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『1995年1月・神戸――「阪神大震災」下の精神科医たち』

中井 久夫 編 19950324 みすず書房,298p.

last update: 20110820

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中井 久夫 編 19950324 『1995年1月・神戸――「阪神大震災」下の精神科医たち』,みすず書房,298p. ISBN-10: 4622037971 ISBN-13: 978-4622037972 \1545 [amazon][kinokuniya] ※ m d10

■内容

・「BOOK」データベースより
半ば火にあぶられたオリーヴの木、水分をしたたかに含んだこの一本のオリーヴが、火元の病院から風下の家を守った。「この木のおかげで私の家は焼けなかったのですよ」と狭い小路からおばさんが出てきて言った。この病院の47名の患者と院長の母堂とは、当直医1名ナース2名他1名より成る職員の努力で、全員救出された。
・「MARC」データベースより
最初の一撃は神の振ったサイコロであった。1月17日の阪神大震災の直後から、各地の精神科医たちが神戸に集った。彼らは一体どのような状況の中で何を行ったのか。それぞれが生の声を報告する。

■目次

震災下の精神科救急――刊行に寄せて (土井 健郎)
阪神大震災・神戸大精神科を応援して――九大精神科の場合 (田代 信維)

   T
災害がほんとうに襲ったとき (中井 久夫
 付・1995年2月24日からみて 私の日程表
   私の急性ストレス症候群
   *
被災地のカルテ (安 克昌
心的外傷反応に対処する――心理教育的アプローチの試み (P・アンダーウッド)
震災私記――非日常と日常とをつなぐもの (生村 吾郎)
震災後の清明寮にて (白川 治)
阪神大震災における看護部の対応――特にメンタルヘルス・ケアの観点から (新道 幸恵)
災害時の院長日記 (山口 直彦)
   *
それぞれの場所で (中井 久夫)(写真と文)

   U
「大切な贈り物」 (阿瀬川 孝治)
災害地の精神科医――阪神大震災被災地での経験から (岩井 圭司)
災害の内と外 (梅末 正裕)
現場に必要なもの――「精神保健センターニュース」を発行して (小川 恵)
わが神戸ボランティア記 (加賀 乙彦
神戸大学病院 1月17日午前 (九鬼 克俊)
被災と抱え (小林 俊三)
こどもさんが心配な方々に A (塩山 晃彦)
神戸をあとにして (白尾 一正)
最初の3日間 (杉林 稔)
こどもさんが心配な方々に B (関 渉)
神戸にて春を待つ (高谷 育男)
私の震災体験――石垣島から神戸へ (田中 究)
語り継ぐというボランティアの役割 (富田 伸)
風景が変わった神戸 (中村 純)
九州大精神科からのボランティア医師派遣 第一陣の経験――1月26日−1月31日 (福田 明)
避難所で体験したこと (藤城 聡)
精神科研修医として経験した災害時一般救急 (保坂 卓昭)
阪神大震災のボランティア体験 (星野 弘)
木が人間を守ってくれた (細見 ゆきよ)
阪神大震災をかいま見て (前田 久雄)
中井先生が大変だっ! (松尾 正)
阪神大震災日記――長田保健所で診療を始めるまで (宮崎 隆吉)
避難所でのメンタルケア・サービスを体験して (宮原 明夫)
阪神大震災のボランティアに参加して (村崎 修)
神戸市中央保健所の精神科救護所の活動 (森井 俊次)
5日間の滞在から (横尾 博志)
天災――神戸に向かってから (横田 謙治カ)
医局にとどまりながら (吉村 典子)
阪神大震災・報告レポート (李 圭博・鈴木 英世)

神戸大学医学部付属病院関係者一覧
支援医師団一覧
参考文献
あとがき
資料篇

◆関連図書
中井 久夫・麻生 克郎・小川 恵・郭 慶華・川本 隆史・J ブレスラウ・村田 浩・六反田 千恵 19960408 『昨日のごとく――災厄の年の記録』 みすず書房,324p.

■引用

「高齢の糖尿病患者、高血圧患者が避難所にいつづけた。ある時期までは救急段階にならないと入院させてもらえなかった彼らは、精神科患者よりも恵まれていなかった。数十万の避難民の医療ということはだれも想像していなかった事態である。一般化のシステムについては私は知らない。しかし、80代、90代の老人が避難所で息を引き取る例を一人ならず耳にした。」(「災害がほんとうに襲った時」中井久夫 p50)

「多くの精神科医はPTSDについて語っている。しかしわれわれの関係者の私の報告によれば、避難所のようにむきだしに生存が問題であるときはこれは顕在化しない。おそらく仮設住宅に移住した後に起こるのであろう。」(「災害がほんとうに襲った時」中井久夫 p51)

「コミュニティが崩壊しなかった証拠はいくつもある。町の物価は突然安くなった。隣の店が倒壊しているときに商売していて暴利をむさぼるなんてとんでもないといった人もいる。コーヒーは100円ないし200円となり、ライスカレーは500円となった。炊き出しで食べることが、その気になればできるということもあるかもしれないが、どこの炊き出し所でも、被災者かどうかを疑うことをしなかった。こういう状況では頭から人を信じてしまうか、頭から疑ってかかるか、どちらかしかない。神戸市民は前者を選んだのであろう」 (「災害がほんとうに襲った時」中井久夫 p60)

「消防、警察、建築などの分野で働く人たちのなかにも、自分も被災者なのにほかの被災者を援助しているというケースがたくさんある。役所も病院もみんなダメージを受けている。とくに、避難所となった学校関係者の疲労は限界に達している」(「被災地のカルテ」安 克昌 p113)

「地震から約2週間を過ぎたころ、チューリップ、フリージヤ等の春を告げる、明るくて華やかな花がたっぷりと届けられ、各病棟と外来のカウンターを飾った。このことは、地震以来余震の不安、ライフラインの遮断による生活の不自由さ等で、暗くストレスの多い日々を過ごしていた患者さんや医師・看護婦等の職員に明るいい気持ちを注ぎ込み、メンタルヘルス・ケアに貢献した」(「阪神大震災における看護部の対応」新道 幸恵 p 147)

「環境的な問題もあり、"不眠"を訴える人は予想以上に多く、その他、余震への不安感、将来絵の不安感、共同生活によるさまざまなすとれすがもたらすと思われるイライラ感を訴える人が多かった。これらの人たちに対して、必要最小限の薬物を投与したり、ただ話を聞いてあげただけでも効果的な場合があったが、専門的な立場からそうした精神状態が決して特別なものでなく、多くの人たちが体験していることであることを説明するだけでも、自分たちが初めて体験する精神状態からの不安を和らげるのに効果的ではないかと感じた。」(「避難所でのメンタルケア・サービスを体験して」 宮原 明夫 p224)

「崩れた町並みだけを見ていると希望とかわいてこないけど、その中を歩いている人たちの目を見ると希望が見えてくるといった看護婦のことばが、強く私に焼き付いている。」 (「阪神大震災のボランティアに参加して」村崎 修 p236)

■書評・紹介・言及

http://www.soc.shukutoku.ac.jp/yokoyama/LIBRI/HANSIN_1.HTML

◆立岩 真也 2013/12/10 『造反有理――精神医療現代史へ』,青土社,433p. ISBN-10: 4791767446 ISBN-13: 978-4791767441 2800+ [amazon][kinokuniya] ※ m.


*作成:岩田 京子
UP: 20101111 REV: 20110820
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