『日本思想という問題――翻訳と主体』
酒井 直樹 19970314 岩波書店,329p.
last update:20111026
■酒井 直樹 19970314 『日本思想という問題――翻訳と主体』,岩波書店,329p. ISBN-10:4000017357 ISBN-13:978-4000017350 \3570 [amazon]/[kinokuniya] ※ er mc e08 s03
■内容
出版社/著者からの内容紹介
すでに他者へと開かれ,つねに異種混交であるわれわれの生の現実を否認してきた国民主義の諸制度が,今再審に付されている.日本思想・日本文化論等の知はもとより,文学,母語,主体性さえもが,ナショナリズムと人種主義の安逸に奉仕するものとして解体される.新しい社会性の構築に向けてなされる,目のくらむような理論的跳躍.
内容(「MARC」データベースより)
「主体」という語はsubjectの翻訳であるが、正しい訳ではない。subjectを訳すという行為は翻訳の主体の問題を問うということでもある。翻訳という社会的行為が日本思想に織り込んできた主体の抑圧性を撃つ。
■目次
はじめに
T 序論 翻訳と主体
一 異なった読者に向かって同時に語ることと多言語的語りの構え
二 翻訳の主体・乗り継ぎする主体(subject in transit)
U 日本思想という問題
一 問いの設定
二 日本思想研究者と発話の立場
1 「日本の思想」の内からの発話と「日本の思想」の外からの発話
2 理念化された読者としての西洋
三 翻訳の実践系と対‐形象化の図式
1 比較としての日本思想
2 翻訳と未知の言語
3 統制的理念としての外国語
4 日本の思想と対‐形象化の図式
四 主体的技術としての日本思想史
1 存在非拘束性としての日本の思想
2 近代的世界と西洋のナスシシズム
五 「日本の思想」を問う日本思想史
V 西洋への回帰/東洋への回帰――和辻哲郎の人間学と天皇制
一 受難=受動の演出
二 「人間」の学としての倫理学
三 回帰と本来性
四 国民と全体性と共感
W 文化的差異の分析論と日本という内部性――主体そして/あるいはシュタイと国民文化の刻印
一 主観とシュタイ
二 文化的差異の記述と時間の二重性
三 アジア研究における理論
四 和辻哲郎における同一化と否認
五 究極的全体性としての国民国家
六 文化的差異の単独性
X 「文学」の区別、そして翻訳という仕事――テレサ・ハッ・キュン・チャの『ディクテ』と回帰なき回復
一 時代錯誤的な始まり
二 文学と母語
三 「文」と文学
四 翻訳という主題
五 外国語の形象と自己の投企
Y 戦後日本における死と詩的言語
一 歴史的実践としての詩
二 死者の位置からの言表
三 共同的表象体系と外部性
四 主体の放送と語り得ぬこと
五 死と詩的言語
注
あとがき
初出一覧
■引用
■書評・紹介
■言及
*作成:樋口 也寸志