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『病気志願者――「死ぬほど」病気になりたがる人たち』

Feldman, M.; Ford, C. V. 1994 Patient or Pretender : Inside the Strange World of Factitious Disorders, New York, NY, John Wiley & sons.
=19980924 沢木 昇,原書房,335p.


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■Feldman, M.; Ford, C. V. 1994 Patient or Pretender: Inside the Strange World of Factitious Disorders,New York, NY, John Wiley & sons. =19980924 沢木昇 訳,『病気志願者――「死ぬほど」病気になりたがる人たち』,原書房,335p. ISBN-10:4562031158 \1800 [amazon][kinokuniya]

■内容
・(「BOOK」データベースより)
癌を装って頭髪をすべて抜いた女性、排せつ物を血管に注入する男性、重度の摂食障害の少女。彼らの心の奥にある本当の欲求とは? 虐偽性障害―この奇妙な「病気」は、普通の仮病の延長線上にあるものであり、すべての人に身近な病気なのである。

・(「MARC」データベースより)
"病気"という方法でしか自分を表現できない人たち。病気に憧れる彼らの心の奥にある本当の望みとは? ミュンヒハウゼン症候群や虚偽性障害など、奇妙な「病人」の世界をのぞき見る。

■目次
はじめに
第一章 「わたし癌なの」
第二章 「やさしさを求めて」
第三章 「自分の血を奪う吸血鬼」
第四章 転落―虚偽性障害に染まるプロセス
第五章 空想虚言症―途方もない嘘を演じる人々
第六章 発熱の演技
第七章 華々しき症状
第八章 眠ったまま死ねたら
第九章 ぬれぎぬ
第十章 かくれた動機
第十一章 狂気を装う人々
第十二章 虚偽性障害が児童虐待になるとき
第十三章 犠牲者たち
第十四章 法律と倫理――議論うずまくところ
第十五章 発見、対決、治療
訳者あとがき

■引用
世の中には仮病を使う人がいる。周りの人の注意をひくために仮病をつかう人たちがいる。<虚偽性障害>という病気の人たちである。p.3

虚偽性障害の患者たちは、実生活で他人から親切な気づかいをされた経験がほとんどない。それゆえ、病気のふりをして、周囲から親切にされたいと渇望しているのである。p.5

虚偽性障害という現象が医学の文献によく出てくるようになったのは、三〇年ほど前からのことである。そこでの説明を見てみると、虚偽性障害はおおむね、こう説明されている。
「<身体化(精神的な不安を身体的な徴候におきかえること)>と<疾患隠蔽(心身の健康状態についてわざと真実を隠すこと)の組み合わせである」
結局、虚偽性障害は身体的な症状や精神的な症状の捏造と考えられているのである。
また、身体的な症状を訴える患者は二つのグループに分けられる。その一つは、何らかの利益を求めて、意図的に病気をつくりだす人たちである。このグループの人たちはさらに二つの種類に分かれる。一方に実質的な利益を求めている人たちがおり、彼らは詐病に属する。他方には、「患者の役割を満喫したい」など、目に見えない利益を求める人たちがおり、虚偽性障害に属する。p.39

精神病のふりを演じる患者の中には、現に自分は「正気を失いつつあるらしい」という恐怖を直感じている人々もいる。ただし、彼らが本当に患っている病気は、演じている病気と必ずしも同じ種類だとは限らない。
とはいえ、患者が本当に患っている病気(鬱病など)と演じている病気とがあるていど重なっていることもある。そのため、本当の病気と嘘の病気を見分けるのは骨の折れる作業になる。p.209

われわれはこう考える。虚偽性障害の患者は、確かに嘘をついてはいるのだが、実際に病気(「実際に病気」に傍点:作成者)なのである。それは一種の心の病気であって、やはり救いの手を差しのべるのが当然だろう。p.288

被害者にとって、回復への道は、この現象のことをよく知ることから始まる。われわれがこれまでに話を聞いた被害者はみな一様に、知識を得るとそれだけで心が楽になるものだと語ってくれた。たいていの被害者が、いちばん回復に役に立ったできごととして、「この疾患にも名前があるのだと知ったこと」をあげているほどである。
この奇妙な心の病気のせいで自分が経験したことをみんなで語り合ってみたら、重荷を取り除かれたような気がしたと彼らはいう。こんなふうにだまされたのは自分ひとりではないということを知り、自分が相手にしていたのは名前のついた正真正銘の精神疾患だったのだということを知ってしまえば、もはや自分を愚か者のように感じたり、恥ずかしく思ったりする必要はなくなるからである。p.288-289

患者が自分の利益のために症状をおおげさに言ったからといって、詐病とは限らない。
たとえば、本当にPTSDの症状があるのに、この程度ではPTSDの診断を下してもらえないのではないかと恐れて、大げさな話をする人もいる。p.318

虚偽性障害に限らず、どのような病気の場合でも、もっとも良い対処の仕方は、病気自体を予防することである。それゆえ、医療の仕事に携わる人にも、一般の人にも、虚偽性障害にかんする正しい知識を広める必要がある。さらに、現代社会にはびこっている欲求不満や絶望感を何らかの方法で静めるように努力しなければならない。あるいは、誰かにやさしくしてほしいという欲求を何らかの方法で満たすように努力しなければならない。そうすれば、虚偽性障害の数を減らすことができるかもしれない。p.332

■書評・紹介

■言及
ニキリンコ 20021031 「所属変更あるいは汚名返上としての中途診断――人が自らラベルを求めるとき」石川准・倉本智明編『障害学の主張』明石書店


*作成:山口 真紀
UP:20090606 REV:
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