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『バートルビー――偶然性について』

Agamben, Giorgio 〔アガンベン,ジョルジョ〕1993 Battleby o della contingenza
=20050715 高桑 和巳 訳,月曜社,205p.


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Agamben, Giorgio 〔アガンベン,ジョルジョ〕1993 Battleby o della contingenza
=20050715 高桑 和巳 訳,『バートルビー――偶然性について』月曜社,205p. ISBN-10:4901477188  \2400 [amazon][kinokuniya] ※

■内容
「book」データーベースより 「する」ことも「しない」こともできる潜勢力とは何か。西洋哲学史におけるその概念的系譜に分け入り、メルヴィルの小説「バートルビー」(1853年)に忽然と現れた奇妙な主人公を、潜勢力によるあらゆる可能性の「全的回復者」として読み解く。小説の新訳を附す。
■目次

バートルビー 偶然性について ジョルジョ・アガンベン
バートルビー         ハーマン・メルビル
バートルビーの謎       高桑 和巳
訳者あとがき

■引用

「潜勢力という状態にある知性とは、何かが了解されるにあたっての志向のことに他ならず、それは純粋な認識可能性、純粋な受容可能性のことに他ならない。それは認識される対象のほうではない。」(p31「バートルビー 偶然性について」)

「書くことをやめた筆生である彼は、あらゆる創造が生じるもととなる無をかたどる極端な形象であり…彼は今や自分自身の白紙に他ならない。従って、可能性の深淵のなかに彼がこれほど執拗にとどまり、そこから抜け出そうという意図をいささかも持っていないように見えるのも驚くにはあたらない。われわれの倫理の伝統は、潜勢力の問題を、しばしば意志や必然性といった用語に還元することで避けて通ってきた。われわれの伝統的な倫理における支配的な主題は、人ができることではなく、人が欲すること、人がしなければならないことである。」(p38「バートルビー 偶然性について」)

「ライプニッツは存在がもともともっている潜勢力を、ある原則の形で表現したことがある。その原則は通例、「充足理由律」と定義されている。それは次のように言い表される。「物事にはすべてそれが存在しないよりむしろ存在する理由がある。」」(p49)

「バールトビーがわが家とする禁欲的な怠け者の国には、あらゆる理から完全に解放された「よりむしろ」だけがある。」(p51「バートルビー 偶然性について」)

「彼(バールトビー)の事務机を孤立させている緑の仕切りは、ある実験室の外周を仕切っている。それは、…潜勢力が充足理由律から身を引き離して存在からも非存在からも自らを買いオ奉仕、潜勢力の固有の存在論を創造する、そのような実験を潜勢力が準備する実験室なのである。」(p53「バートルビー 偶然性について」)

「科学実験では仮説は単に真偽に関わるものだが、詩や思考における実験は何が真となるかならないかだけが問題となるのではない。それは、存在自体をその存在の真偽の手前ないし向こう側で問いに伏すものだ。それは真理のない実験である。というのは、そこにおいて問題になるのは当の真理だからだ。」(p55「バートルビー 偶然性について」)

「潜勢力とは、存在することも存在しないこともできるということである限り、定義上、真理の諸条件をまぬがれ、「あらゆる原則のなかで最も強力な原則」である矛盾律の作用をまぬがれる。存在することができるとともに、存在しないことができる存在は第一哲学において偶然的なものと呼ばれる。」(p58「バートルビー 偶然性について」)

「「真となるだろう、さもなければ真とならないだろう」というトートロジーは、一方の可能性が、また他方の可能性が現実のものとなろうがなるまいが、全体としては必然的に真である。バートルビーの実験はまさにこの真理の場に関わるものであり、この実験の目指すのはもっぱら特定の潜勢力自体が真であるかを示すことである。…トートロジーが必然的に真であるということが、過去に遡って作用する。しかしそれは、それによって過去を必然的なものにするためではなく、存在しないことができるという潜勢力へと過去を回復するためである。」(p74「バートルビー 偶然性について」)

「回想は、起こったことを完成しなかったものにし、存在しなかったことを完成したものにし、それによって過去に可能性を回復する。回想は起こったものでも、起こらなかったものでもない。回想はひとつの潜勢化であり、物事がふたたび可能的なものになることである。」(p75「バートルビー 偶然性について」)


*作成:近藤 宏
UP:080828 REV: 080831
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