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『サブジェクトからプロジェクトへ』

Flusser, Vilém. Vom Subjekt zum Projekt, Bollmann Verlag, 1994
=19960215 村上 淳一訳,『サブジェクトからプロジェクトへ』,東京大学出版局, 224p. \2940 ISBN-10: 4130100769 ISBN-13: 978-4130100762 [amazon] [kinokuniya] 


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■Flusser, Vilém. Vom Subjekt zum Projekt, Bollmann Verlag, 1994
=19960215 村上 淳一訳,『サブジェクトからプロジェクトへ』,東京大学出版局, 224p. \2940 ISBN-10: 4130100769 ISBN-13: 978-4130100762 [amazon] [kinokuniya] 

■東京大学出版局
http://www.utp.or.jp/bd/4-13-010076-9.html
■目次
以下《》内はルビ
序 投企《プロジェクト》について
1 自立的生活について
2 都市をデザインする
3 家をデザインする
4 家族をデザインする
5 身体《からだ》をデザインする
6 性をデザインする
7 子どもをデザインする
8 技術をデザインする
9 労働をデザインする
訳者あとがき

   
■引用
 ポスト人間主義的な、「ポストモダン」な、新しい人間学が、生まれようとしているのだ。われわれが自己啓蒙によって無のなかの無であることを知り、何かを結びつけるのではないさまざまの関係ネットワークの結び目でしかないことを知ったとき、われわれははじめて、この無の否定に取りかかることができるだろう。そのような「反人間学」は、一つの理論的・哲学的見方(反信仰)にとどまるものではなく、一個の実践なのだ。(p.14)

 写真術は、その後の発展を先取りする実践であった。今にしてようやく、写真術のなかに含まれていたことが判ったのである。それは、物の世界とその主体が押しとどめようもなく崩壊するとしても「ペシミスティック」になるには及ばない、という新しい姿勢であった。写真術が示した新しい実践は、次のようなものとして理解できる。すなわち、人間が長い時間をかけ、苦労して達成した文化的発展は、徐々に生活世界から離れてゆく過程、徐々に進行する疎外の過程であった。その第一歩は、生活世界からの脱却、つまり人間にかかわる物の文脈からの脱却であり、それによってわれわれは、物を扱う者になった。それは、道具を造るという実践を生んだのである。第二歩は、扱われる物の三次元性からの脱却であり、それによってわれわれは、観察者になるとともに、画像を描くという実践を生んだ。第三歩は、画像の模写力の二次元性からの脱却であって、われわれは記述者になるとともに、テクストをつくるという実践を生んだ。そして、第四歩がアルファベットの一次元性からの脱却であり、われわれは計算《カルキュレート》する者になるとともに、近代技術という実践をもたらしたのである。完全な抽象性ないしゼロ次元性をめざすこの第四歩を踏み出したのはルネッサンスであり、いまやそれが行くところまで行ったわけである。抽象性をめざしてもう一歩脱却することは、もはやできない。ゼロ次元をさらに遡ることは、できない相談だから。だから、われわれは回れ右をして、やはりゆっくりと、苦労しながら(生活世界の)具体性に立ち返る歩みを進めてゆくしかないのだ。それだからこそ、さまざまの点状の要素を計算的に構成し《コンピュート》、投企して、線や面や物体や身体を創ろうとする新たな実践が生まれているわけだ。(pp.18−19)



*作成者:篠木 涼
UP: 20080831
身体×世界:関連書籍 1990' BOOK
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