『軽症うつ病――「ゆううつ」の精神病理』
笠原 嘉 19960220 講談社(講談社現代新書),247p.
last update: 20110409
■笠原 嘉 19960220 『軽症うつ病――「ゆううつ」の精神病理』,講談社(講談社現代新書),247p. ISBN-10: 4061492896 ISBN-13: 978-4061492899 \777 [amazon]/[kinokuniya] ※ d05 m s01 s01-ow
■内容
・「BOOK」データベースより
生真面で心やさしい人々をおそうゆううつ,不安,おっくう感.軽症化しつつふえている理由なき現代的うつ状態への対処法と立ち直りの道筋を明快に説く.
■目次
まえおき 3
第1章 現代の「うつ病」 13
1 外見からだけではわからない 14
2 定年後「軽うつ」になった紳士 20
3 課長さんの昇進うつ病 27
4 三十二歳の家庭婦人の場合 34
第2章 三種類の「ゆううつ」 43
1 脳と関係の深い「ゆううつ」 44
2 近親者の死――心因性の「ゆううつ」 49
3 ひとりでおこる「ゆううつ」――内因性の「ゆううつ」 56
4 うつ病の診断作法 62
5 心の疲労 68
第3章 身体と心の「一定の症状」 75
1 今朝の新聞を読みましたか 76
2 よく眠れましたか 82
3 不安のなかにある生命放棄性 90
4 生きている値打ち 96
5 何をするのも「おっくう」 102
6 軽そうエピソード 108
第4章 どういう人におこりやすいか 117
1 性格とうつ病の関係 118
2 中学生のゆううつのなかにも 128
3 現代的未熟が生む「ゆううつ」 134
4 八つの引き金 139
第5章 急性期治療の七原則 147
1 「気分障害」という新しい病名 148
2 初期には心の休息を 156
3 自分を責めて他人を責めない人たち 163
第6章 うつ病が少し長引くとき 171
1 「ゆううつ気分」が消えた後に 172
2 急性期がすんだ後の小精神療法 181
3 若いときからの慢性軽症うつ状態 194
4 再発のこと 197
5 過ぎ去った病気のこと 201
6 内因性うつ病の精神療法のために 205
第7章 職場のメンタルヘルスのために 211
1 職場と軽症うつ病 212
2 真面目人間の欠勤症 218
3 職場復帰に際しての注意 224
4 職場カウンセリングのために 230
むすび 239
注 245
■引用
・〈治る直前〉の自殺リスク
一般的にいって,うつ病の最終段階には右のように〔同書113ページの図のような〕微妙な気分の波のおこりやすい傾向があります.にもかかわらず,病気の始まりの段階に比べると,家人も医者もあまり注意をはらわなくなっています.ほぼトンネルの出口がみえてきて,ヤレヤレという気持ちがみんなに生まれるからでしょうか.しかし,容易に想像できるように,一旦軽そう気分を体験して「もうよくなった」と思っていたのに,理由もなく一転してうつ気分のなかに急降下させられる人間は,再び,いや今までよりもずっと深刻な厭世感のなかに沈む危険があり,ときに自殺がおこる一因にもなるのです(112; 亀甲カッコ内はコンテンツ作成者加筆).
・うつ病にたいする〈チーム医療〉を妨げる医師の傲慢さと看護師の縄張り意識
ある人のうつ状態はその人の成長のために意味のある悩みであり,そのままそっと経過をみるのがベターだという場合もありうるでしょう.逆に,たいしたことでないように一見みえるが,できるだけ早く治療という介入を行ったほうがよい場合があります.その治療にも,精神的な側面にウェイトのかかった治療の望ましい場合もあれば,薬物を同時に用いる治療が不可欠なこともあります.また,必ずしも医師が行う必要はなく,しっかりした資格をもつカウンセラー〔現在でいえば臨床心理士など〕あるいはケースワーカー〔現在でいえば精神保健福祉士など〕にまかせたほうがよいこともあります〔中略〕国家資格ができれば正式職員として多くの医療機関が採用します.そうなれば医療チームが構成できます〔中略〕今のところ二つのネックがあって,実現を阻んでいます.一つは,カウンセラーやケースワーカーのなかに医療の世界に参入し高慢な医師の監督下に入ることに抵抗感のある方がいらっしゃること,二つは,看護婦さんサイドに本来は自分たちのする仕事であって,医療を知らない人の参入を歓迎しないという雰囲気があることです.ともあれ,医師も看護婦も反省しなければならない点は反省し,カウンセラーやワーカーも医療によって自分たちはいかに自分たちが必要とされる時代に生きているかを今一度考えられることを望んでやみません.事実,産業精神保健の分野では保健婦さんたちが一定の役割を演じはじめているのです(239-40; 亀甲カッコ内はコンテンツ作成者加筆).
■書評・紹介
■言及
*作成:藤原 信行