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『対話 生命・科学・未来』

養老 孟司・森岡 正博 19950401 『対話 生命・科学・未来』,ジャストシステム,254p. ISBN-10: 4883090892 ISBN-13: 978-4883090891 1835

→20030210 『対論 脳と生命』,ちくま学芸文庫,286p.


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■養老 孟司・森岡 正博 19950401 『対話 生命・科学・未来』,ジャストシステム,254p. ISBN-10: 4883090892 ISBN-13: 978-4883090891 1835
→20030210 『対論 脳と生命』,ちくま学芸文庫,286p. ISBN-10: 4480087451 ISBN-13: 978-4480087454  945  [amazon]

■内容(「BOOK」データベースより)
とめどなく科学技術が発達していく現代社会において、人間の「生」と「死」が持つ意味とは何なのか?快適さを追求してきたはずの都市のなかに、人間はみず から囲い込まれてしまったのではないか?そこで、はたして、人間はほんとうに幸福になったのか?日本人の死生観から、医療、宗教、超能力、教育問題、 ヒューマニズムの本質まで。オウム事件直前の1994年末、脳科学者と生命哲学者が、生命と科学、そして人間社会の未来について、くまなく踏み込んでいく 白熱の対論。

■著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
養老 孟司
1937年、神奈川県生まれ。現在、東京大学名誉教授、北里大学基礎教育センター教授

森岡 正博
1958年、高知県生まれ。現在、大阪府立大学総合科学部教授。哲学・生命学・科学論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■引用
養老 ……いまの死の問題に関してはおもしろい話がいろいろあって、僕は『楢山節考』も大変好きだけれど、あるとき乗ったタクシーの運転手が、「うちの村 では、年寄りが脳卒中になったら飯食わせないんですよ」というんだね。これも立派な安楽死、尊厳死ですよ。
 農家では要するに身体が動かないとどうしようもないんで、貧乏なところは楢山節考の世界なんです。脳卒中を起こしたら飯を食わせないというのは、はなは だもっともな解決であったわけです。日本はたぶんあちこちで、実際にそういうことをやってるんですよ。
森岡 むしろ、そういう消極的安楽死みたいなことは、老人病院とか、障害者施設とか、ふつうの病院の末期医療の場面で暗黙のうちに行われていますよ。あま りおおやけに議論されないだけで。
 でも、いま養老さんがいわれたようなことは、尊厳死協会がいっているような意味での尊厳死ではないわけですよ。本人の事前の意思表示と事前指示にもとづ いて代理執行しているわけではない。本人の意思はわからないから、家族と担当医師が、あうんの呼吸でやっている。こういうのを肯定すべきかどうかはすごく 難しいですよ。(115)

養老 いまの話は進化論の歴史などによく出てくるんですね。人間を頂点として、さらにその上に天使がいて神様がいたりするんだけど、ともかく階段になって いる。そういうのは極めて西洋的なものだという気がする。先ほど姥捨ての例を挙げましたが、僕は姥捨てはヒューマニズムとは実は何の関係もないと思うんで すね。
森岡 というと?
養老 自然というものをある程度評価する文化では、自然のなかに年寄りを置いてくるのはむしろある種の評価なんです。いわゆるヒューマニズムからいうと、 アンチヒューマニズムみたいに聞こえるんだけど、どうも僕は違うような気がするんですね。むしろ自然なことを意識してやってるんだという感じがする。姥捨 てを描いた『楢山節考』が現代日本の始まり、戦後の始まりに与えた影響というのはそういうことではなかったか。
あれは非常に早い時期に、我々がいま議論しているようなことに対して無意識にアンチテーゼみたいなものを提出しているんです。あれは一種の自然の評価で あって、山のなかにばあさんを置いてきて何が悪い、というとおかしいんだけど、本来人間はそういうものだという、ある種の積極的な意思がそこにあったと思 うんです。
森岡 あの話のなかでは老いた親を息子が担いで捨てにいくわけだけれども、担いで捨てにいった人もいずれ自分が老いたら、今度は自分が担がれて捨てにいか れる。ある意味での平等性はそこで保証されていますよね。
養老 そうですね。だからもっと積極的に自然というものを評価している。その評価自体が都会に住んでいる現代人にはちょっとわからないというところがある と思うんですね。
森岡 でも、現代人にはリアリティわかないですよ。我々があれを読むときに物語としての美しさは感じるけれども、あの世界で生きたいというリアリティは感 じない。だからこそ、逆にインパクトがあると思うんですよ。
養老 しかし、実にドライでいいんだけどね。サバサバしてますよ。
森岡 当たり前のことなだけど、あそこで書かれている姥捨てと、現代社会のなかにある、老人病院に捨てにいく姥捨てとは全然違うわけで、そこはきちんと区 別しておかなければいけない。
養老 御木達哉(原注88)さんという、医者でカフカの研究家でもある人が『ガラス病』という小説を書いている。医療批判をやるんだったら、あれを読んだ らおもしろいと思う。いまの老人病院における最大の死因は何だという質問がそのなかに出てきて、それは溺死だというんです。どういうことかというと、心臓 血管系があれだけ弱った人たちに栄養を与えるという名目でどんどん点滴をする。点滴をすれば当然のことですが、心不全で肺に水がたまる。だから結局溺れて 死ぬ。それが最大の死因だと。
森岡 濃厚治療が原因となって死んでいくわけですね。皮肉な見方ですけど、現代医療のある側面を象徴しているような話に聞こえます。(156-158)


UP:20080304 REV:
個別性/普遍性・親密圏/公共性死  ◇哲学/政治哲学(political philosophy)/倫理学  ◇BOOK
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