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『片づかない!見つからない!間に合わない!』

Weiss, Lynn 1992 Attention Deficit Disorder in Adults,Taylor Publishing,
=20010228 ニキリンコ,WAVE出版,398p.


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■Weiss, Lynn 1992 Attention Deficit Disorder in Adults,Taylor Publishing=20010228 ニキ リンコ訳,『片づかない!見つからない!間に合わない!』,WAVE出版,398p. ISBN-10:4872900944 1500 [amazon][kinokuniya] ※ adhd. a07.
 *リン・ワイス

■著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

ワイス,リン
心理療法士でもあり、ADDの息子をもつ母親でもあり、自身もADD。著作、講演などを通じてADDの啓蒙に力を入れている。著書に『ADD in Adults Workbook』、『ADD on the Job』などがあり、いずれもベストセラーになっている。テキサス州中部在住。

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(Amazon.co.jp)
身の回りが片づかない。約束の時間に遅れる。忘れ物がなくならない。それがこうじてかんしゃくを起こしたり、仕事をやりとおせなくなる。これがADD(=注意欠陥障害)の顕著な症状。本書は、心理療法士である著者(ADDの息子を持ち、自身もADDである)による、ADD患者とその家族のための啓蒙書かつ対処マニュアル。原書『Attention Deficit Disorder in Adults』は全米ベストセラーとなった。
ADD症状は必ず子ども時代から見られるという。しかし、自分がADDとは知らずに、周囲との違和を感じながら成人してしまう例も多い。ADDは病気ではないが、適切な治療を受け入れられなかったがゆえに、犯罪を誘引することもあるようだ。まず症状に気づき、それを受け入れることが重要となる。完治することはないが、ADDであることを、自分の人生設計を立てる上での1つの情報としてとらえればよい、という。
本書はADD患者の報告書に始まり、詳しい症例の説明、社会の受け止め方とそれが患者に及ぼす影響、ADDへの対処法などを説明。さらに、投薬の是非、職場にADDの人がいた場合の接し方などが具体的に語られる。資料として、実際の療法メニューや詳しい診断基準、グループ療法の概要のほか、薬物療法や医者選びについての専門家へのインタビューも参考になる。全米のADDを支援する組織や日本の自助グループのURLも紹介されており、最新情報をフォローする助けになる。(松本肇子)

(「BOOK」データベースより)
本書では、著者が出会ってきた数百人のADD成人たちが実際に試してみて、うまく行ったテクニックやコツを紹介している。本書を通して、注意欠陥障害の“雰囲気”をつかんでほしい。ADDとはどんなものなのか、はたからはどう見えるのか、本人たちはどんな思いで生きているのか、そして、ADDの人といっしょに暮らすのはどんな感じがするものなのか、それを知ってほしい。

(出版社 WAVE出版編集部 小田 明美)
女性だけじゃない! 男女両方だったのか? 「片づけられない女たち」(サリ・ソルデン著/ニキリンコ訳・WAVE出版刊)は女性たちの反響がすごかった。もともと片づけられないという障害は男女両方にあらわれるとのことであるが、そのケースを大変わかりやすく紹介してある。恋人や家族、そして学校や会社、管理する側も不可解だった人たちを温かく見守るお手伝いができる内容で、医療関係者、カウンセラーの方々にも読んでいただきたい一冊です。
著者はアメリカのテレビなどでADDについて出演したり、難しいと考えられたこの疾患を自らもそうだったという視点から、そして長年のカウンセラー経験を生かして、伝道者として活躍しているそうです。本書には、ADDのWEBサイトやアメリカの自助グループ、日本のグループなども紹介してある役に立つ一冊です。

■目次

はじめに
第一章 片づけられない男と女の人生
第二章 知らないと苦労する
第三章 大人になってもしかられるのはなぜ?
第四章 失敗、不安、自信喪失という悪循環
第五章 片づけられない家族と暮らすとき
第六章 治療の妨げになるもの
第七章 希望の道はここにある
第八章 自分を育て直す方法
第九章 新生活の技術
第十章 家族・友人のみなさんへ
第十一章 愛する人がADDだったとしたら
第十二章 職場にADDの人がいたら
終わりに
Q&A
【資料】

■引用

 「今になってみればわかる。若いころの私は、いろいろと精神的な不調を経験したものだが、あれはみな、ADDを隠そうと頑張った結果だった。ところがのちに、精神の健康を取り戻してしまうと、ADDはどんどん隠し切れなくなってきたのである。さらに私は、自分の感性も、これまで身につけてきたスキルも、やはりADDのおかげだったんだと気がついた。だから今の私は、ADDであることを嬉しく思っている。」p.8

 「[原因は:引用者]まだはっきりしていない。これまでの研究からわかっているのは、原因はひとつではないし、単純なものではないらしい、ということだ。複数の遺伝的要因と、さまざまな環境要因――たとえば重金属(特に鉛)中毒など――との相互作用によるものではないかといわれている」p.46  「私自身は、ADDを異常のひとつとは考えていない。また、ADDが直接、反抗・挑戦的性格などの行動上の問題や、鬱のような情緒の問題の原因になるのだとは思わない。また、そのような問題がADDに必ずつき物だとも思わない。そうではなく、行動や情緒の問題は、ADDの人間が非ADD文化の中で生活することから、二次的に派生するものだというのが私の意見だ。」(Weiss[1992=2001:47])

 「ADDでありながら、そのことを知らずに生きるのは、ひどいストレスの連続だ。そのため、未診断の人々は、嗜癖におちいったり、過食、浪費、働きすぎなどに走ったりすることになりやすい。これでは心身の健康を損なうことになる。薬物やアルコール濫用の治療がうまくいき、回復すると、元・中毒患者たちの、これまで隠れていたADD的設計がはっきりしてくる。また、元来衝動的な傾向のある人が、子どものときに、それなりのしつけや教育をされなかったりすると、単なる行動の問題だと誤解されてしまい、根本的な原因は見逃されてしまうことが多い。これでは、熱のある人を「発熱」と診断するのと変わらない。そもそも何が原因で熱が出たのかを調べずに、熱を下げようとするようなものだ」(Weiss[1992=2001:50])

 「「ぐうたら」「気まぐれ」「無責任」「大げさ」「ぶきっちょ」「扱いにくい」「情緒不安定」「むら気」。どれも、未診断のADDの人をさすのによく使われる言葉だ。しかし、このような性質が、単なる神経化学的な問題のあらわれだとわかってもらえることはめったにない、それでなくても、脳内物質のぐあいのおかげで、実績もあげられず、潜在能力も発揮できずにいるというのに、たいていは、本人の態度が悪いのだとか、道徳的に劣っているのだなどとみられてしまうことになる。」(Weiss[1992=2001:55])

 「ADDというのは、脳の化学的な基本設計様式の一種なのだから、皮膚の色と同じで、どんな障害・状態とも両立しうる。(…)症状を見分けるのは、たしかに複雑な作業だが、大切なのは、一人の人間の行動や性質を、何でもたったひとつの名前だけで説明しようとしないことだろう」p.100-101

 「ADDの人にも、希望の道はある。ただし、これだけは覚えておいてほしい。ADDは「完治する」ということはない。それに、完全になくしてしまいたいなどとは、みなさんだってきっと思わないだろう。ADDというのは、脳の基本的な設計様式の一種なのであって、どこも「悪い」わけではないのだから。みなさんにできるのは、根治させることではなく、うまく付き合っていくことである。」(Weiss[1992=2001:116])

 「「障害」だということは、本人のせいではないということです。気が散ったり、忘れたりするのは、やる気がないからでもなく、わがままだからでもなく、症状なのです。でも、だからといって、対策をとる責任がなくなるわけではありません。気が散ってもまた仕事に戻れるように、忘れても思い出せるように、工夫をするのは本人の責任です。「これは障害なんだ」という理解は、責任逃れではなく、上手に責任を果たすために大切な情報なのです。「わがままなんだ」と誤解していては、的外れな対策に力を注ぎ、むだに苦しむことになってしまいます。診断は、的を得た対策を見つけるための鍵になります。道具を使う、人に手助けを頼む、苦手な分野は誰かと役割を交替して、その分、得意な分野でよぶんに活躍する――ADDの人に限らず、だれもがそうすることができたら、どれほどむだな苦しみが減り、生産性も上がることでしょう」(Weiss[1992=2001:396])

■書評・紹介・言及

◆立岩 真也 2004/04/25 「ニキリンコの訳した本たち・1」(医療と社会ブックガイド・37)
 『看護教育』45-04:(医学書院)
◆立岩 真也 2004/06/25 「ニキリンコの訳した本たち・2」(医療と社会ブックガイド・39)
 『看護教育』45-06:(医学書院)

◆立岩 真也 2008- 「身体の現代」,『みすず』2008-7(562)より連載 資料
◆立岩 真也 20140825 『自閉症連続体の時代』,みすず書房,352p. ISBN-10: 4622078457 ISBN-13: 978-4622078456 3700+ [amazon][kinokuniya] ※


*作成:山口 真紀
UP:20080710 REV:
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