『エスニック・アメリカ[新版]――他民族国家における統合の現実』
明石 紀雄・飯野 正子 編 19970410 有斐閣,353p.
■明石 紀雄・飯野 正子・田中 真砂子 19840925 『エスニック・アメリカ――他民族国家における同化の現実』(旧版),有斐閣,250p. ISBN-10: 4641024278 ISBN-13: 978-4641024274 1500 [amazon] →明石 紀雄・飯野 正子 編 19970410 『エスニック・アメリカ[新版]――他民族国家における統合の現実』,有斐閣,353p. ISBN-10:4641182744 ISBN-13:978-4641182745 2520 [amazon] b 0e/e01
■内容(「BOOK」データベースより)
アメリカにとって、エスニシティとは何か。たえず繰り返されてきたこの問いに、正面から向き合う1冊。とくに黒人・ヒスパニック・アジア系をめぐる新しい状況をみつめ、「多様の統一」の再検討をめざす。
■著者紹介
明石 紀雄 (あかし のりお)・・・序章、1章、2章、3章、4章、8章2・3節、9章1・3節
1962年 ハバフォード大学卒業
1964年 ウィスコンシン大学大学院歴史学研究科修士課程修了
現在 筑波大学名誉教授
主著 『アメリカ南部の夢――ニューサウスの政治・経済・文化』(共編著、有斐閣、1987年)
『トマス・ジェファソンと「自由の帝国」の理念』(ミネルヴァ書房、1993年)
『100年前のアメリカ――世紀転換期のアメリカ社会と文化』(共編著、修学社、1995年)
飯野 正子 (いいの まさこ)・・・5章、6章、7章、8章1・4節、9章2・3節
1966年 津田塾大学学芸学部卒業
1968年 シラキュース大学大学院歴史学科修士課程修了
現在 津田塾大学教授
主著 Mutual Hostages: Canadians and Japanese during the Second World War (co-author,University of Toronto press,1990)
『引き裂かれた忠誠心』(共著、ミネルヴァ書房、1994年)
「アジア系アメリカ人――『汎アジア系』のアイデンティティ? 『エスニック状況の現在』(日本国際問題研究所、1995年)
『ジョージア州の日系企業とマイノリティ』(CBCC、1996年)
■目次
序章 他民族国家アメリカ――概観
1 「エスニック・アメリカ」
2 人口構成に見るアメリカの多様性
3 続く移民の流れ
第T部 アメリカ人のエスニック・ルーツ――「アメリカ人、この新しい人間」
1章 同化の諸概念
1 「多様性の統一」
2 アングロ・コンフォーミティ(順応)論
3 るつぼ理論
4 文化多元主義――第一期(1915‐60年)
5 文化多元主義――第二期(1960年以降)
6 エスニシティの「創造」
2章 新大陸で出会った三つの人種集団
1 インディアン−−先住民
2 白人――ヨーロッパからの移住者
3 黒人――アフリカからの移住者
3章 アングロ・アメリカ社会の形成
1 イギリス領北アメリカ植民地――その民族的多様性
2 アングロ・アメリカ社会の形成
4章 国民的統合に向けて
1 アメリカ人――この新しい人間
2 進む同化と吸収
3 ネイティヴィズムの表れ(反外国人感情)
4 南北戦争と黒人
5 解放後の黒人の状況
第U部 近代アメリカの形成とエスニック集団――「彼らを私のもとに送りなさい」
5章 「新移民」の流入
1 移民の変化
2 イタリアからの移民
3 ユダヤ人移民
4 中国と日本からの移民
5 エスニック社会の形成
6章 自由の女神の涙
1 黄禍論(イエロー・ペリル)
2 100%アメリカニズム
3 不寛容――KKK
4 1924年移民法制定に向かって
7章 他民族国家アメリカ――続く移民の流れ
1 変化と継続性
2 移民法改正
3 ヒスパニック系アメリカ人
4 難民
第V部 アメリカン・ドリーム――理想と現実
8章 平等の達成
1 新しいネイティヴィズム(移民法改正)
2 先住民(インディアン)の動き
3 黒人の地位向上の達成と課題
4 アジア系アメリカ人
9章 真の平等を求めて――多様性と統合の調和
1 アファーマティブ・アクション
2 理念の再検討
3 さらなるナショナル・アイデンティティの探究
参考文献
図版出所一覧
事項索引
人名索引
■引用
「「多様性」とは何か――「エスニック・アメリカ」の現在――
今日のアメリカ社会では、さまざまな面で多様性が強調されている。多様性は人種・民族グループの違いに限られたものではなく、性、年齢さらには性的好みの違いにおいてさえもみられる。とくに1980年代半ば以降、アメリカでは、人種・民族的少数派のみならず、“文化的少数派”に対する理解のための政策的措置が採られている。このような傾向を可能な限り広く包摂して初めて「エスニック・アメリカ」の全体像が描かれることになる。そこで新版では、初版で扱ったテーマについてはより新しい情報を示す一方、旧版において詳しく触れることはなかったが、アメリカ合衆国の人種的・民族的多様性を理解するうえで不可欠のテーマをいくつか選んで扱うことにした。「先住民」(インディン、ネイティブ・アメリカン)の歴史、第二次世界大戦中に強制転住(収容)させられた日系アメリカ人に関わる賠償の問題、奴隷制廃止後の黒人(アフリカ系アメリカ人、アフリカン・アメリカン)の歩み、過去に差別を被ったことのある少数派人種・民族集団に対する「アファーマティブ・アクション」(積極的優遇政策)の問題、さらに、統合の理想か多様性の強調かといいうアメリカ社会の根本的理念に関わる課題などである。」(まえがき、pp.B-C)
「初版では、アメリカ合衆国において「民族的・文化的背景を異にするさまざまな人々が国民としてのまとまりをもつにいたったプロセス」の究明に強調点が置かれた。また、アメリカ合衆国は「言葉や宗教などを異にする数多くの人種・民族グループが、一方では、それぞれの文化的遺産を保持し、他方では、社会的統合を達成することができる」貴重なケースであるという前提があった。これと比べて、新版では、“まとまり”よりも“多様性”が、そして“統合”よりも“離反”が描かれているという印象を受けるかもしれない。しかし、このことは著者の視点がとくに変わったことを意味するものではない。もし旧版とは異なる「エスニック・アメリカ」像が新版からうかがえるとしても、「エスニック・アメリカ」の実情を性格を描くというわれわれの関心と意図に変わりはないのである。」(まえがき、p.D)
■言及
*作成:石田 智恵 追加者: