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『ずっと「普通」になりたかった』

Gerland, Gunilla 1997 A Real Person
=20000430 ニキ リンコ 訳,花風社,286p


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Gerland, Gunilla 1997 En riktig manniska, Stockholm, Cure, ISBN 91-972641-0-5=1997 A Real Person=20000430 ニキ リンコ 訳 『ずっと「普通」になりたかった』,花風社,286p ISBN-10:4907725140 1700 [amazon] ※ a07.
 *グニラ・ガーランド

■広告

(「BOOK」データベースより)
いじめられた。仲間はずれにされた。ずっと「世界」になじめなかった。大人になってわかった。私は、「普通」と違う脳の持ち主だったんだって。高いIQをもちながら“高機能自閉症”に苦しんだ著者が“救い”を見出すまでの全記録。

([bk1]より)
いじめられた。仲間はずれにされた。ずっと「世界」になじめなかった。大人になってわかった。私は「普通」と違う脳の持ち主だったんだって。「高機能自閉症」に悩んだ著者が「救い」を見出すまでの全記録。

*20000328 ニキ リンコさんより
「4月の前半ごろ、スウェーデンのグニラ・ガーランドという女性の自伝が出ます。著者は、ずっと普通学級に通い、20代後半になって初めて、アスペルガー症候群と診断された人です。
自閉の感覚、自閉の論理、自閉の気分がよくわかるのではないかと思います。

■著者略歴

ガーランド,グニラ
スウェーデン生まれ。幼いころより周囲との違和感に悩んでいたが、成人してから自分に高機能自閉症という障害があったことを知り、却って心の安らぎを得る。その体験をつづった本書は、「自分探しの物語」として話題になる。スウェーデン在住。

■目次

1.愛してもらうには見返りがいるの?
2.私の“言葉”は役に立たないの?
3.人はみな同じ顔をしているの?
4.両親は愛さなくちゃいけないの?
5.「お友だち」って何?
6.「いじめられる」って何?
7.どうして「学校」に行かなくちゃいけないの?
8.いじめられっ子になったとき
9.お医者さんごっこ
10.私は「だめな子」なの?
11.どうして私には「世界」わからないの?
12.私は「大人たちのごみ箱」なの?
13.ドラッグ・アルコール・セックス
14.母と見た地獄
15.裏の世界からの脱出
16.本物の人間になりたい
17.仕事との出会い
18.「普通」の男性との出会い
19.自分は自分の専門化
20.今の私
訳者あとがき

■引用

 「私はずっと、自分のどこがおかしいのか、解き明かしてくれる記述を求めていた。何らかの説明がきっとどこかにあるはずだという希望は、私の無意識から消えることがなかった。それは完全に無意識のものではあったが、私が医学書のページを繰るようになったのも、この希望からだった。」p.136
 「自分には何か悪いところがあるのだろうか。何か具体的に、はっきりした悪いところがあるのだろうか。この考えは、ぼんやりとではあるが、しつこくつまとって、常に離れないのだった。「自分には、何か具合の悪いところがあるはずだ」[「何か」以降傍点:引用者]。」(Gerland[1996=2000:137])

 「私がどんな問題を持ち出そうと、先生は必ず、心理学的な説明をいくつも提示してくれた。(…)確かに理屈の通った説明だった。だから私は信じることに決めたが、内心ではしっくりこなかった。(…)いつも、何かが間違っている感じがつきまとっていた。でも当時の私はそれまで、「そうか、そうだったんだ」と納得がいくなどということは、まだ一度も経験したことがなかったのだ。「納得がいく」というのはどんな感じがするものなのか、知りもしないというのに、「違う」という確信など持てるはずがあるのだろうか?」(Gerland[1996=2000:221])

 「私は次々と医学書を読んだ。そして、こんなことをしている自分は、心気症に違いないと思った。いろいろな疾患や障害の説明を読んでは、ときおり、自分と重なる部分を見つけたりしていたからである。でも、心気症といえるほど思い込みが強かったわけではない。自分はあの病気だ、この病気だと信じたわけではなかった。自分に当てはまらない記述も非常に多かったのだから。」(Gerland[1996=2000:243])

 「私は突然、正しい本の正しいページをめくったらしい。そこには私がいたのである。 単なる偶然と片づけるには、あまりにもあてはまることが多すぎた。ところが、…先生は…あくまでも家庭環境のせいだという立場を崩さなかった。…こういう人たちにかかると、脳に損傷があると言われてしまうんですよ、そして、うまく行かないことは何でもかんでも、脳の損傷のせいだといって片付けられてしまうんですよというのが先生の話だった。」(Gerland[1996=2000:257])

 「私は、このレッテルを持って帰った。レッテルなど無駄だと言う人もいるだろうし、害になるだけだと言う人もいるだろう。でも私には、このレッテルは役に立つと思えた。ところが、ストックホルムに帰ってみると、私はひどく落ちこんでしまった。」(Gerland[1996=2000:262]

◇訳者あとがき

 「障害をもって生まれながら、何も知らず、健常児として育つ。それはときに、二重の意味で屈辱的な経験になることがあります。一つは、人と同じことができないのに、理由がわからないので、自分(p.282)のせいだと思ってしまう屈辱。もう一つは、みんなとの能力の差を埋めようとせっかく自分で工夫したやり方を不自然だ、卑怯だと思いこんでしまう屈辱です。
 自閉症スペクトル上の人々には、「暗黙の約束」を読みとる勘がありません。そんな私たちにとっては、記憶力と論理に頼り、計算に従って演技をするのは、生活のために必要な工夫なのです。車椅子や点字と同じ、自然で、正当なことなのです。なのに、このままではダメだ、普通にならなくてはと思い詰めて、自分を見失う。そこまでの犠牲を払って努力したのに今度は「他の人間をかたどった、安っぽいまがいもの、でき損ないの複製になってしまった」意識にさいなまれる。」(ニキ[2000:282-283])

 「[大学を]中退して放り出された先は、バブル崩壊前夜、八〇年代末の日本でした。「モノより心」「本当の自分」といった言葉があちこちで聞かれ始めたころです。「自分探しゲーム」「癒しブーム」に明け暮れた日本の九〇年代は、私にとって本当に奇妙な時代でした。「ありままの自分」なん言われたって、ありのままでは生活していけなかったではないか。私に必要なのは、「癒し」などではなく、力をつけることなのに。
書籍や雑誌の世界で、次々とこころの病理がテーマとして流行し、消費されるようすも不可解でした。みんな、あんなに正常なのに、仕事にも就けるのに、なぜ多重人格や連続殺人の本に熱中するのだろう? 次々と流行する異常心理の本に、私など手も届かないほど正常な人たちが「自分を重ねて読みました」とか「この主人公は私です」などというコメントを寄せているのを、私は悪い夢か何か(p.283)のようにぼんやり見ていました。」(pp.283-284)
 「「本当の私に出会う」なんてフレーズは恥ずかしいと思っていました。でもその一方で、自分のどこがおかしいのか、納得したかったのも確かです。なぜみんなが怒るときに怒れないのか。なぜみんなが笑わないときに笑ってしまうのか。なぜこんなに疲れてしまうのか……。」(p.284)
 「意外に思われるかもしれませんが、診断は大きな救いでした。自分にも障害があると知って、二重の屈辱から解放されたのですから。みんなと同じことができないのは自分のせいではないことがわかったし、勘でわからないことを計算で補うのはごまかしでも何でもなく、自分に合ったやりかたなのだと割り切れるようになったからです。」(ニキ[2000:285])

■言及・紹介

◆藤家 寛子 20040405 『他の誰かになりたかった――多重人格から目覚めた自閉の少女の手記』,花風社,230p. ISBN: 4907725620 1680 [amazon][kinokuniya] ※ a07.
 「私と同じように高機能自閉症者であるグニラ・ガーランドさんはその著書、『ずっと「普通」になりたかった。』の中で、ご自身の半生を綴っていらっしゃいますが、私の体験も、ほとんどが同じでした。視覚的イメージによって物事を理解する方法も同じだったので、彼女の本を読んだ時はどんなに気持ちが救われたことか! なぜなら、長らく「得たいのしれない生物」だっ<0013<た私が、やっと自分の存在できる世界を探し出すことができたのですから。」(藤家[2004:13-14])

◆立岩 真也 2004/04/25 「ニキリンコの訳した本たち・1」(医療と社会ブックガイド・37),『看護教育』45-04:(医学書院)

◆立岩 真也 2004/06/25 「ニキリンコの訳した本たち・2」(医療と社会ブックガイド・39),『看護教育』45-06:(医学書院)

◆立岩 真也 2008- 「身体の現代」,『みすず』2008-7(562)より連載 資料,

◆立岩 真也 20140825 『自閉症連続体の時代』,みすず書房,352p. ISBN-10: 4622078457 ISBN-13: 978-4622078456 3700+ [amazon][kinokuniya] ※


*作成:山口 真紀
UP:20080710 REV:20090502
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