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『鏡のなかの老人――痴呆の世界を生きる』

竹中 星郎 19961025 ワールドプランニング,212p.

last update:20100914

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■竹中 星郎 19961025 『鏡のなかの老人――痴呆の世界を生きる』,ワールドプランニング,212p. SBN-10:494874218X ISBN-13: 978-4948742185 \1554+税 [amazon][kinokuniya] ※ a06

■内容

内容(「MARC」データベースより)
痴呆の人は自分をどのように考え周りの世界をどう見ているのだろうか。本書は、記憶や言葉、判断する力を失いつつも、「今」を生きる老人たちへの認識・理解を深めるものとなっている。〈ソフトカバー〉

《内容》  私たちはふだん、ウッカリ忘れたり、ちょっとしたミスをすると 「ぼけたんじゃないか」 「俺もぼけたかな」 などと言うことがあります。若い人や中年者に言う場合には「年寄りみたいだ」という皮肉がその言葉のなかに含まれているようです。 「鏡のなかの老人」 という書名は、鏡に映った自分の姿に話しかける、いわゆる 「鏡症状」 からきたものです。 著者の竹中星郎氏は、「(鏡症状を呈する老人の) 行動をよくみていると、彼らも心的世界をもち、そのなかで生き、現実との接点をもっているということを実感させられ」 ると言います。 そして、「80歳、90歳という高齢を生きるということはどのようなことなのか、衰えと死を目前にしてどのように考えているのか、悩みや不安はあるのか、といったもろもろの問題を高齢者の立場に立って考える」 必要性を指摘しています。 そこで、 痴呆老人の立場から、 一般に 「ぼけが進んだ」 といわれる症状を捉えてみることにしました。 著者は、「ぼけ」 という言葉は、精神的な異常、痴呆やせん妄などの脳症状をはじめ、性格の問題、おかしな言動、知的な衰えなど、さまざまな意味を含む 「はなはだ便利な言葉であり、捨てがたい味」 があるとしながらも、少なくとも専門職として高齢者の問題にかかわる医療機関や介護スタッフは、一般に「ぼけ」といわれているさまざまな状態を十把ひとからげにしないで、それらをまねいた心の問題、あるいは身体的な病状に目を向けるべきだと述べています。 なぜなら、「せん妄」 「うつ状態」 「妄想」 などは、適切な対策と治療によって改善するものであり、その改善は痴呆の進行を防ぎ、痴呆老人にとっても、また介護者にとっても穏やかな日々をもたらすからです。 そのためには、まず、「痴呆」 を正確に理解し、痴呆と間違われやすいその他の症状との区別ができなければなりません。 本書では、 それらの医学的な知識も、介護の実践に役立つ言葉で語られています。 「痴呆」と間違われやすい代表的な症状に 「せん妄」 がありますが、それを引き起こす3大要因、すなわち身体的な異常によるもの、薬によるもの、心理的なことが原因となるものについての解説は、非常にわかりやすく、このせん妄を理解することによって、「痴呆」もよりクリアに理解できるようになります。 また、なぜ 「おかしい」 行動をするのかについて、痴呆老人の身になって考えられることを語っています。 たとえば、その日の予定や家族の動向を何度もくり返し聞いたり確かめる行為について、 「すぐに忘れる、5分と覚えていない」 のではなく、よく覚えているからこそ気になって、「何度も確認していると捉えるべき」 だと言っています。このような症状は「もともと生真面目で 几帳面な完全壁といった 強迫的な性格傾向の人」 に現れやすく、そのような行動に悩まされている家族もまた、同じような性格傾向をもっているといいます。 そのような家族は、 「聞かれると、そのつど生真面目に答えたり、 証拠をみせて説明」する傾向があり、 「何度も同じことを聞くと怒っていても、いい加減にあしらうことができないのです。 要するに、似たもの同士なのです。老人は、相手にしてくれない人や、すぐに怒るような怖い人には聞かないのです」、という説明を聞くと、なるほどと納得できる部分があります。 この本には、そのような 「なるほど」 と 「納得」 が、数え切れないほど詰まっています。 痴呆老人にかかわりをもつすべての人に読んでいただき、早速、理解を深めていただきたい、そんな1冊です。

■目次

1.鏡に話しかける老人
2.「ぼけ」と痴呆について
 1.痴呆とは
 2.保たれている能力に目を向ける
 3.生活の行動が障害される
 4.「ぼけ」という言葉の意味するもの
 5.妄想をぼけという
 6.うつ状態をぼけという
 7.性格の問題もぼけといわれる
 8.ぼけという言葉を使わないで、問題を具体的に語ろう
3.痴呆とまぎらわしい症状-せん妄
 1.夜になると「ぼける」(夜間せん妄)
 2.意識障害とは
 3.痴呆とどのように違うのか
 4.せん妄はどうしておこるのか
  (1) 身体の病気による場合
  (2) 薬でせん妄になる場合
  (3) 不安や困惑でせん妄が起こる
 5.せん妄にどのように対応するか
  (1)同じレベルでやり合わない
  (2)話を最後まで聞く
  (3)幻覚や妄想に対しては、肯定も否定もしない
 6.自分が妄想や攻撃の対象になったとき
4.自分についてどこまでわかっているか
 1.自分についての認識
 2.出入口がわからない(視空間失認)
 3.ズボンを頭からかぶる(着衣失行)
 4.痴呆を自覚できるのか
 5.左半分がみえない(半側空間無視、身体無視)
5.忘れのいろいろ
 1.老化現象による忘れ
 2.アルツハイマー病の忘れ
 3.五分前のことを忘れる
 4.新しいことを覚える
 5.作話と忘れ
 6.うつ病の忘れ
6.言葉が崩れる
 1.人の名前が言えない(失語症)
 2.言葉の数が減ってくる
 3.偽りの会話
7.痴呆老人は「今」に生きる
 1.「人格の形骸化」-そつなくあいさつをする
 2.今が居心地よければ安心
 3.年齢が若返る
8.引っ越しや改築は「ぼけ」を進めるか
 1.古い家が心の支え(喪失体験)
 2.温泉に行ったのを覚えていない
 3.デイケアの夜は荒れる
9.性格は変わるか、変わらないか
 1.もとの性格は変わらない
 2.同じことを何度も聞く(強迫的な性格)
 3.家族も同じ性格
 4.体の不調をとりとめなく訴える(心気症・退行)
 5.意欲がない、だらしない人
 6.涙もろくなる(感情失禁・無感情)
10.「家に帰ります」
 1.夕方になると落ちつかない(夕方症候群)
 2.朝の異常、昼の異常-REM睡眠行動障害
11.痴呆原因となる病気の話
 1.痴呆をきたす疾患
 2.痴呆様の状態-体の病気によるもの
 3.痴呆様の状態-心の異常によるもの
 4.廃用症候群
 5.アルツハイマー病
12.医療の役割
13.痴呆老人の生活や人権をめぐる問題
 1.一人暮らしの不安
  (1)痴呆老人の一人暮らし
  (2)不安やさびしさ
  (3)今がいいという意味
  (4)本人の意思で選択するために
  (5)施設ケアの改善
  (6)必要にして最小限の援助
 2.痴呆老人の意思能力と人権
  (1)痴呆老人と意思能力
  (2)家族は保護者になりうるか?
  (3)成年後見制度
  (4)禁治産制度について
  (5)家庭裁判所は痴呆老人の権利や人権を守っているか
  (6)入院入所の問題
  (7)痴呆老人の実態をふまえたサポートを
  (8)痴呆老人の権利や人権を擁護する第三者機関を
  (9)痴呆老人の権利と人権を守るために
おわりに――今をよりよく生きるために
痴呆を理解するための参考書

■引用

■書評・紹介

■言及



*作成:永橋 徳馬
UP: 20100914 REV:
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