賃金格差
第6章 失業
第7章 労働移動と職探し
第8章 労働者と差別
第9章 非正規の労働者
第10章 雇用慣行と訓練
第11章 労使関係
第12章 今後の労働

第12章 今後の労働


第3章 労働の買い手の行動

 「こうしてみると、景気変動が労働の需要に与える影響の大きいことがわか<0048<る。今日の労働需給バランスを考えると、バブルが生み出した人手不足現象は一時的なものだったと捉えられやすいが、今後、わが国は出生率の低下によって構造的に人手不足の傾向を強めていく可能性もある。」(古郡[1998:48-49])

 「産業革命はラダイツ運動、つまり機械を壊す運動を引き起こした。アメリカのフォード社の生産工程きオートメーションやテイラーリズム(アメリカの技師F.W. Taylorが提唱した作業時間や作業量などに基づいて仕事の改善を提唱する科学的な経営管理法)は、労働の非人間性の問題(人間歯車論)を提起した。
 技術革新は、労働需要に直接の影響を与える。工場が自動化されればそこで働いていた人間は不要となる。機械化によって生産性が高まり、いままで2人で行っていた仕事が1でできるようになれば、それまでの2分の1の労働力があればよいことになり、半分は職を失うはずである。
 しかし、歴史を振り返ると、大小の技術革新はいずれも投資の拡大、新生産様式、新製品、新産業をもたらし、雇用を増大させる効果を生んできた。それが一時的にある産業や企業の仕事を奪う結果をともなっても、技術革新は他の産業の生産を誘発し、より多くの労働需要を生んできた。
 […]
 今日の技術革新は情報通信産業主体のものである。[…]
 実際、コンピュータは、中間管理職の仕事を奪い、労働力を単純労務者と幹部に位置すく人材や高度の技術者のような集団の2極分化を促進している。製造業の中には無人化が進み、ブルーカラー労働者が減って、サービス関連<0050<の労働者と少数のホワイトカラー中心の労働者で間に合うようになっている工場も出てきている。
 しかし、5年もすれば様変わりしてしまうような情報通信技術についていくのは容易なことではない。労働市場では、今後、このような点での需要のミスマッチが大きな問題となっていくだろう。」(古郡[1998:50-51])

第6章 失業

 「失業率の上昇は、女性の労働市場への進出がいちじるしいこととも関連している。女性の労働力率は1975年以降大きく上昇しているが、これを反映して失業者も増加している。。女性労働力の増加に加え、失業率上昇にはさらに男性中高年層の失業の影響も見逃せないものがある。男性中高年層の失業者の増加は、人口の高齢化に加え技術革新によるOA(office automation)化やFA(factory automation)化の波に中高年層が必ずしも適応できないこと、就業機会をめぐって男性の中高年の労働力が女性労働力と競合関係にあることなどからきていると考えられる。」(古郡[1998:104])


REV:20061110,1208 20070309
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