『老いと「生い」――隔離と再生』
中村 桂子・宮田 登 他 19921015 藤原書店,叢書〈産む・育てる・教える――匿名の教育史〉3,352p.
◆中村 桂子・宮田 登 他 19921015 『老いと「生い」――隔離と再生』,藤原書店,叢書〈産む・育てる・教える――匿名の教育史〉3,352p. ISBN10: 4938661586 ISBN-13: 978-4938661588 3600 [amazon]/[kinokuniya] a06
■内容(藤原書店HPより)
日本が近代化の過程の中で作り上げてきた諸社会システムを比較社会史的に検証・考察し、われわれが、自立のうえでどのような課題に直面しているかを探る。世紀末を迎え、解体と転生を余儀なくされた〈産み・育て・教える〉システムからの出口と、新しいシステムへの入口を企図した画期的なシリーズ。
■目次
座談会 「老人」の誕生と「老い」の再生 7
――中村 桂子 宮田 登 波多野 誼余夫 中内 敏夫(司会)
「おいる」とはどのようなことだったのか――伝統社会における〈老い〉 8
〈老人〉概念はいつ生まれたか――近代社会と〈老い〉の隔離 16
老人・子ども概念と現代諸科学のパラダイム 26
〈老い〉の再生のために 32
I 「老い」と「生い」の社会史 41
六・三制の誕生――「生い」と「教育」の社会史 [中内 敏夫] 43
教科書に見る「老人」の社会史 [中野 新之助] 95
猿学漫才・老寿編――比較について [水原 洋城] 127
●コラム
おとぎ話の中の老人――笠地蔵考 [安溪 真一] 144
老人のいる漫画 [石子 順] 147
II 老人と子どもの比較社会史 151
老年期の誕生――十九世紀前期農村の「楽隠居」を手がかりに [太田 素子] 153
ルネサンス期フィレンツェにおける老人と子ども [前之園 幸一郎] 201
近代フランスにおける〈老年期〉の光と影――「老い」へのまなざしと〈老人〉をとりまく人々の絆をめぐって [小林 亜子] 215
帝政期ロシアの「老い」 [橋本 伸也] 255
●コラム
「老い」の新しい顔 [桜井 里ニ] 270
III 「老い」の再生 273
児童心理学の誕生と〈老人〉 [小嶋 秀夫] 275
世代継承としての介護 [野本 三吉] 305
男の老いと女の老い [ひろた まさき] 323
●コラム
高まる定年制の普及率 [奥山 正司] 343
■執筆者紹介 執筆順/生年生地・所属・専攻・著書(本書より)
中村 桂子(なかむら・けいこ)
1963年東京都生れ。早稲田大学人間科学部。生命誌研究館設立準備室。生命誌。『生命のストラテジー』(共著、岩波書店)、『生命誌の扉をひらく』(哲学書房)、『生命科学から生命誌へ』(小学館等)。
宮田 登(みやた・のぼる)
1936年横浜市生れ。筑波大学歴史・人類学系。民俗学。『ミロク信仰の研究』(未来社)、『日和見』(平凡社)等。
波多野 誼余夫(はたの・ぎよお)
1935年東京都生れ。獨協大学教養部。発達心理学、認知科学。『人はいかに学ぶか』(共著、中央新書)『生涯発達の心理学』(共著、岩波新書)『認知科学ハンドブック』(共編、共立出版)等。
中内 敏夫(なかうち・としお)
1930年高知県生れ。一橋大学社会学部。教育史。主著『生活綴方成立史研究』(明治図書)、『教育学第一歩』(岩波書店)、『新しい教育史』(新評論)等。
中野 新之祐(なかの・しんのすけ)
1947年京都府生れ。昭和女子大学短期大学部初等教育学科。日本教育史。『教育の世紀社の総合的研究』(共著、一光社)、『講座 日本教育史2』(共著、第一法規)等。
水原 洋城(みずはら・ひろき)
1931年兵庫県生れ。京都大学大学院博士課程修了。動物生態学。『日本ザル行動論ノート』(どうぶつ社)、『サル学再考』(群羊社)、『猿学漫才』(光文社)等。
安溪 真一(あんけい・しんいち)
1946年京都市生れ。分析心理クリニック主宰。精神科医師。『日本的父性の発見』(共著、有斐閣)、『寂しい女』(共著、創元社)等。
石子 順(いしこ・じゅん)
1935年京都市生れ。日本社会事業大学。児童文化論。『日本漫画史』(社会思想社)、『漫画詩人・手塚治虫』(新日本出版社)、『漫画のある教室』(あゆみ出版)、『戦後漫画の主人公たち』(アース出版局)他。
太田 素子(おおた・もとこ)
1948年東京都生れ。群山女子大学。教育学・教育史。『保育の思想』(共著、労働報旬社)、『家族の社会史』(共著、岩波書店)等。
前之園 幸一郎(まえのその・こういちろう)
1936年鹿児島生れ。青山学院女子短期大学。教育学・西洋教育史。『子どもたちの歴史』(永田書房)、『ピノッキオの人間学』(青山学院女子短期大学)、『ルネサンスの教育思想(上)』(共著、東洋館出版社)等。
小林 亜子(こばやし・あこ)
1960年大阪府生れ。愛知教育大学。教育学・教育史。『規範としての文化』(共著、平凡社)。
橋本 伸也(はしもと・のぶや)
1959年京都府生れ。京都府立大学女子短期大学部。ロシア教育史・教育思想史。『国際比較・近大中等教育の構造と機能』(共著、名古屋大学出版会)、『人間科学としての教育学』(共著、勁草書房)等。
桜井 里二(さくらい・さとじ)
1938年静岡県生れ。中央大学法学部。特別養護老人ホーム施設長。『ヨコハマY2共和国の素晴らしき仲間たち』(同文書院)等。
小嶋 秀夫(こじま・ひでお)
1937年京都市生れ。名古屋大学教育学部。発達心理学・家族関係研究。『家庭と教育』(第一法規)、『子育ての伝統を訪ねて』(新曜社)、『児童心理学への招待』(サイエンス社)、『乳幼児の社会的世界』(編著、有斐閣)、『発達と社会・文化・歴史』(編著、金子書房)等。
野本 三吉(のもと・さんきち)
1941年東京都生れ。横浜市立大学文理学部。社会福祉論。『風になれ!子どもたち』(新宿書房)等。
ひろた まさき(広田昌希)
1934年神戸市生れ。大阪大学文学部日本学科。日本思想史、『福澤諭吉研究』(東京大学出版会)、『文明開化と民衆意識』(青木書店)、『差別の諸相』(岩波書店)他。
奥山 正司(おくやま・しょうじ)
1947年山形県生れ。東京都老人総合研究所。老年社会学。『老いを生きる』(1巻、2巻共編著、思索社)、「農村における高齢化と農家高齢者の生活」、『転換期の家と農業経営(農村社会研究26)』(農山漁村文化協会)等。
■引用
・編集方針
「この巻は、おう(老う・生う)ことの意味とその現代的な組織形態である高齢化・能力主義社会の病理と希望を探る。
本叢書全体のテーマである〈生む・育てる・教える〉問題系の探求に欠かすことのできない系のひとつとして、人の〈おい〉、とりわけその現代社会における組織形態を問題にする。
〈おい〉は、時代と民族、性と年齡をこえた万人のものである。市民革命・産業革命・人口革命の三革命は、この〈おい〉を、今日私たちがそのようにあるべきものとして観念している。〈老人〉〈成人〉〈子ども〉それぞれの社会像に組織した。そしてそのうえに高齢化社会と能力主義社会をつくりあげた。人びとはいまその恐怖を語る。
とすれば、あるいはそうありえたかもしれない〈おい〉の新しい形態を、どのようにして創りだすことができるか。そのとき、高齢化社会と能力主義社会は、どのように姿を変えるか。この巻は、そうした問題を考察する。」[中川・宮田 他 1992:6]
■言及