『企業社会と人間――トヨタの労働、生活、地域』
職業・生活研究会編 19940331 法律文化社,595p.
■職業・生活研究会編 19940331 『企業社会と人間――トヨタの労働、生活、地域』,法律文化社,595p. ISBN-10:
4589017830 ISBN-13: 978-4589017833 15750
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■内容(「MARC」データベースより)
トヨタ自動車の企業城下町として、企業と共に繁栄してきた豊田市について、1970年代末から調査した内容をもとに、企業が地域社会とどのように関わって
きたのかを述べた研究論文集。
■目次
序章
第T部 トヨタ:経営と労働
第1章 「自動車不況」とトヨタの90年代戦略
第2章 トヨタ生産方式と労働・労働組織
第3章 労働と「熟練」の変化
第4章 現業労働者の企業内熟練形成
第5章 事務・技術部門の機構改革とホワイトカラー
第6章 労使関係と労働者意識の構造
第7章 トヨタ企業連合の形成過程と現状――東海協豊会企業の企業間関係
第8章 トヨタの海外現地生産工場
第U部 豊田:地域と住民
第1章 労働者階層の形成過程――生活暦分析のからのアプローチ
第2章 大企業労働者の〈家族と企業社会〉
第3章 トヨタ式生活様式と生活問題
第4章 家族生活と生活時間
第5章 企業社会と住民組織
第6章 豊田市地域社会の成熟課程と住民自治
第7章 外国人の集住と地域社会――日系ブラジル人を中心に
終章
■引用
「第4の論点として,トヨティズムがネオ・フォーディズムかポスト・フォーディズムかという問題は,これまで述べてきたいくつもの論点のいわば総合評価で
あるとみなすことができる。ここでも「モノづくり」の立場からはネオの側面が浮上することになり,「ヒトづくり」の立場からはポストの浮かび上がることに
なる。トヨティズムにおけるネオとポストの両要素は現実のトヨタの労働生活と工場運営のなかに客観的に存在しているのであって,トヨティズムは,日々の自
動車生産を推進する労働糧とこれを担う単純労働者に対しては,日々の自動車生産を推進する労働過程とこれを担う単純労働者に対してはネオ・フォーディズム
を貫徹する一方,この労働過程を職場集団単位に編成し組織化する方式と,そのために必要となる組織労働と統合労働についてはポスト・フォーディズムの段階
にある。
トヨティズムは国際比較のうえからみると特異な労使関係をその不可欠な構成要素としていて,その内容は労使関係をもっぱら論じた6章の展開に示されてい
る。トヨタにおける労使関係の特異な性格というのは以下の諸点である。労働組合の組織形態としての企業別組合,「労使宣言」のもとでの「労使相互信頼」路
線,労使協議会方式による組合組織の官僚制化,これらのことからの結果ともいえる組合員の要求実現の脆弱性,などである。作業の一時的な交代要員がいない
こと,課業の設計には余裕時間が最初から含まれていないこと,QCや改善が作業密度をますます高めること,ストレスによる管理がおこなわれていること,応
援や多能工化が自由におこなわれていること,等々のトヨタにおける労働力の企業サイドからの柔軟な活用は,労働組合の職場における規制力の弱さを前提にし
てはじめて可能になっていること,である。また歴史的にみると,戦後初期の職・工身分差別撤廃闘争が結果として生産労働者の個別企業への封鎖をもたらした
こと,トヨタ生産方式の発展の歴史とトヨタ労組の組合機能の交代の歴史とは相互に関係があることも重要である。」(p.576)
*作成:橋口昌治