『なぜ"寝たきりゼロ"なのか――新しいケアが始まっている』
三好 春樹 19940306 ライフケア浜松,77p.
■三好 春樹 19940306 『なぜ"寝たきりゼロ"なのか――新しいケアが始まっている』,ライフケア浜松,77p. ISBN-10: 4887201249 ISBN-13: 978-4887201248 800 [amazon] ※ b 0fm/a01 ts2007a
内容(「MARC」データベースより)
「心が動けば身体が動く」…生活リハビリを実践して多大な成果をあげている三好春樹氏の講演録。お年寄りを深く理解できる、ケアの本質を言語化、理論化できる氏のユーモアたっぷりの講演録をケアの現場の活力剤に。〈ソフトカバー〉
なぜ寝たきりはいけないのか
「ここでちょっと考えて見ましょう。なんで寝たきりはゼロにしなければいけないのか。寝たきり老人がいるのは、日本だけだなんて言いますね。朝日新聞あたりが主催するセミナーなんか行きますと、みんな暗い顔をして帰ってくるそうです。西洋は素晴らしくて、日本はだめだ、一体どうなるんだろう。で、みんな北欧を見に行ったりするんです。町長以下、みんな北欧に行って見てきたなんて町が一番やってないですね(笑)。日本じゃ何にもできないって諦めてるところがある。おかしな話です。
私は寝たきり老人が日本に多いっていうのは、決して悪いことではない、いや、それ自体は悪いことなんだけど、マイナスだけで捉える必要はないと思います。というのは、まず寝たきりになっても栄養が行き届くっていう豊かさがないと、寝たきり老人なんていな<0009<いんですよ。脳卒中になって生き長られえる国っていうのは、世界で数えるくらいしかないんですからね。旧共産圏だとか、発展途上国ではできないですからね。さらにその上、他人に依存しても生きてゆけるという文化を持っているところでなければならない。これ西洋じゃ無理なんです。西洋は自立してなかったら人間じゃない、っていう世界です。自立のためには必死でやりますが、一度他人に依存しちゃうと、もう生きていけないという世界ですね。依存して生きていけるというのは、東洋なんです。
この二つの条件を満たしている国が日本だけなんです。それで寝たきりが多い。日本の悪徳みたいに言われていますが、そういう意味では老人の寝たきりをいかに克服していくのかっていう方法論も、この二つを武器にする他ない。一つは豊かさ、もう一つは相互依存手です。自立というのは、人間にとっては幻想みたいなものですね。自立、自立なんていわれていますが、自立して生活している人なんか、どこにもいないんです。
人間は一生に3回、他人に頼らなければいけ<0010<ない。子供の時、病気の時、年取った時です。最後の年取った時というのは、長生きした者の特権ですから、援助してもらってありがとうと言えばいいんです。そういう文化をいまだに持っているんですからね。これを使って寝たきりの問題を何とか解決していこうということです。ですから、外国に対して恥ずかしいから寝たきりを減らそうなんていう発想では困るんです。」(三好[1994:9-11])
「床ずれができるから」? 11
床ずれは予防できる 15
「身体機能低下」という理由も… 18
「これは先ほどの寝たきりにしていれば床ずれができますよというのよりは、はるかにいいですね。老人のお尻だけじゃなくて、体全体見てますからね。[…]さらにこれに心<0019<理的機能の低下をつけ加えます。[…]この心理をつけ加えたとしても、身体プラス心理でいまだに個体しか見てないんです。」(三好[1994:19-20])
寝たきりは老人から生きる意欲をうばう 23
「体がだめになるから寝たきりはだめだという言い方が説得力あるかというと、老人に対しては効果がないんです。」(三好[1994:23])
寝たきりは人間崩壊だ 27
表情こそ雄弁 28
座ると表情の出るわけ 33
「重力に負けてる姿勢では人間は生き生きしない。重力に抵抗して、重力を利用するというのが、実は人間の生活ということであり、人間の主体性ということになってくるわけです。その抗重力、主体性の第一歩が座る、表情がしまるということなんですね。」(三好[1994:36])
あの手この手で起こしてみよう
「世の中には暇な人たちが暇な論議をやっています。『老人生活研究』っていう雑誌があるでしょ。あれがいまだにやっているのが主体性論争です。偉い先生が「主体性とは何か、自己決定権である」なんて言うんです。自己決定権。機能訓練教室にきませんかと誘う。わしゃ寝とるからいいと答える。そしたらそうですと言って、帰って来いというん<0037<ですから。[…]
だけどここで帰ってたら仕事にならないじゃないですか。いいですか。目の前で自殺しようとしている人だかいら、どうしますか、皆さん?とめるでしょう、絶対」(三好[1994:37-38])
寝たきりにしていい理由はない 40
常識を武器に、とにかく座らせてみる 45
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