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『リハビリテーション――新しい生き方を創る医学』

上田 敏 19960420 講談社ブルーバックス,239p.

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last update:20160815

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上田 敏 19960420 『リハビリテーション――新しい生き方を創る医学』,講談社ブルーバックス,239p. ISBN-10:4-06-257117-X 900+ [amazon][kinokuniya] ※ ds/ds, r02

■内容

[amazon]より

 たとえ右手が使えなくなっても、左を利き手にできる!
 病気やケガで右手を動かせなくなったらどうするか?
 右手を元通りにしようとするのも1つの考えだが、いくら訓練してもうまくいかない場合が少なくない。
 そのときは、使っていない左手を訓練すれば、誰でも3カ月で字を書いたりハシを使えるようになる。
 このように現代のリハビリテーションは、障害があっても、残っている健常な心身の機能をとことん伸ばし、
それを新しい能力にまで高め、1人の自立した人間としての新しい生活の確立をめざすのである。
 本書では、神経の再生や脳機能の再編成、あるいは心の立ち直りなどに関する新しい知見を応用して、
人間の全面的な回復をはかろうとするリハビリテーション医学の最新の姿を紹介する。

■目次

プロローグ 半身をなくした紳士
1章 新しい能力を開発する
2章 人間を助ける道具
3章 使わない機能は退化する
4章 神経は再生する――機能の回復(1)
5章 脳の機能の再編成――機能の回復(2)
6章 訓練はなぜ効果があるのか?――機能の回復を助ける
7章 精神の働きの復活――失語や失行、失認、痴呆のリハビリテーション
8章 心の立ち直り――障害とともに強く生きる
9章 最初から社会復帰を目標に
10章 QOLをめざすリハビリテーション
エピローグ リハビリテーションは「プラスの医学」

■引用

第8章 心の立ち直り―障害とともに強く生きる
 1 障害をもつことによる心の悩みの本質
  一面的な価値観が原因
  障害は人間のごく一部で、多くのプラス面が残されている
 「しかし、障害をもったとしても、障害というものは、その人の全体の中のごく一部にすぎない。その人自身の価値(存在価値)は、まったくそこなわれていない。それなのに、障害によって失ったものにだけ目を向けてしまうのは偏った価値観に支配されているからである。
 そのような状態から立ち直るということは、結局、価値観を転換するということが基本になる。単に、弱い気持ちを強い気持ちにするということではない。これまでの人生観そのものを根本から変えるわけであるから、これが実は、一番難しいことなのかもしれない。
 身体的能力と知能、収入という社会に支配的な物差しで人間を見るというのは、一人一人の人間を、さまざまな価値をもつ存在と見ないで、ひどく単純化して表面だけを見ることと同じである。ということは、自分をも単純化して表面しか見ていなかったことになる。
 自分をもっと多面的・総合的に見ることができれば、自分の価値も決して全部がそこなわれたわけではないことに気がつく。それは同時に、ほかの人に対しても、そのような多元的な見方ができる価値観に転換することでもある。
 このようなことが達成できた状態を「障害の受容」と呼んでいる。受容というのは、決してあきらめでもないし、居直りでもない。屈辱感や劣等感をもたずに、自分がおかれている障害の現実を正しく認識して、それに冷静に対処できるようになることなのである。障害はあっても、それによって自分の人間としての存在価値が、根本的にそこなわれたのではないと心から納得できることが、この障害の受容を支えているのである。」(上田[1996:182-183])

 2 障害の受容へのプロセス
 cf.障害受容

第10章 QOLをめざすリハビリテーション
 1 ADLからQOLへ――リハビリテーションの目標の転換
「医療の分野でQOLということを言い出したのは、実はリハビリテーション医学が最初であり(一九七九年、アメリカ)、その後に心臓病、ガンなどいろいろな分野に広まった。これはアメリカの障害者の人権運動である「自立生活運動」の人々から、従来のリハビリテーション医療は実際には障害者の人権を尊重せず、専門家の権威主義と温情主義にとどまっているのではないかという厳しい批判を受け、それをきっかけとしてリハビリテーション医学界が、その目標を、それまでのADL(日常生活行為、身の周りの動作)の自立から、より広いQOL(人生の質)の向上へと転換したことによるものであった。」(上田[1996:214])

■書評・紹介

■言及



*作成:岩ア 弘泰
UP:20160815 REV:
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