本書は、1997年度の東京大学文学部社会学研究室の調査実習の報告書である。受講者は社会学科以外も含む文学部の学生と、社会学研究室の大学院生である。この授業はもともと、社会学研究室の稲上先生と私(武川)とで担当する予定だったが、稲上先生が公務の都合で担当が不可能となったため、急遽、社会科学研究所の佐藤博樹さんに応援を求め、彼と私の二人三脚で担当した。
本年度の調査実習は「社会的公正と公共政策」というテーマで実施した。公共政策上の諸問題に対して、人びとがどのような社会的公正感に基づいて、どのような判断を下しているかということを調べてみようというのが、実習の課題だった。このため東京都の文京区で郵送留置・訪問回収による質問紙調査を実施した。また、佐藤さんの助力によって、イギリスで実施されているBritish Social Attitudes Survey という類似の問題意識に基づく調査のデータを入手し、その再分析も行なった。文京区の調査は、いくつかの点で、このデータと比較可能である。