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『畸形のシンボリズム』

    寺山修司 19930200 『畸形のシンボリズム』白水社、147p. ISBN:4560042985 1835

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■寺山修司 19930200 『畸形のシンボリズム』白水社、147p. ISBN:4560042985 1835 [kinokuniya][amazon]


<内容紹介>「BOOK」データベースより
「足らざる部分」を意味化され、等身大人間のシステムによって社会の片隅に追いやられてきたフリークの、「表徴性」の認識に意義を唱え、聖俗空間の「混在 郷」へと誘う案内人としてフリークの役割を考える。著者最後の長編評論となった渾身の畸形論。

<著者紹介>巻末より
1935年12月10日、青森県弘前市生まれ。早稲田大学教育学部国文科中退。57年、ネフローゼのため入院中、第一作品集『われに五月を』を刊行。60 年、劇団四季において戯曲「血は立ったまま眠っている」を上演。67年、横尾忠則、東由多加、九条映子らとともに演劇実験室「天井桟敷」を旗揚げ、「青森 縣のせむし男」「大山デブ子の犯罪」「ノック」「奴婢訓」等を上演。83年5月4日、肝硬変と腹膜炎のため永眠。主な著書に『家出のすすめ』『書を捨て よ、町へ出よう』『寺山修司全歌集』『競馬で会おう』『迷路と死海』等。その他、詩歌句集、戯曲集、シナリオ集、評論集、競馬論集等多数。

第一章 一寸法師の宇宙誌
1.猟奇的想像力
2.見せしめ小屋の犯罪
3.陰獣たちの「台」
4.壜の中の双生児
5.記憶喪失された身体
6.船長ガリバーの法則
7.貨幣としての一寸法師
第二章 黒胡椒の犯罪史
1.にんげんの漬物
2.遺伝工学のみにくいアヒルの子
3.熱い胡椒湯で男根を洗って切落す
4.人造人間としての変自伝
第三章 シャム双生児の王国誌
1.不具者尊重の習俗
2.頭足人のラグタイム
3.シャム双生児の自己愛
第四章 大男たちの占星術
1.巨人の水死体を考える
2.「近世巨人伝」の中の大男群像
3.大山デブコが火事になる
解説 「畸形の記憶」池内紀

・寺山は江戸川乱歩の物語の一寸法師の犯罪と明智小五郎の対決の構造を、畸形が群雄割拠し、理解できないものが混在している場所に、理性が割って入ることで謎を解明しようとする対比に見た。そして、「畸形は、彼らの神話的な宇宙を生成する以前に、社会に組み込まれてしまい、その悲劇を歩んできたというわけであり、その神秘性は、剥ぎ取られてしまったのである」と述べる。p26

・私たちの社会に存在しているのは「等身大人間への幻想」である。
「等身大人間の現実は、同じ場所の中で、彼らのアイデンティティの問題を考察しようとするあまり、無縁なもの同士の唐突な隣接による新しい空間の現出を怖れ、「共通の場所」の中で、「欠落をもった人間」として彼らを愛しつつ排除してきたのである。つまり、普通の等身大人間は、彼らの「背足らざる部分」を意味化し、因果の罰という婦幼童蒙のための教訓材をつくりだした。彼らの手に入れる幸福は、畸形としての社会性の中には決して見出されることはなく、つねに同じ現実の中で、等身大に接近することによってのみ保証されてきたのである。」(寺山[1993:25])

・畸形の身体を持つ存在とは即ち、聖と俗の媒介者である。
「生産や交換が日常的に行われている俗な空間では、彼は「畸形」として差別され、あるいは「異物」として排除されることになる。」「俗な空間で排除されてきた畸形たちが祝祭的芸能空間で奪還しようと「国奮りあそび」の復讐戦をたくらんだとしても、そこで手に入るのはせいぜい形を変えた見世物小屋の一つ二つにすぎないだろう。問題はむしろ、「生産とか交換とかが日常的に行われている俗な空間」と「日常性から切り離された禁域、神話的体系に支配された聖なる空間」とを野合させ、混在させるための媒介として、一寸法師の役割を考えてみる、と言うことなのである」。畸形の「身体的特色は決して「俗な空間」の日常性を代行しない、ということが大きな魅力」なのであるから。(寺山[1993:44])

・畸形の身体は社会の「意味」を揺るがせる。
「祝祭的聖空間の特権性を切り捨てて、まぎらわしい日常の現実の中に立ち戻ってきた一寸法師の役割は、とある夕暮に、一切の事物から俗空間の名辞を剥ぎとり、意味を無化する、ということである。彼は「代理人」としてではなく、<混在郷>への媒介を果す案内人として、町のマンホールの蓋をあけて、地球の空洞をかいま見せたり、人々を「意味という名の電車」から下車させたりする。それは、身体の「畸形」性を疑うためではなく、ニュートラルな身体などというものが、俗空間に住む人々のイメージの影でしかないことを報わせるためである。」(寺山[1993:48])


UP:20070714 REV:
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