I
島の病院/たそがれ/信濃川の河口にて/龍安寺にて/ドイツの同世代の医師/N氏の手紙/過ぎた桜の花/ある応接間にて/ピーターの法則と教育の蟻地獄/日本人の宗教/日本の医学教育/桜は何の象徴か/人間であることの条件 英国の場合/ささやかな中国文化体験/「故老」になった気持ち/戦後に勇気づけられたこと/ロシア人/待つ文化、待たせる文化/花と時刻表/国際化と日の丸/一夜漬けのインドネシア語/荒川修作との一夜/淡路島について/顔写真のこと/花と微笑
II
神戸の光と影/あるドイツ人老教授の思い出/神戸の額縁/名谷に住む/住む場所の力/ある青年医師の英知/ワープロ考/神戸の額縁の中味/野口英世とプレセットさん/悲しい親たち/暴力に思う/ギリシャ詩に狂う/神戸の水/ある大叔父の晩年
III
私の仕事始め ウイルス学の徒弟時代/精神医学と階級制について/治療のジンクスなど 精神科医のダグアウト 1/私の入院 精神科医のダグアウト 2/神戸の精神医療の初体験 精神科医のダグアウト 3/知命の年に 精神科医のダグアウト 4/ジンクスとサイクルと世に棲む仕方と 精神科医のダグアウト 5/意地の場について/治療にみる意地/精神科医からみた子どもの問題/見えない病気の見えない苦労/精神科医としての神谷美恵子さんについて/井村恒郎先生/日本語を書く/一つの日本語観 連歌論の序章として
あとがき
■引用
「精神医学と階級性について History has many cunning corridors.」
最近、精神医学史の研究が盛んで 過去の新しい事実を意欲的に発掘する試みがなされているのはよいことである。
しかし、私は、素朴な一つの事実を指摘しておきたい。それは、前科学的な医療がつねに、そして科学的医療も大きく、階級あるいは階層というものによって左右されてきたことである。このことがいくぶん軽く見られているのではないか。
(p187)