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『シングルウーマン白書――彼女たちの居場所はどこ?』

Gordon, Tuula 1994 Single Women: On the Margins? =20011015 熊谷滋子訳,ミネルヴァ書房,シリーズ 女・あすに生きる16,276p.,2800+


■Gordon, Tuula 1994 Single Women: On the Margins?=20011015 熊谷滋子訳,『シングルウーマン白書――彼女たちの居場所はどこ?』,ミネルヴァ書房,シリーズ 女・あすに生きる16,276p.,2800+

■著者

ツーラ・ゴードン<Tuula Gordon>
タンペレ大学女性学部教授、社会学
主著:Democracy in One School?:Progressive Education and Restructuring,
London,New York and Philadelphia:The Falmer Press,1986.
Feminist,Mothers,London:Macmillan & New York:New York University
Press,1990.
Citizens and Others:gender,democracy and education,International
Studies in Sociology of Education,Vol.2,No.1pp.43-55,1992.など多数

■訳者

熊谷滋子<くまがい・しげこ>
静岡大学教員、社会言語学
論文:Advertisements and Woman's Place,Linguistics:In search of the Human
Mind,Kaitakusha,1999..
山一證券自主廃業をめぐる新聞投書にみるジェンダー」『人文論集』静岡大学人文学部、1999年。その他

■目次

1 「売れ残り」からシングルへ
2 個への道
3 「シングルウーマン」への道
4 公的領域とシングルウーマン
5 私的領域とシングルウーマン 
6 性ちシングルウーマン
7 世間体とシングルウーマン
8 自立とシングルウーマン
9 周縁性とシングルウーマン


1 「売れ残り」からシングルへ

 19世紀の女性の地位

 「19世紀の西洋民主主義国家において、女性は男性を介して国家と関わっており、市民権も選挙権もなく、そのうえ結婚後は財産を管理することもできなかった。19世紀末には50歳の未婚女性が15%にも達していた。未婚男性よりも未婚女性が数で上回っており、人口統計学上の不均衡の要因は、男性側にあり、死亡率や出稼ぎ、軍役や植民地での作業などに従事する人が多かったためである。「売れ残り」はもっぱら家庭内にとどまって、家事をこなし子守や老親の介護をしていた。上流、中流階級のシングル女性は、家庭の外では、芸術活動や貧しい人たちの救済などに励んでいた。そして19世紀末になると彼女らは職につくようになった。女性の地位が変化しつつあったのは、慈善事業に携わった「売れ残り」は社会保障制度の基盤を築き、非婚女性の地位を確立させた。社会福祉が充実していくにつれ、女性は公的領域で雇用されるようになり、私的領域から幾分開放されることとなった。また、「売れ残り」は、19世紀末から20世紀初頭にかけて女性を男性の付属物とみなす考え方に異議をとなえ、女性に対する教育の機会、雇用上の機会向上のための運動をおこしフェミニズムの基礎を築いた。(P1〜2)

 黒人女性

 アメリカにおいて、20世紀初頭より未婚女性は、発展しつつある産業の中心分野の労働市場に参入するようになっていった。しかしながら、年齢、仕事、地位のいかんにかかわらず、未婚女性は家族とのかかわりで見られていた。黒人女性の立場は、奴隷制と植民地によって決められていた。人種差別と性差別が抑圧を生み出したのである。白人の女らしさが理想化される一方で、黒人女性は男性の保護もないため、きつい肉体労働に従事することで、男らしい役割を引き受けざるをえなかった。黒人女性は性的な存在とされ、暴行も受けた。(P5)
 
 そのうち女性の生き方も多様になり、選択の幅や機会も増えてきた。しかし、それは常に明るいきざしがあったわけではなかった。フロイトや心理分析、性の改善運動が行なわれ、女性を依然として性的な存在とみなし続けていたせいで、女性運動が後退したこともあった。(P8)19世紀における女性の慈善事業は官僚的支配のもとにあった。社会福祉によるサービスは、家族や家庭での女性の役割を前提としてなされていた。(P13)シングルの女性について統計や研究をするとき多くは、シングル、既婚、離婚、寡婦という分類に基づいている。(P16)


2 個への道
 
 今や女性は政治的市民権は手に入れたものの、実質的には男性と平等の個人とは
なっていない。個人をめぐる社会構造によって、女性は他者と位置づけられ、一方、
男性は規準や標準を示す側にいる。(P21)
 
 未婚の割合が増えてきてはいるものの、ことはそう単純ではない。専門職の女性
は、結婚や出産を先延ばしにする傾向がある。シングル女性は自律していると言われ
てきているが、一方で実家にしばられ、その実家への義務という名のもとに個人の選
択の自由がないがしろにされている人もいる。労働者階級の白人女性、黒人女性、ま
た、きつい農作業に従事している女性はあまりにも過酷な労働に強いられていたため
に、自律しようと意識的に考える余地さえなかったにちがいない。しかし、彼女らは
普段の暮らしの中で、自律への道を築きあげていったのである。たとえそれが選択し
たものではなかったにせよ、あるいは生きているうちに自律することができなかった
としても。(P26)

 時代の移り変わり 

 教育の機会の獲得は、アメリカ、イギリス、フィンランドにおいて、18世紀におけ
る女性運動の最大目標であった。知識を持つことは、女性の自律に大いに力になるも
のと考えられていた。(P28)この運動は苦労なくして成し遂げられるものではな
かった。男性の特権を守り抜こうとする敵意に満ちた反発も激しく、女性を再生産
(出産)に押さえ込もうとする旧式の考え方も展開されていた。フェミニストは、女
性の権利獲得に向けて運動した。運動の成果には目を見張るものがあったし、また具
体的な行動によってそれまでの女性観に挑戦していったのである。多くのフェミニス
トはシングル女性だった。女性の労働力もますます必要とされうようになった。しか
しながら賃金労働に参加することは公的領域は男性、私的領域は女性という区別を侵
すことになるため、イデオロギーの上では反発があった。家庭という枠組みの外で雇
用の機会が増えてくるにつれ、女性は結婚や育児の内側であれ、外側であれ、生活設
計をたてやすくなっていったのである。社会福祉が生まれたことで、女性に仕事を提
供したり、一方においては、家庭内の役割から部分的に解放したりするようになって
いった。このように社会が発展してくると、新たな葛藤や矛盾が生じ、女性は可能性
とともに制約を感じてくるようにもなった。社会的な管理は、決して広くゆきわたる
ことも完璧に成功することもなかった。女性は常にそれまでの縛りをのりこえながら
生き抜いてきたのである。このように、普段の生活の中の行動の積み重ねを通して抵
抗し続けてきたのであった。(P29〜30)


3 「シングルウーマン」への道

 調査対象者

 35歳以上の様々な人種の様々な職業についている72名のシングルウーマンに調査を
行った。子どもを持っているのは23名である。シングルマザーをひとくくりに論じる
ことはできない。未婚者であったり、離婚者であったり、子どもの年齢も就学前から
成人に達している者まで多岐にわたっているからである。(P37〜38)
 
 1884年〜1918年に生まれた女性よりも1921年〜1955年生まれの女性のほうがシング
ルを肯定的にとらえているのは、シングルが以前に比べそれほど悪いイメージでない
ことや、シングルが肯定的なアイデンティティーとなりやすくなっているためであ
る。(P44)
 シングル女性のステレオタイプは、男ができないオールドミスか、男がいらない都
会のシングルかのいずれかである。(P45)

「自発的、一時型シングル」 若い結婚未経験者、再婚を先延ばししている離婚者、
結婚したいと思ってはいるが積極的に相手を捜そう      
              とはしていない結婚未経験者

「自発的、永続的シングル」 シングルを選んだ者、結婚未経験者でそのことに満足
している者、離婚して再婚は求めていない者

「非自発的、一時型シングル」 結婚生活に破綻をきたしたものの、再婚を望んでい
る者、結婚したいと思っている結婚未経験者

「非自発的、永続型シングル」 結婚したいと望みながら、この先シングルのままだ
ろうと考える離婚者、寡婦、結婚未経験者
(P46)
 
 なぜシングルなのか

 自分がシングルであるということを女性が、意識するにせよしないにせよ、将来の
方向に向けて具体的に歩き出し、30代初めにそのことについて深く考えはじめるとい
うのはよくあることである。多くが、シングルであることを、好ましい選択だと受け
入れている。依然、パートナーと一緒になりたいと望んでいる人もいるし、シングル
であることが不幸だと感じている人もいるが、そういう人は少数である。(P48〜
49)
 男性は自分より年下で、地位の低い女性と結婚することが多い。一方、女性は自分
より年上で、地位の高い男性と結婚する上昇婚になりがちである。30歳になっても結
婚しない女性は、結婚の可能性が薄れてくる。結婚する気はあるが、のばしのばしに
なっている女性は、その先シングルでいる可能性が高い。パートナーとの関係が持ち
にくいのは、男性が自立した女性を受け入れようとしているかどうかだけでなく、女
性側も自立のライフスタイルに高い評価を見いだすようになり、妥協したがらなく
なっているからである。また都会で暮らしている人は、田舎で暮らしている人より、
シングルになりやすい。学歴のある、専門職の女性は、他の集団よりもシングルでい
ることが多い。理由として、このタイプの女性はシングルのままで経済的に十分に生
活していけるからである。勉強にかける期間が長く、結婚を先延ばしにし、シングル
になったのである。キャリアを積んでいくことにエネルギーを注ぎ、その他の付き合
いをあまりしてこなかったのである。仕事もパートナーもなんていう余裕はなかった
のである。(P50〜51)
 
 黒人の場合

 黒人のアメリカ人やイギリス人で、シングル女性の割合が高いのは経済的な制約と
人口統計上の不均衡に原因があるとされてきた。男性よりも女性の方が人数が多いと
いうことである。経済的な要因では、黒人男性の多くが白人男性に比べ、家族を養っ
ていくことができないためとしている。経済的に黒人女性は別居したり離婚するはめ
になり、子供の扶養義務を1人で負うことになってしまうのである。(P52)
 
 非健常者の場合

一般に、身体上の、あるいは、精神上の問題をかかえている人は、健常者よりも、
シングルのままでいる可能性が高い。障害を持つ女性は、シングルの典型的なグルー
プである。障害の程度が強ければ強いほど、結婚していない。また、生き方について
も多様で、自立した生活をするには、多大なる制約がある。これは、家族や友人から
どれだけ支援が受けられるか、また、公的サービスがあるかどうかによる。(P5
5)
 
 以上のことからシングルであるということは、経済的、文化的、個人的体験などが
複雑に絡み合って生じたものであり、シングルになりやすい女性のタイプは特定する
ことはできない。(P67)


4 公的領域とシングルウーマン

 公的領域は男性の活動の場とされ、私的領域は女性の活動の場とされている。(P
69)シングル女性は、既婚女性に比べ、学歴があり、正社員としてあるいは、地位
の高い職、男性が主に占めている仕事についている。結婚しているか否かにかかわら
ず、幼児のいる女性は、仕事と家庭の両立で苦労している。だからといって子どもの
いないシングル女性が、子供のいない、または、子供が成人してしまった既婚女性と
比べて、有利な立場にいるとは必ずしも言えない。

 過去のシングル女性

 昔、シングル女性は公的領域に足場をもたない存在であった。公的、私的領域の境
界は、既婚者のそれよりも曖昧なものである。私的領域では既婚女性と同じ利益を享
受することもなかった。賃金労働を通して、公的領域に入っていく者が増えてくるに
つれ、シングル女性は19世紀の頃の女性よりも個人として自律を求めて戦うチャンス
を多く持つようになった。(P70〜71)
 
 仕事をする理由

 シングル女性が懸命に仕事をする理由は、様々である。仕事で成功をおさめた女性
は仕事上の満足度や、自己実現のレベルが高くなったと強調している。それに対し、
労働者階級出身や人種的少数の女性、その中でも特に子供のいる女性は経済的な要因
から好きでもない仕事について、懸命に働かなければならない。しかし全体の5分の1
しか仕事上のストレスを感じていない。これはたぶん、シングル女性ゆえに、時間的
にも余裕を持って仕事をすることができるからだろう。しかし、仕事に意義を認め、
熱心に長時間働くこと、また他の時間を削ってまで働くのは、シングル女性にとって
仕事とそれ以外のことをきちんと区別するのを至難の業にする。(P73〜75)そ
れでも大半の女性は自分の仕事が好きである。それは人とのつながりや表情豊かな、
創造的なものが感じられるし、知的、情緒的、政治的満足を与えてくれるためであ
る。
 
 親や学生、生徒などとの付き合いは、多くの女性にとって、大切なものである。子
供がほしいと思っても子供のいない女性にとって、子供とかかわれる仕事は重要であ
る。特に、保健医療に携わっている女性は、人の面倒を見ることがやりがいにつな
がっている。仕事を通してしか接するチャンスのない人との親密な関係をもてるから
である。フリーランサーや芸術家、職人はその仕事の性格上、1人でこなしていかな
ければならない。特に、仕事が忙しいとき、友人とつきあう余裕などほとんどない。
シングルの1人暮らしは、寂しいときもある。多くは、同じ職種の人と接し、仕事場
を共有したり、なんらかの組織に参加したりする。そして、仕事が暇なときは、付き
合いの方にエネルギーを注いでいるのである。(P84)

 経済的問題 

 経済上の大変さは、あまり触れられていない。給料が低いと不満をもらすが大半は
金銭的に苦労しているわけではない。あるものでやりくりできるようになったことを
くり返し強調している。(P86)シングル女性にとって、仕事は社会とかかわる、
新たな可能性をもたらすものでありながら、限界を感じさせるものであり、人生を生
き抜くためのものとして存在している。職場でも排除され、周縁に追いやられる可能
性があるのでシングル女性は積極的にいい関係を築き上げようとしている。シングル
女性は自立を目指して努力するのに好都合な条件をもっている。しかし、男性と比べ
ると女性全体としては賃金と昇進の遅れが自立するのに足かせの1つとなっている。
(P90)


5 私的領域とシングルウーマン

 多くのシングル女性は活動的であり、熱心に仕事をし、家にいる時間があまりない
ため1人になれるのは大歓迎なのである。1人になることがとても大切なので、1人の
時間をそれほどマイナスと思わない人もいる。シングル女性は、自分のやれる範囲で
やりくりできるよう学んでいかなければならない。逆に、自分の持っているもので生
きていける人はシングルになりやすいのである。(P100〜101)
 
 孤独

 多くの人はかつて孤独を味わったことがあると語っている。この感情はシングルに
関係あるものの、未婚者か既婚者で差がある。未婚者は1人暮らしをはじめた頃につ
らい思いをしていたが、孤独への対処法を身につけ、次第に1人暮らしを楽しめるよ
うになっていったという。そして、30歳前半にシングルが現実だと思うようになり、
どのように生きていくのか再度考えざるを得なくなるのである。そして大半は自発的
シングルになっている。離婚女性は新しいアイデンティティを築きあげなければなら
ず、孤独と戦いながら、自立をはかっていかなければならない。結婚せずに人生をう
まく渡っていけるような手本があまりないため、不安に陥るのである。(P102)
 
 シングル女性の交友関係

 1人暮らしをしているシングル女性が計画もたてずにどこかに行こうとすると面倒
なことにであうかもしれない。一緒にいるパートナーか子供のいる人はさしあたっ
て、一緒に行ってくれる人をみつけやすい。しかし、1人暮らしをしているシングル
女性は公的な場において安全に気をつけなければならないだけでなく、他の人とどう
付き合っていくかが無視できない問題となってくるからである。(P103〜10
4)シングル女性が付き合う人は一般的に親友や友人である。中産階級の女性は、親
戚よりも友人をあげることが多く、労働者階級の女性は友人よりも親戚をあげること
が多い。離婚女性、別居女性、子供のいる女性は未婚女性よりも親戚をあげる場合が
多い。(P108)またシングル女性の友人はシングル女性であることが多い。シン
グル女性の友人づきあいには多くの肯定的な側面がある。ライフスタイルや関心を共
有できることが牽引要因である。シングル女性は、他のシングル女性との友情を通し
て、はみ出し者から仲間になることができるのである。(P110〜111)
 
 社会福祉はシングルの娘にとって、親の介護の負担を減らすのに大切なものであ
る。正規雇用されたり、親と離れて生活することができるようになったため、多くは
親に親に手を差し伸べる立場にない。こうなると、親は老後の準備として自分自身の
貯えが頼りとなる。娘は重くのしかかる責任を回避しがちである。自分なりの生活を
確立するようになると、自分ができることとできないことを明確に線引きし、また、
期待されることに対して疑問をなげかけるようになってきている。しかし、シングル
女性の置かれた状況には昔と変わらないこともある。多くは親の面倒をみており、ま
たそうするものだと考えている。(P110)


 シングル女性は仕事や公的な活動を通して、公的領域に自分の居場所を見つけてい
る。私的領域では友人や親戚などとの付き合いに居場所を見つけている。シングル女
性が社会の一員とみなされるにはまだ不十分だが、よそ者として見られているかどう
かについては変化が見られる。19世紀におけるシングル女性は、倫理的な優位性とい
う発想からその存在を正当化し、公的/私的領域で援助活動を行なっていた。(P11
6)人から助けてもらうようになるには様々な困難が生じる。伝統的な女らしさの習
慣があるため、依然として女性の方が、自分のことより人のことを考えることがよし
とされているのである。女性は既存の異議を唱える場合でさえ、女らしさから自由に
なるのが難しいと感じている。これまでの女性の歩みを振り返り、援助はするが、援
助を求めるのは困難だと思っている人がもいる。シングル女性は、今日、人に対して
かつてに比べそれほど義務感はない。しかし、公的/私的領域における活動では人の
ことを第一に考えるむきがある。かくして、シングル女性にとって家は大切な個人的
避難所となるのである。
 シングル女性は自分がシングルであることをすんなりと受け入れているわけではな
い。人生のある時点、ある状況で自分がシングルであるという事実を思い知るのであ
る。シングル女性は内/外の居場所を確保しなければならないし、かつてそのために
学びの過程を経ていくのである。人との付き合いは、喜びの源であると同時に、その
学びの過程自体も財産となるのである。


6 性とシングルウーマン

 19世紀の頃は、女性は男性よりも道徳的に純粋であると考えられ、「売れ残り」は
性的な存在とみなされなかった。女性が性的な存在とみなされるようになるにつれ、
シングル女性はセクシュアリティとは縁のない人たちとみなされるようになった。独
身は異常なことであり、逸脱しているとみられた。(P119)ボーイフレンド、
ガールフレンドがいれば、親密さをもたらしてくれるだろうが、必ずしもそうとばか
りは言えない。そのかかわりかたは、様々である。シングル女性は様々な形で親密さ
を得ている。友達は親密さをもたらしてくれる重要な存在だが、親戚の方が求めやす
いと感じている。シングルマザーにとって、子供が親密な関係づくりを与えてくれる
存在である。シングル女性にとって、人生において友人との触れ合いは必須なもので
ある。親密さにおいても、家族との付き合いと同じくらい重要なのである。(P12
1)
 
 男ができないオールドミスというステレオタイプは調査したシングル女性にはあて
はまらない。大多数は、結婚やパートナーを求めない方を選んでいるのである。ごく
少数が恋人にふられたためとしている。素敵な男性とうまくいかなかったか、つきあ
えそうな男性に関心をもっていないためとしている。男性を求めていないシングル女
性をめぐる現代のステレオタイプも、全くあてはまるともいえない。男性や結婚に対
して批判的であったし、パートナーに対する注文も多いことは確かだが、多くは望ん
でいるような対等な関係をもてないことを嘆いている。(P128)

 シングルウーマンとパートナー 

 パートナーをもつことは、話し相手、頼れる相手、一緒に出掛ける相手、寝るとき
の相手、セックスの相手、喜びや悲しみを分かち合う相手、子供をつくる相手をもつ
ことを意味する。(P123)調査した女性の3分の1はボーイフレンドかガールフレ
ンドがいる。この関係が大切なものであり、このことで自身のシングル観に大きな影
響を受けている人もいる。彼女らは日常生活の面倒な部分には関わらず、パートナー
と面白いつきあいをしているのである。その関係にはあまり親密とはいえないものも
ある。その理由は、それほど時間的にも物理的にも一緒にいないからである。住む場
所も別々だったり、相手が既に結婚していたり、誰かと同居している人もいるからで
ある。パートナーに強くかかわりを求める人もいて、それが得られない場合にはひど
く落ち込む場合もある。このような女性は、将来は結婚願望のある、非自発的シング
ルか、一時型シングルである。表面的な関係で幸せになれる人は、親密につきあうと
自分の居場所に入り込まれ、妥協させられるのではないかと恐れているからである。
彼女らは、結婚に関心のない、安定型自発的シングルである。(P131)
 
 セクシュアリティをめぐる親密さ

 シングル女性はセクシュアリティを親密さや付き合いと結びつけて考えている。行
きずりの表面的な性的関係には関心をもっていない。多くが一時的でもそのような性
的関係を持ったことがない。(P132〜133)ボーイフレンド、ガールフレンド
のいない女性はセックスのないのを残念に思う人もいたが多くは親密さのあるセック
スのないのを残念に思っている。恋愛感情を持たずにセックスをする女性は、一般的
に悪いことと考えられているが一方でセックスをしない女性は異常だとみなされてい
る。女性に対する圧力はこのようにセックスするかしないのかという矛盾にみちたも
のとなっている。(P141)セクシュアリティは基本的な心理的欲求と肉体的欲求
と同様に人生において大切な側面の1つと考えられている。そのような考え方は女性
にとっては耐え難いものであり男性にとってはセックスの相手を保障してくれるもの
であるが、フェミニストからすれば女性が道徳的な非難から自由になり、自分なりの
性を求めることができると強調している。(P145)
 

7 世間体とシングルウーマン

 オールドミスのステレオタイプ シングル女性にはどこか欠陥があり、不完全で規
範や常識からずれている(P150)

 シングル女性がオールドミスと見られる要因は、文化的、社会的圧力やシングルの
周縁化にみられる否定的影響からのみ説明できないものがある。個々人にある情緒的
問題や欠点などがステレオタイプに合致する女性に非難が向けられている。逆にオー
ルドミスと分類しきれない場合なぜ結婚していないか質問されるのである。35歳以上
のシングル女性は、大抵、シングルであることに向き合い、その関係から自分の立場
を見つめ、可能なかぎり肯定的な人生を作れ上げていかなければならない。それゆ
え、自分のことを強い人間とみなしている。(P152)
 
 現代のシングル女性のステレオタイプ 都市部の学歴のある、若く、目標をしっか
りもった、活動的なキャリアウーマン(P153)
 
 シングルであることの悩みは

@幾人かは、社会との関わりが持てるように自分から働きかけていかなければならな

A1人でいること、孤独についてである。単身の場合子供がいることが骨の折れる
B1人暮らしによる高い生活費、1人で出掛けたくない人にとっての休日の過ごし方を
考えることが大変
Cカップルや家族との付き合い
Dシングル女性にきせられた社会的汚名ゆえ、生きにくい状況にある
E長く1人でいると変人になってしまうのではないかという不安
Fシングル女性はパートナーがいないので人間として不十分/不完全だと感じるよう
になるかもしれない
(P169)


母親は特に結婚した娘とシングルの娘の間に積極的に差異をつくっているように思わ
れる。たぶん、これは自分自身の社会的な立場が家族との関わりを介してつくられて
いるという、暗黙の了解に根ざしているのである。(P157)シングルに同情する
人は非自発的シングルには受け入れられやすい。それは気にかけてくれているという
サインに見えるからである。自発的シングルにとっては、カンカンに怒らせるもので
しかないが。(P159)友人よりも両親の方がシングルを問題だとみなしがちであり年配
の方が若者よりもシングル女性を哀れんでいる。(P162)シングルの大多数はシ
ングルを選んだのではなく、成り行きでそうなったり、人生の節目節目に決断してき
たことの積み重ねの結果としてそうなった。中には、結婚や家族をかなり理想化して
いて、シングルでなかったなら、もっと楽だったのにと思っている人もいる。(P1
70)

 
シングルマザー(ファーザー)

 単身の親の数は増加している。大半は未婚女性か離婚女性である。公的な保育所や
学校において、これらの子供たちは、不完全な壊れた家庭にいるとみなされることが
多い。(P175)子供をあきらめきれない女性もいる。1人を除いて皆親しいパー
トナーとの間に子供を持ちたいと思っている。

子供を持つ場合パートナーが必要だと考える理由

@経済上のことが子供を持つかどうか決めるのに重要な要因になっている
A子供を1人で育てるのは、シングルの友人を見ても大変な仕事だと考えている
Bパートナーは情緒的な支えになってくれると考えている
C社会的な理由。多くは子供に父親が必要だと考えている
(P178)
 
 シングルマザーが増加し、家族のあり方についての意識が寛容になってきたことか
ら、大都市では単親になっても女性はあまりひどい個人的批判を受けなくなってきて
いる。しかしながら、大抵の人は結婚してから子供をもつものだと感じている。シン
グルマザーといってもいろいろあり、彼女らが味わう喜びや苦労は金銭的なことや社
会における生活状況によっているものだが、基本的に子供の存在がシングルマザーの
人生を満たしているのである。子供のいる女性はあまり孤独にならず、親密さを教授
でき、また、子供が成人すればいざという時の支えとなってくれていると感じてい
る。(P180〜181)

離婚女性 

 離婚した女性の多くは結婚生活を最後までやりとげることができなかったため、失
敗したと感じている。特に子供のいる場合は、離婚によって不安になっている。人か
らどう思われるかなどについて。しかし、失敗したという思いはあっても離婚は女性
にとって安堵感をもたらしてくれる。それまでの状況が耐え難いものだったからであ
る。(P185)離婚女性は、離婚後人生を1から作り上げる困難さを味わってい
る。友人との関係を育んでこなかったため、離婚後、多くの未婚女性が苦労して作り
上げてきた大切な人との支えあいのネットワークを築き上げるのに時間を費やさねば
ならなかった。自分をもち、自分なりに物事を決めていけるよう学ばなければなら
なったのである。結婚は女性の経済的立場をよくするが離婚は悪くする。


8 自立とシングルウーマン

 シングル女性は1人で物事を処理し、自分の面倒をみていかなければならない。長
年作り上げてきた社会でのネットワークの中でも、多くは自分でこなしながら、友情
や親戚との付き合いがどれだけ大切なものであっても、最終的には自分のことは自分
でしてきたし、そうせざるをえなかった。(P192)19世紀の売れ残りは1人で
生活することはあまりなかった。人の家にやっかいになっていると、1人で生きてい
る今日の女性のような自立を育むことは難しかったことだろう。しかし、今日の女性
にとって自立は育むことができるものというだけにとどまらず、育まなければならな
いものである。そんな中、多くの女性が自立の限界を経験している。

自立の否定的側面 ・頑固さ・攻撃性・負担・困難・妄想・融通のきかなさ・孤独・
衝突等

肯定的な側面   ・自分のことは自分ですること・自分の立場をはっきりさせるこ
と・自分のライフスタイルを持つこと
         ・男に頼らないこと・完全であること・人間として生きること等


9 周縁性とシングルウーマン

 シングル男性はシングル女性より人数が多いが、あまり詳しく研究されていない。
歴史的に、シングル男性はシングル女性よりも問題視されてこなかったからである。

シングル女性に対する単語連想 自立 自由 強い等
シングル男性         自分勝手 不安定 酔っ払い 女たらし等
(P215〜216)

 以上のようにシングル男性よりも肯定的に見られている。しかし現実ではシングル
男性は自由を享受し、世間的にも容認され、経済的にも潤っており、パートナーを見
つけるにも有利な立場にいると考えられている。
 シングル女性は、家族主義社会の中で、いまだに周縁に追いやられ、多くの周縁化
を味わっている。そんなシングル女性が多いなか、少数だが、周縁としての経験もな
く、そのようなことを感じなくてもいいようなネットワークやサブカルチャーと関
わったため、周縁を気にしなくなった人もいる。その人達の共通点としては皆、オー
プンな性格で出会いの場があり、仕事も社会的な交流を中心に展開するものについて
いる。(P229)シングルであることは、貧困や孤立と結びついても、不幸なこと
ではない。女性が完全な市民権を手に入れるためには、性差や家族主義を前提としな
い社会保障によって、もっとも弱い立場の女性を守ることが必要となってくる。(P
237)

コメント(略)



しんぐるまざぁずふぉーらむ
http://www7.big.or.jp/~single-m/index.html

母子家庭共和国
http://www7.big.or.jp/~single-m/index.html

シングルマザーの育児日記
http://isweb31.infoseek.co.jp/diary/gorgo/

ししゃもシングルズ
http://www.geocities.co.jp/Milkyway/5741/


……以上。以下はHP制作者による……

UP: 20020810 REV:
家族  ◇2002年度講義関連身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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