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『死刑制度必要論 その哲学的・理論的・現実的論拠』

重松 一義 19951130 信山社出版, 104p.


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■重松 一義 19951130 『死刑制度必要論 その哲学的・理論的・現実的論拠』,信山社出版, 104p. ISBN-10: 4882619830 ISBN-13: 978-4882619833 1365 [amazon]

■内容(「MARC」データベースより)
口先だけの合理化、自己弁護に終始し心を置き忘れた現代人が、被害者の痛みという現実から眼をそらし、自ら手を下さず、加害者の人権や助命のみを強調する 楽観的で無責任な死刑廃止論に、異を唱える書。〈ソフトカバー〉

■目次
第一章 死刑制度永久必要論――その哲学的・理論的・現実的論拠――
 一 総論的序説として
 二 哲学的論拠からの検証
 三 理論的論拠からの検証
 四 現実的論拠からの検証
 五 結語としての法的判断
第二章 恩赦をめぐる制度と思想―なお特赦減刑などの機会を求めて――
 一 恩赦の概念と史的変遷
 二 恩赦の目的と機能の多様性
 三 現行恩赦の種類・区分とその効果
 四 現行恩赦の運用手続と問題点
 五 恩赦に求める近代法の理念
第三章 刑罰にみる赦の内在性とその限界――それでも赦を排除する例外の許容要素――
 一 死刑囚の心理と行動
 二 戦後にみる死刑囚処遇の実際とその経過
 三 死刑囚の類別と赦および執行回避の段階的対応
 四 誤判問題の法的位置づけとその解消策
 五 人倫ならびに法的判断としての赦の限界


■紹介・引用

「死刑廃止を主張する論拠
 (イ)国家の根本的矛盾として、死刑が国家の手による殺人、法の名のもとにおこなう殺人であるゆえ認めることができない。
 (ロ)神でない不完全な人間を裁くという行為であるため、誤判の場合には絶対的価値である生命の復活が不可能で適法手続きに反したこととなる。
 (ハ)死刑には教育効果がなく、むしろ被害者およびその家族への贖罪、救済にあたらすべきである。
 (ニ)死刑には威嚇力すなわち一般予防の効果がなく、かえって人の心を残虐化させ、憲法でい/
う残虐刑に該たるものである。
 (ホ)刑務官は矯正教育を任務とするものであって、死刑執行の任を命じることは、制度的にも使命的にも反するものである。
 死刑存続を主張する論拠
 (イ)人を殺した者はその生命を奪われるとすることは一般国民の法的確信・国民的感情である。人の命を奪った者への生命保証は人名尊重とはいえない。自 らの妻子が殺されても廃止を主張し続けるものか疑問である。
 (ロ)死刑には威嚇力・犯罪抑止力すなわち一般予防の効果があり、凶悪犯に対する社会防衛・法秩序維持に不可欠である。
 (ハ)死刑は被害者およびその家族に対する被害感情を満足させる国の代行行為である。
 右の死刑廃止論は理のある限り謙虚に耳を傾けたいが、(イ)の国家の手による殺人という論拠は、近代国家が仇討など私人による自力回復行為・自力救済行 為を認めない以上、国家の手による代行行為はやむを得ない。(ロ)生ま身の人間が同じ人間を裁くということは誤判のおそれがあるとする裁判官懐疑の論であ るが、この懐疑の論を進めれば、軽微な犯罪はもとより一切の裁判は無罪で一貫しなければならないとの極論に到達しよう。(中略)/
(ハ)の死刑に教育効果がない点については、死刑確定者の受けとめ方、反省贖罪の気持の有無にあり、被害者およびその家族への贖罪と救済にあたらすべきで あるとする主張には難しい心理的問題があるといえよう。(中略)(ニ)の死刑に威嚇力(犯罪抑止力)がないという点についても、一九四五年西ドイツ憲法で 死刑を廃止にしたとたん、兇悪なテロ、銀行襲撃事件が続発しており、いちど廃止し復活した国もこの例にもれない。
 (ホ)の刑務官による死刑執行は、現行職制上、合法的な職務命令の執行としてやむを得ず、刑執/
 行という職務遂行の間は、他の自由刑(懲役・禁固・拘留刑)に対する矯正の処遇権限は一時停止されたと見做す職務執行法を、けじめとして設けるか、死刑 囚自らの手で服毒死する執行方法等を考える以外にないであろう」(pp.17-20)

「私は死刑制度は人類と獣類とを区別するレフリー、分岐点として存在するべきものとの認識にあり、たとえ千年、万年凶悪犯罪が起こらぬとも、人類自身の戒 めとして、錘しとして、法として掲げつづけて置くことが、人類の叡智であり、見識であり、人間の尊厳と考えるからに他ならない。法は存在すること、すなわ ち、たとえ適用されずとも厳然として存ることに意味があり、これほど重大な存在価値ある死刑制度を、時に試行、時に一時停止、時に暫定的廃止、そして復活 すること自体に誤りがあると云わねばならない。死刑制度は恒星のごとく永久に存在してこそ人間の真価を問うものなのである。ひと口に言って、死刑の法条を 法典から消去すれば社会の秩序が立ち、死刑廃止を看板として掲げれば文化国家の証しであるなどというほど、人間は、社会・国家は単純なものではないのであ る」(p30) 


*作成:櫻井 悟史
UP:20071122
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