おまえ、溺れかかったのだから死んだも同じだ、ひとつ遺書という本を造らないかと角川春樹氏から提案を受けて執筆されたこの本、人間はおろか国家にも<死>や<来世>があるーーそんな「死」の行く先を見つめる強靭な視点に貫かれ、生温い日常に浸るわれわれに冷水のような言葉を突き付けてくる。全体がですます調で読みやすく、しかも、いま世界で一番重要な問題はイスラム原理主義と語るボ-ドリヤ-ルを評して、"フランス社会が神経麻痺で脚力を病んでいる証拠で、僕の身体みたいなものだ"などといったスパッとした物言いも健在な隆明先生、まだまだイケてます。(守屋淳)
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