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『私の障害、私の個性。』

Lawson, Wendy 1998 Life behind Glass: A Personal Account of Autism Spectrum Disorder,Southern Cross University Press
=20010519 ニキ・リンコ 訳,花風社 ,219p.


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■Lawson, Wendy 1998 Life behind Glass: A Personal Account of Autism Spectrum Disorder,Southern Cross University Press
=20010519 ニキ・リンコ 訳 『私の障害、私の個性。』,花風社,219p. ISBN-10: 4907725256 ISBN-13: 978-4907725259  1680 [amazon][kinokuniya] ※ a07.

■内容

(「BOOK」データベースより)
「知的障害?」「精神分裂病?」「それともオクテなだけ?」さまざまな誤解を受けてきた私―「普通の人々の世界」「自閉症者の世界」二つの世界を生きる著者が大人になって振り返る成長の痛み、心の軌跡。

■著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

ローソン,ウェンディ
イギリスに生まれる。幼いころより周囲との違和感に悩んできたが、仕事に就き、結婚し、出産し、やがて離婚。離婚後、大学への進学を果たす。精神分裂症と誤診を受けるが、42歳のとき自閉スペクトラムの一種アスペルガー症候群と診断される。現在はオーストラリア在住

■訳者紹介

ニキ・リンコ
翻訳家。心の問題に興味を持ち、数多くの原書を読み込むうちに翻訳の仕事に出会う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次

私の障害、私の個性
永遠の傍観者
感情って何?愛って何?
「世界」との出会い
「学校」という邪魔者
神様との出会い
ティーンエイジャーの日々
学校は出たけれど
さようなら子ども時代
人の親になる
大人になる痛み
やっと大人になる
物ごとをうまく学ぶ「作戦」
変化が怖い
愛と友情を見つける
私も「世界」のひとり

■引用

 「日本にもまだ、自閉とは気づいてもらえず、他の診断を受けている人々は、意外に多いのかもしれません。そんな人たちが、一人でも多く、一日でも早く、正しく理解される日が来ることを、私は祈っています。それは、精神分裂病と思われることが不名誉だからではありません。自閉のニーズに合わせた対応が受けられないからです」p.6[ニキ]

 「一九九四年八月、とうとう私は、正しい診断を受けることができた。「アスペルガー症候群」。そのとき私は、四二歳になっていた。自分がみんなとちがっていること、どこかが「おかしい」ことは、ずっと前から知っていた。ただそれまでは、まちがって、別の病気だと思われていたのだ。十代のときには、精神分裂病と誤診されたし、二二歳で最初の子を産んだ後には、産褥後の鬱だと言われた。だから、おかしいのは、みんなそのせいだと片づけられてきたのだ」(Lawson[1998=2001:15])

 「両親も、私がほかの子とはちがうことに気づいているらしきそぶりは見えなかったので、私は何度も、どうしてわからなかったのだろうと不思議に思ったものだ。でも本当は、二人とも気づいていたのだろう。ただ、何か私にはわからない理由から、彼らは無視する方を選んだのだろう。もしかしたら、当時の事情ではどうしようもなかったのかもしれないし、単に、みんな忙しすぎただけかもしれない。あるいは、この子はちょっと不器用で幼いだけで、大きくなれば追いつくはずだと思っていたのかもしれない。」(Lawson[1998=2001:114])

 「二五年後、この診断は覆されることになった。一九九四年の八月、メルボルン大学で、ある著名な心理学者に診てもらった結果、アスペルガー症候群と診断されたのだった。自分が精神分裂病ではないと知って安心もしたが、代わりに別の病気があるのだ、しかもこれには治療法はないのだと思うと、怖くもあった。」(Lawson[1998=2001:143])

 「もっと自分のことを知りたい、理解したいという飢えにも似た感覚は、まるで捨て犬のように、どこまでもついてきた。鬱病と精神分裂病について調べれば調べるほど、これは違うという確信が強くなっていくのだった。確かに私にも、症状のごく一部はある。私のふるまいの一部は、確かに典型的なものだ。でも、あてはまらない部分があまりにも多すぎる。」p.166

 「この本の登場は、もう一つの大きな働きをした。正しい診断を受けないまま世界のさまざまな場所でひっそりと生きてきた高機能――知的障害を持たない――自閉症者たちに、自らの正しい診断に気づかせるきっかけとなったのである。本人自身が気づいた場合もあれば、医療機関や教育機関で働く専門家がこれまで誤診をしていたことに気づいた場合もあった。彼らが社会的不適応のために、医療機関を受診した場合、ドナやローソンのように大多数は分裂病という診断を受けていた。本人は、そして周囲も、何かちがう、何かしっくりこないと感じつつも、分裂病治療が行われ続けた。そして成人になって自分の本当の障害名を知り、自分のこれまでの半生をあらためてふり返り、歩んできた道のりの意味が初めて、驚きと感動を持って明らかになる。」p.213[杉山]

■書評・紹介

◆立岩 真也 2004/04/25 「ニキリンコの訳した本たち・1」(医療と社会ブックガイド・37)
 『看護教育』45-04:(医学書院)

◆立岩 真也 2004/06/25 「ニキリンコの訳した本たち・2」(医療と社会ブックガイド・39)
 『看護教育』45-06:(医学書院)


■言及

◆立岩 真也 2008- 「身体の現代」,『みすず』2008-7(562)より連載 資料,

◆立岩 真也 20140825 『自閉症連続体の時代』,みすず書房,352p. ISBN-10: 4622078457 ISBN-13: 978-4622078456 3700+ [amazon][kinokuniya] ※


作成:鹿島萌子・山口 真紀
UP:20080620 REV:20080710, 20140824
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