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Limits of citizenship : migrants and postnational membership in Europe

(市民権の限界−ヨーロッパにおける移民とポスト国民的メンバーシップ)

Yasemin Nuhoglu, Soysal


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作成:能勢桂介(立命館大学大学院先端総合学術研究科http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/g/nk01.htm

◇Yasemin Nuhoglu, Soysal 1995 Limits of citizenship : migrants and postnational membership in Europe, Univ of Chicago Pr.

Amazon.co.jpより
Book Description
In many Western countries, rights that once belonged solely to citizens are being extended to immigrants, a trend that challenges the nature and basis of citizenship at a time when nation-states are fortifying their boundaries through restirictive border controls and expressions of nationalist ideologies. In this book, Yasemin Soysal compares the different ways European nations incorporate immigrants, how these policies evolved, and how they are influenced by international human rights discourse.
Soysal focuses on postwar international migration, paying particular attention to "guestworkers." Taking an in-depth look at France, Germany, the Netherlands, Sweden, Switzerland, and the United Kingdom, she identifies three major patterns that reflect the varying emphasis particular states place on individual versus corporate groups as the basis for incorporation. She finds that the global expansion and intensification of human rights discourse puts nation-states under increasing outside pressure to extend membership rights to aliens, resulting in an increasingly blurred line between citizen and noncitizen. Finally, she suggests a possible accommodation to these shifts: specifically, a model of post-national membership that derives its legitimacy from universal personhood, rather than national belonging.
This fresh approach to the study of citizenship, rights, and immigration will be invaluable to anyone involved in issues of human rights, international migration, and transnational cultural interactions, as well as to those who study the contemporary transformation of the nation-state, nationalism, and globalization.

1導入

 「私が"ポストナショナル"と呼ぶこの新しいモデルは以前と異なったた論理と実践を反映している。つまりナショナルな権利として以前、定義されたものは「パーソンフッドpersonhood」をもとに正当化された資格となるのだ。このモデルの規範的枠組と正当性は、世界の原則としての人権を実行するトランスナショナルな言説や構造に由来する。」3

編入体制の種類(略)

メンバーシップのグローバルパラドックス 
「グローバルな要素をはぶき、分析単位として国民国家に焦点を当てることによって、多くの政治社会学は明らかにナショナルに境界のシティズンシップモデルを特権化し、現代のメンバーシップの再編を回避するのだ。この国民単位偏重主義を正すために、ポスト・ウォー期のグローバルシステムによって移民編入の図式、メンバーシップの範囲、政体の境界が形成されることを強調する。」6

・主権と人権の矛盾
「囲まれ、領域化された国民国家の構築物と普遍的で脱領土的な権利のあいだで、弁証法的な緊張を生み出しながら、 明らかな矛盾を」8
戦略と組織の研究

2 国際移民と国民国家システム

国際移民と国民国家の出現
「国際移民の観念とカテゴリーは国民国家システムの産物であり、国民的市民権のイデオロギーなのである。」14
市民権⇒排他性を帯びる。
現代の国際移民:ゲストワーカーシステム
移民、一時的なものであることを期待され、これは排他的な規範である。だがゲストワーカーは居つづけた。21
ヨーロッパにおける移民人口統計
古典移民モデルの崩壊27

3 編入体制の説明

政策言説と組織構造としての編入体制
移民と編入政策を説明
メンバーシップモデルと編入パタン
パーソンフッドとメンバーシップのグローバル言説

4 編入の言説と手段

スェーデンとオランダ:協力グループとしての移民
スイスとイギリス:個人としての移民
フランス:個人的な移民、中央集権国家
ドイツ:混合事例

5 編入の組織

集権化された編入、協働の参加
集権化され、国家中心的な編入
国家主義的で協働主義的な編入
国家の?編入パタン

6 移民の集団組織

集合組織のパタン
新しい行為者、新しい戦略
超国家組織、組織化されたイスラムについてのノート

7 移民のメンバーシップ権と地位

 次の章は、非‐国民の権利
入り口と居住:メンバーシップを守る
外国人の入、住の許可(人口移動の制限)は、国の主権にとって基本事項。120
1974以降、移民は制限されてきたが、移民と家族の地位は保証されてきている。半分以上が永住権を持つ。122

メンバーシップの権利:社会的、経済的、政治的な
・社会権(教育、健康、福祉と社会保険)
市民権は社会保障の資格を決定するのに重要な要素ではなく123、外国人の法的地位と物理的存在が重要である。124
居住は社会的利益にとって必ずしも必要ではない(家族手当、年金など)
全般的に国で取り決められた一連の社会権は外国人にまで同様に延長されている。125
・経済権
経済活動の制限→一度、永住権をとると制限なし。
公務員、制限あり
・政治権
いくつかの国で地方参政権認められる。129

ついに非国民は、憲法か外国人への法的な延長によって保証されるものとして、完全な市民権を与えられた。129 、唯一の制約、防衛。

ゲストワーカーのメンバーシップ
1.マーシャルの権利拡大理論とゲストワーカーへの権利付与は逆
2.非国民を権利と地位の国際的な標準で扱う。(非合法移民の合法化など)

これらは20世紀初期と比べると目覚しい。
移民:以前だと、同化か追放。だが、現在は権利を認められて、ホスト国に編入される。
権利の拡大、差別を残すかもしれない。
「だが、皮肉なことにゲストワーカーが次第にヨーロッパのホスト国のメンバーシップに編入されるにつれ、彼らがどう上手く適応するかについての議論が強まり、彼らの文化的他者性が強調されている」135

8.メンバーシップのポスト国民モデルにむけて

ゲストワーカーと市民権:古い概念と新しい編成

移民に触発された最近の市民権の研究
・T.ハンマー 「デニズンシップ(永住権)」研究。だが、これはナショナルな市民権の変則とみなされており、まだ、国民国家のうち
・ヘイスラー&ヘイスラー「福祉国家の延長線上に移民への市民権の拡大がなされた」
→福祉国家排他性があり、国民の境界のなかでのみ、普遍的。
          ↓↓
つまり、ナショナルな市民権の根本的変化を示していると考えるべきだ。

ポストナショナルメンバーシップのモデル
「メンバーシップの流動的な境界は、必ずしも国民国家の境界が流動しているということを意味しない。」141
「これらの権利の正当性は今やトランスナショルな秩序のなかにあるが、個人の権利と資格の重要な実現はおもに国民国家によって編成される。」143

メンバーシップのトランスナショナルな源泉
メンバーシップのトランスナショナルな源泉は何か?
1国際関係の編成の変容
2多様な国際規則や法によって公式化され、正当化される個人の権利に関する普遍的なルールと観念の出現 145
国連人権宣言、ECHR(欧州人権条約)、移民法、難民法、ヨーロッパ共同体法(もっとも包括的)
また、これらは参政権、文化権(マルチカルチュラリズム)も含む。
「私の議論は西欧から事例を引き出してきたが、私が展開するテーマはヨーロッパに限定されるものではない。人権に関するトランスナショナルな規範や言説が国民国家の境界を超えて普及しながら、ポストナショナルなモデルは活性化し、世界中を覆っていく。」156

ポストナショナルメンバーシップと国民国家の弁証法
国民主権と普遍的人権の矛盾、相克→
「これらの明らかなパラドックスによって戦後のグローバルシステムの根本的な弁証法をあらわしている。つまり、国民国家とその境界が境界管理の主張と国民性への訴えを通じて具体化している一方、パーソンフッドという普遍的権利に基づく新しいメンバーシップのモデルが、国民的秩序を超えていく。」159

 さらにこれは、権利(普遍的人権)とアイデンティティ(国民主権)の矛盾の問題でもある。
主権は国際的に認められており、エスニック・マイノリティなどは「国民性」を主張する。
他方、政治的文化的、自己決定への集団的権利は普遍的人権として、次第に規則化されてきている。                     
↓↓
新しいダイナミズム:ネイションを生み出すと同時に、断片化、意味の置き換え、ひいてはネイションの非正当化をひきおこす。
「特殊主義的なアイデンティティは、人間性の核を表現する様式(人権)に変換され、普遍的に流布しながら、「国民」はそのカリスマ性を緩め、平凡なものになる。」161

「人権の普遍的言説のなかに「国民性」をはめこむことによって、国民と国民性に付随する境界の意味が曖昧になる」162

9 結論

表8・1 ナショナルな市民権とポストナショナルな市民権の比較

次元?           モデルTナショナルな市民権 モデルUポストナショナルなメンバーシップ
時代区分          19世紀〜20世紀中頃   (第二次世界大)戦後(1960年代頃から)
領域            境界のある国民国家     流動的な境界
メンバーシップと領域の一致 一致            一致せず
権利/資格         単一な地位         複数の地位
メンバーシップの基礎    共有された国民性(国民的権利) 普遍的人間性(パーソンフッド)
(人権)
正当性の在り処       国民国家          トランスナショナルな共同体
メンバーシップの編成    国民国家          国民国家


UP:20050922 REV:
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