『生命へのまなざし――多田富雄対談集』
多田 富雄 19951220 青土社,350p.
■多田 富雄 19951220 『生命へのまなざし――多田富雄対談集』,青土社,350p. ISBN-10: 4791753704 ISBN-13: 978-4791753703 [amazon]/[kinokuniya] ※
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内容(「BOOK」データベースより)
超(スーパー)システムとしての生命。自己とは、生命とは、生命活動としての文化とは。新らしい生命観を求めて、免疫、自己、老化、脳死と臓器移植、ウイルス、エイズなど、生命科学と文化の接点を縦横に語り合った、待望の対談集。
内容(「MARC」データベースより)
自己とは、生命とは、生命活動としての文化とは。新しい生命観を求めて、免疫、自己、老化、脳死と臓器移植、ウイルス、エイズなど、生命科学と文化の接点を縦横に語り合う、待望の対談集。
■目次
免疫という名の「自己」を守るシステム / 立花隆
まず基礎知識として / これこそサイエンスだ / 有名な背中 / 免疫学成立前夜
ネットワーク説 / 風が吹くと桶屋が儲かる / 免疫学の「大問題」
人間の免疫システムが最高か? / 慢性疲労症 / エイズ・ウイルスの悪意
フィールドとしての「自己」 / 中村雄二郎
生命体のゆらぎ / 方法としての「シンボル」 / フィールドとしての「自己」
脳と免疫のアナロジー / 老化のパラメーター / 「胸線」のフィールド
エイズ・クライシス / 反転する「舞台」
免疫学はハードの時代、しかし・・・・・・ / 養老孟司
メッセージに変形される抗原 / 一度、免疫学は終わった / 自己を構築するシステム
自己の崩壊 / 相互関係の上に成立する「寛容」 / 分子間の親和性は弱い
「密室での恐怖」の過程 / ディテール自身の法則で動く / 形態学の死角
組織適合遺伝子の選択 / 進化の加速と安定性 / 免疫学の三大問題と利根川進
免疫系を入れ替える / イェルネの予定調和説の崩壊 / ネットワークが崩壊する過程
イレギュラーな生物、不整合な人間 / 岡田節人
生物について何がわかったか / 「何とはなしに」うまくいっている生物
生物の再生・修復能力と免疫 / 癌と「場所」の機能 / 老化の不連続性と多重構造
死と誕生についての思想 / 科学の日程 / 整合性のないところで人間を考える
いつも自己に刺激されて生き延びている細胞 / 種を絶滅させる免疫不全
ウイルスの意味論 / 日沼頼夫
ウイルスは生物か / ウイルスの起源 / ウイルスの生態学
自己と非自己 / 日本人の起源 / エイズワクチンの可能性
U
生命の本質を探りながら / 加賀乙彦
脳死者の声を聞こう / 能は霊の世界を描きやすい
DNAの不思議な世界 / 個別性と拒絶反応
医学の前進と人間観の変化 / 木崎さと子
自分とは何かを考える医学 / スーパーシステムに目的があるか
肉体を基礎において考える
死に介入する医療 往復書簡 / 島次郎
生命という文脈での現代 / 月尾嘉男
身体の「自己」 / 「スーパーシステム」 / 時計仕掛けの臓器
「エイズ」の文明論 / 生命の全体性を示唆する「免疫」
V
自己・エイズ・男と女 / 河合隼雄
非自己は自己の延長線上にある / 胸線は生物時計 / 十歳という年齢の面白さ
ファジーでうまくいく身体 / 女は存在、男は現象か / 細胞の自殺について
スーパーシステムで考える / エイズの文化的に重大な問題 / 人体は都市である
能と進化論 / 浅見真州
能との出会い / 様式化される以前の物語世界を生かす
復曲能、新作能 / 脳死の問題と現代の新作能
医学と人生 / 石坂公成
生物学への傾斜 / 戦争から受けた思わぬ思想 / 伝研中村研究室入所前後のこと
照子夫人との出会いと最初のアメリカ留学 / IgEの発見につながった、未知のタンパクに対する抗体の作製
研究所で持ち得た温かい不思議な人間関係 / 陽の当たらない研究への寄付
アカデミズムとカンパニーのはざまで
からだの歴史とコスモロジー / 樺山紘一+養老孟司
免疫の語源と歴史のなかの疫病 / 病と免疫の文化誌 / 起源と歴史をめぐるロジックの構造
自己増殖的プロセスと生成・消滅の臨界点 / 個体と身体をめぐる記述
脳と心臓生命の座と身体性 / 生命科学と人知の地平線
あとがき
新装版によせて
対談者紹介
初出一覧
[対談者] 立花隆(たちばな・たかし)
1940年生まれ。東京大学文学部仏文科、哲学科卒業。評論家。『文藝春秋』 誌上で「田中角栄研究」を連載して衝撃を与える。著書に、『宇宙からの帰還』(中央公論社) 『脳死』(中央公論社) 『精神と物質』(共著、文藝春秋)など多数がある。
[対談者] 中村雄二郎(なかむら・ゆうじろう)
1925年生まれ。東京大学文学部哲学科卒業。明治大学名誉教授。哲学者。著書に、『中村雄二郎エッセイ集成』(青土社) 『中村雄二郎著作集』 『西田哲学の脱構築』(岩波書店)など多数がある。
[対談者] 養老孟司(ようろう・たけし)
1937年生まれ。東京大学医学部卒業。専攻は解剖学。東京大学医学部教授を退官、執筆活動を続ける。著書に、『唯脳論』(青土社) 『ヒトの見方』 『からだの見方』(筑摩書房)など多数がある。
[対談者] 岡田節人(おかだ・ときんど)
1927年生まれ。京都大学理学部卒業。京都大学教授、基礎生物学研究所所長、生命誌研究館館長等を歴任。専攻は発生生物学。著書に、『試験管のなかの生命』 『からだの設計図』(岩波新書)など多数がある。
[対談者] 日沼頼夫(ひぬま・よりお)
1925年生まれ。東北大学医学部卒業。京都大学ウイルス研究所所長、シオノギ医科学研究所長を歴任。専攻は、医学ウイルス学。業績に対し数々の賞を贈られる。著書に、『新ウイルス物語』(中公新書)がある。
[対談者] 加賀乙彦(かが・おとひこ)
1929年生まれ。作家。東京大学医学部卒業。同大学精神科医師、東京拘置所医官、上智大学文学部教授を経て、作家生活に入る。『宣告』(新潮社) 『湿原』(新潮社)などの作品を発表。数々の賞を受けている。
[対談者] 木崎さと子(きざき・さとこ)
1939年生まれ。作家。東京女子短期大学卒業。著書に、『裸足』 『青銅』(文藝春秋) 『海と蝋燭』(福武書店) 『いのちの海』(共著、人文書院)などがあり、数々の賞を受けている。
[対談者] 島次郎(ぬでしま・じろう)
1960年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。専攻は、医療技術政策論。三菱化学生命科学研究所社会生命科学研究室室長。著書に、『脳死・臓器移植と日本社会』(弘文堂)がある。
[対談者] 月尾嘉男(つきお・よしお)
1942年生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。東京大学工学部教授、東京大学大学院教授等を歴任。著書に、『ポスト情報社会の到来』 『贅沢の創造』(PHP研究所) 『マルチメディア超企業破壊』(徳間書店)など多数がある。
[対談者] 河合隼雄(かわい・はやお)
1928年生まれ。京都大学理学部卒業。日本人ではじめてユング派精神分析家の資格を取得。京都大学名誉教授。著書に、『イメージの心理学』(青土社) 『明恵 夢を生きる』(新潮社) 『河合隼雄著作集』(岩波書店)など多数がある。
[対談者] 浅見真州(あさみ・まさくに)
1941年生まれ。父、浅見真健の指導の後、観世寿夫に師事。多くの復曲と斬新な演出を手がけ高い評価を得る。現在、能楽協会理事。映画 『利休』(勅使河原宏監督)の制作他、海外でも独自の活動を続ける。
[対談者] 石坂公成(いしざか・きみしげ)
1925年生まれ。東京大学医学部卒業。国立予防衛生研究所室長、デンバー小児喘息研究所部長、ラホヤアレルギー免疫学研究所長等を歴任。免疫学の歴史に残るIgEの発見等、多くの業績で数々の賞が贈られている。
[対談者] 樺山紘一(かばやま・こういち)
1941年生まれ。東京大学文学部西洋史学科修士課程修了。専攻は、西洋中世史。現在、東京大学文学部教授。著書に、『ゴシック世界の思想像』(岩波書店) 『西洋学事始』(中公新書) 『歴史のなかのからだ』(筑摩書房)ほか多数がある。
■引用
「多田 あんまり安易にアナロジーで考えてはいけないとは思いますが、それでもやはりひとつ思い当たることがあります。科学の研究というのは、単に、現象を見るだけでは面白くないですから、一種の科学思想みたいなものが必要になると思うんです。実際には現代の生物学では科学思想などというものは完全に欠けていますから、そういう点で免疫学の中に科学思想になり得るようなものがあるかというのがひとつのポイントなんです。」([82])