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『魂(ソウル)から心(マインド)へ――心理学の誕生』

Reed,Edward E[リード、エドワード] 1997 From Soul to Mind:The Emergence of Psychology, from Erasmus Darwin to Willam James
=20000901 村田純一・染谷昌義・鈴木貴之,青土社,414p.

last update:20110122

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■Reed,Edward E[リード、エドワード] 1997 From Soul to Mind:The Emergence of Psychology, from Erasmus Darwin to Willam James =20000901 村田純一・染谷昌義・鈴木貴之 訳,『魂(ソウル)から心(マインド)へ――心理学の誕生』青土社,414p. ISBN-10:4791758382  \3400 [amazon][kinokuniya] ※

■目次

はじめに

第1章 心理学を求めて
 世俗的な神学としての心理学 / 公式心理学と非公式心理学 / 心理学の新しい物語

第2章 不可能な科学
 リードとカント / 伝統的形而上学 / 典型的な伝統的形而上学者としてのヴィクトール・クーザン
 伝統的形而上学の興隆

第3章 フランケンシュタインの科学
 エラズマス・ダーウィンとオルタナティヴな心理学 / 自然科学としての心理学の抑圧
 『フランケンシュタイン』 における心理学 / 自然的超自然主義とエロス的経験

第4章 協調関係にあったヨーロッパ思想のほころび
 自然主義の登場 / 哲学のスキャンダル / トーマス・ブラウンが発明した筋肉感覚
 筋肉感覚という概念の含意すること / 心の運動理論 / 大脳反射の応用と伝統的形而上学の終焉

第5章 自然的形而上学の短い生涯
 形而上学を自然化する / 三人の自然的形而上学者 / R・H・ロッツェ――最後の自然的形而上学者?
 自然的形而上学と実験心理学

第6章 一八四八年の革命とその後
 一八四八年以降における公式心理学と非公認心理学の対立 / 催眠術の起源 / 意志、物質、心理学
 二元論か三元論か? / 形而上学から実証主義へ / 心理学、論理学、科学の科学

第7章 三つの無意識概念とその展開
 心の探究から無意識の分析へ / 論理的な無意識 / ミル対ベイリー / 無意識の勝利

第8章 実証主義の極致
 G・H・ルイス――移行期の人物 / 実証主義の流行 / 世界の分裂――ジキル博士とハイド氏

第9章 特異なる存在―― チャールズ・ダーウィン
 非ダーウィン的革命 / 厄介者――チャールズ・ダーウィン / 心理学におけるダーウィンの功績
 真価を認められなかったもう一人の革新者――ダグラス・スポールディング
 非自然的な魂を仮定する新心理学

第10章 どのようにして哲学は心理学から成立したのか―― 一八七九年の世代
 心理主義と論理学 / フレーゲとパース――その論理学と心理学と表記法
 ゲシュタルトから現象学へ / 心理学から抜け出した哲学

第11章 経験の科学としての心理学―― ウィリアム・ジェームズ
 ジェームズによる新心理学批判 / 心的原子論者と精神的刺激主義者へのジェームズの反論
 反形而上学と形而上学 / 心理学の中の魂 / 魂の科学

解題 エドワード・リード ――ソウルの心理学者 / 佐々木正人

訳者あとがき
年表 心理学の誕生をめぐる流れ

参考文献一覧
文献案内
索引

■引用

解説 佐々木正人

「前節で、私たちは、ホイット、ロッツエ、ルイスに、脳の制御からこぼれおちる運動を執拗に探そうとするリードを見てきた。彼はそこに19世紀半ばにおいて、「新心理学」の「心」にからめとられまいと生存の道を探る「分散する魂」を探していた。20世紀の運動研究者リードは、この歴史に忘られた先達たちの遺産を、姿勢という単位で再興した。そして姿勢の入れ子として運動が記述できるという、新しい運動研究の可能性を示した。  おそらくここで姿勢とよばれ、はじめて明瞭な定義を与えられた身体の相こそが、運動研究者リードが発見したソウルではないか。そこからリードの「ソウルの心理学」がはじまったのではないか。」324-325

訳者あとがき 村田純一
「リードは、「新心理学」へと至るオーソドックスな心理学の流れに対抗して存在し続けている心理学の流れを「アンダーグランド心理学」と呼んでいる。この流れが「アンダーグランド」と呼ばれるのは、宗教的、政治的抑圧のために、歴史の表舞台に登場することができなかったからである。そしてこの流れの代表者として登場するのが、エラズマス・ダーウィンであり、さらには、シェリーなどの文学者なのである。  したがって、この点と密接に結びついて、心理学の歴史の形成にとって、宗教、そして宗教と密接に結びついた政治が決定的な役割を演じたという点が強調されることになる。19世紀は、一方では、18世紀に啓蒙主義によってはじまった科学の世俗化が実証主義や自然主義によってさらに進展し、「進歩」という観念が定着した時代であるといえるのに対して、他方では、反動の時代という面を強くもっている。しかも、宗教的権威やそれと結びついた政治的反動は、心理学を科学として発展させるうえで、必ずしも妨害要因としてのに働いたわけではなかった。とりわけ、脳を心の中心とみなすような見方(大脳主義)が力をもったり、心を意識と無意識の二面に分けて考える見方(無意識の心という概念)が定着するうえで、宗教、とりわけリベラルなプロテスタント神学が重要な影響を及ぼすことになった。リードの考え方に従うと、脳に中心的位置を占め、無意識の推論過程を含んだ心の働き、という現代にまでつながる「科学的心理学」の中核にある考え方は「科学的心理学」とキリスト教神学との政治的「連携」の産物だといってもよいことになる。そして、その政治的連携の対立相手となっていたのが、エラズマス・ダーウィンを筆頭として、魂を徹底的に自然化して考える「アンダーグラウンド心理学」の急進的「唯物論」であったのというわけである。」334-335

■書評・紹介

■言及



*作成:近藤 宏
UP: 20110122 REV:
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