『非正規労働の経済分析』
古郡 鞆子 19970109 東洋経済新報社,268p. 3465
■古郡 鞆子 19970109 『非正規労働の経済分析』,東洋経済新報社,268p. 3465 [boople]/[amazon] ※
書評:白井 邦彦 19991110 『社会政策学会誌』02:196-199
非正規労働の経済分析
古郡 鞆子 (著)
価格: ¥3,465 (税込)
行本: 268 p ; サイズ(cm): 21 x 15
出版社: 東洋経済新報社 ; ISBN: 449226051X ; (1996/12)
出版社/著者からの内容紹介
パート、臨時、派遣などの「非正規労働者」が急増。その多くは女性だ。その労働市場に与える影響、職場での実態、家庭生活と就業行動を経済学のツールで実証分析。
内容(「BOOK」データベースより)
本書では、女性労働者および社会・経済的に類似する労働者とその周辺の経済学的諸問題を「市場(社会)」「職場」「家庭」の3つの場に分けて分析する。
目次
第1部 雇用と市場
第1章 非正規労働の労働市場
第2章 非正規労働とサービス経済
第3章 女性の就業行動
補論 差別の経済理論
第4章 若年の就業行動
第5章 失業構造の変化
第2部 社会と職場
賃金と賃金構造
労働時間
組織化と法 ほか)
第3部 家計と労働(生活時間
家庭と家族
ライフサイクルと就業
第3章 女性の就業行動
補論 差別の経済理論
「ベッカーの理論は差別問題に対して最初の本格的な理論的展開を行ったことで意義深いが、差別を賃金差別に限ってしまった点、さらに競争が家庭される限り存続する賃金差別を説明できないという難点がある。競争的諸力が労働市場に存在すれば、差別の嗜好をもたないか、またはその程度の弱い企業は安価な労働力を使うことによって心理的効用の損失を受けずに利益を拡大することができるはずである。したがって、ベッカーの理論は長期的には低コストの企業が高コストの企業を排除する形で差別は時間とともに減少することを含意する。」(古郡[1997:34])
「ベッカーの競争理論に対立するものとして、Madden[1975]やLloyd[1975]の「需要独占モデル」による賃金差別の理論がある。これは生産物市場における生産物差別と同じように男女の賃金格差は(男性)需要独占力を反映するというものである」(34)「市場に存在する無数の男性勢力が暗黙の「紳士協定」を結んで違反行為を防ぎ、女性に対する独占力を長期的に行使することは容易ではない。また、独占市場への新規参入をどうコントロールするかと言う点でもこの理論での差別の説明力は弱いといえよう。」(35)
Lloyd, C. B. 1975 "The Division of Labor Between the Sexes: A Review", Lloyd ed.[1975]
Lloyd, C. B. ed. 1975 Sex, Discrimination, and the Division of Labor, Columbia Univ. Press
Madden, J. F. 1975 "Discrimination: A Manifestation of Male Market Power", Lloyd ed.[1975]
「制度派理論の流れとしてはDoeringer and Piore[1971]の二重労働市場論がある。これに従えば、女性は入職時において差別され、第二次労働市場に限定される傾向があるうえ、1度に入ると第一次労働市場へきの移動はむずかしく、長期間にわたって経済的に上向的移動のない仕事に従事することになる。この理論は現実の労働市場のメカニズムをうまく描写し、とくにわが国の雇用慣行の特殊性を示唆している。しかし、労働市場が構造的に分分割される理由および差別が行われる原因については、十分に理論的な説明を加えていない難点がある。」([36])
「どのような動機であれ、差別が長期間存続しているのは市場の力が差別を排除できるほどには強くないことを示している。」(37)