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『愛と正義の構造――倫理の人間的基盤』
Shumaker, Millard 1992
Sharing without Reckoning
,Wilfrid Laurier University Press.
=20010430 加藤 尚武・松川 俊夫 訳,晃洋書房,196p.
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last update: 20191117
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■Shumaker, Millard 1992
Sharing without Reckoning
,Wilfrid Laurier University Press. =20010430
加藤 尚武
・松川 俊夫 訳 『愛と正義の構造――倫理の人間的基盤』,晃洋書房,196p ISBN-10: 4771012393 ISBN-13: 978-4771012394 2500+
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※ p
■内容
内容紹介:amazonより
「BOOK」データベースより
完全義務と不完全義務をめぐる初めての一書。倫理学研究者必読の基本文献。
「MARC」データベースより
倫理学の最も基本的な問題でありながら、これまで系統的な書物が一度も書かれたことのなかった完全義務と不完全義務との関係について考察した初めての書。
■目次
凡例
序言と謝辞
第一章 ひっくり返ったおもちゃ箱の探索
サミュエル・ジョンソンの伝統的な解釈
一 おもちゃ箱をひっくり返した状態
歴史的な混乱状況
リスト項目の多様性
積極=不完全、消極=完全という理解
完全にいたらない理由は多様
三種の不完全責務
古代人の正しさ
一般化された互酬性
ニ 未完了の(incho ate)権利・義務
賢者の完全性
賢者たらんとするもの
キケローがラテン語に訳す
弱く誤りやすい人々の義務
年齢、発育、能力、身分に応じた義務
ストア派の影響
キケロー「義務について」
キケローの影響
アムブロシウスの勧告と命令
ストア派からスコラ派へ
中間義務の現代版
ピアジェとコールバーグ
イエスとアウグスティヌス
ラインホルド・ニーバー
三 切り詰められた権利・義務
初期ローマ私法の不完全さ
近代における法の完全化
不完全信託などの用法
施行上可能な規則は規則ではない
制裁の切り詰め
効果的な制裁を欠くので不完全
不明確なので不完全
妻を愛する夫の義務
シートベルト着用の強制
法による自発性の解消
強制できない道徳的要求
四 不確定な権利・義務
「〜するな」と「〜せよ」
義務の決定不全
病気の間お世話します
スミスによる文法のたとえ
慈善は不確定
自由な選択に任されている
右手で支払うことも左手で支払うことも
自由裁量範囲の大きい義務が存在する
アリストテレスの非厳密主義
消極的な規則も不確定
いつか遊園地に連れて行ってやろう
第二章 お返しの奉仕
社会科学者による調査
ネブラスカの田舎の習慣
フランス・アルプスの村での対人関係
独立と共同と互酬性
お返しの奉仕
奉仕の応酬は自発的
贈与論
さまざまな吊称
与える者と受け取る者との間の均衡
共同体の中に隠れている均衡
お返しの延期
一 不確定な義務としての一般化された互酬性
親切な行為に親切な行為でお返し
均衡を採る複雑さ
応酬の連続によるバランス
決定手続きの不在
奉仕と奉仕は共約不可能(incommensurable)
巴型のバランス
三美神
袖振り合うも
正確に均衡を取ろうとしない互酬性
ニ 切り詰められた義務としての一般的互酬性
贈り物交換は権威の介入から自由
立証できない
一般化された互酬性は本質的に不確定
審理できない
制裁できない
請求されない負債
社会の善き秩序のために不可欠
ギフガフはよき友を作る
法的なものと道徳的なもの
三 未完了の(inchoate)義務としての一般化された互酬性
不完全な社会と社会の補償となる慈悲
利己主義的な遺伝子
互酬的利他主義の必然性
互酬的利他主義はまだ優勢
犠牲的愛があぶない
お返しを期待する利他主義者
自己犠牲的利他主義
誰があなたに善行をしているのか
自己犠牲の必要
互酬的利他主義から純粋な利他主義に
一般化された互酬性に含まれる可能性
低次の道徳と高次の道徳の間を取り結ぶもの
互酬性は責務
賄賂をとる人の誠実さ?
互酬関係の悪用
四 契約(contract)と黙約(covenant)
愛の不在?
均衡が取れている互酬性と一般化された互酬性
異質の人間関係の共存
現代都市の人間関係
竹馬の友
取引づくめの人間関係
黙約と契約
契約自由、盟約結合
歴史と存在
黙約と贈与
医療倫理
恩恵と服従
契約化
契約化の弊害
最小主義
盟約に基づく医療倫理
黙約と契約の共存
愛と正義
第三章 カントの場合
カントの英語圏での取り扱い
義務のみのためになされた行為
アイゼンバーグのカント解釈
ネルのカント解釈
義務ではないのに義務よりも高い価値のある行為
義務だと思って義務を超える行為
一 広い責務と狭い責務
強制できない義務
カントの転機
自由裁量範囲がある義務
自由裁量範囲の本性
厳格主義的解釈
幻想的な徳
ニ 責務的目的を追求する
自由裁量範囲が生じる理由
正義は文法、他の美徳は文体
努力目標・手段は未定
手段と目的
才能と天分
キケローに負うもの
道徳的完全性の追求は不完全
三 形式的考察と実質的考察
傾向性とはなにか
完全性のための譲歩
自殺しない義務
人の好意を決して受けるな
見返り無しで分かち合う精神の反対物
下層階級の女性たち
四 カントは超義務論者(Supererogatorian)か
「厳密な」責務と「広い《責務
義務のためになされた行為
完全であろうとする義務
三つの変容の全て
人間の性格の事実
結論
第四章 平均道徳(mean morality)はごめんだ
十九世紀という転換点
正義という徳の特質
慈善を受ける権利は成り立つか
ミルの権利論
慈善の義務は権利を生まない
ミルの不整合
キリスト教の社会倫理
善意と権利
受益者の権利はあるか
一 不完全権利
切り詰められた義務・権利
法が常に確定的である訳ではない
和解金のばあい
警察の義務
不確定な義務・権利
好意の貸借
お見舞いの約束
プーフェンドルフ
ニ 不完全正義
解決の糸口
不完全義務の不履行も罪である
正義と人間愛の境界
実在物とその半影
不完全義務は正義に含まれる
権利と正しさ
義務は権利と連関し、超義務は連関しない
既成の学説との違い
切り詰められた義務と権利
新奇で伝統的
三 不完全義務と超義務
報恩の義務
超義務を果せば互酬的義務も果せる
ジョン・ロウルズ曰く
義務と超義務の間
感謝の二つの意味
感謝とは超義務への応答である
冷血の正義漢
パン屋の一ダースは十三個
四 法の限界
新しい権利の創造によって生じた困難
新しい権利は肯定型、古い権利は否定型
新しい権利は古い平等と一致しない
権利の拡大
さまざまな人権宣言
権利をまもる基礎体制
自由と平等より高い兄弟愛
伝統的な完全責務と新しい不完全責務
新しい権利と古い権利の相克
人権は法的権利ではなく社会目標
権利を支える共同体
平均道徳の弊害
商売人の国
契約社会の非契約的側面
古代ギリシャで正義の役割は小さかった
解説
補充文献目録
索引
■著者略歴
著者・訳者紹介:amazonより
シューメーカー,ミリャード
1936年、アメリカのネブラスカ州に生まれて、1958年にコルゲート(Colgate)大学を卒業し、さらにハーバード大学神学校で学位(S.T.B.)を取得、1967年にコルゲート大学で修士の学位を取得し、1970年に『愛と正義の構造―倫理の人間学的基盤』の母体となった「権利・義務・超義務」(Rights,Duties,and Supererogation)で博士号を取得している。コルゲート大学で専任講師(instructor 哲学と宗教1965-1967)、クイーン大学で助手(Tutor 1967-1969)、同講師(宗教 Lecturer)、助教授(Associate Professor 1974-1982)、1982年以後はクイーンズ大学の教授である
加藤/尚武
1937年生まれ。東京大学大学院(哲学)博士課程中退。山形大学教養部助教授、東北大学文学部助教授、千葉大学文学部教授、京都大学大学院文学研究科教授を経て、現在、鳥取環境大学学長。第七回哲学奨励山崎賞、第六回和辻哲郎文化賞、紫綬褒賞を受賞。日本哲学会委員長。著書に『ヘーゲル哲学の形成と原理』未来社、『環境倫理学のすすめ』丸善ライブラリー、『現代倫理学入門』講談社学術文庫など
松川/俊夫
1958年生まれ。東北大学大学院博士課程修了。現在、山形短期大学助教授。著書に『なぜから学ぶ生命倫理学』医学芸術社
■引用
不完全義務が他人の権利を伴わないと考えられる時にはまた、ひとかけらの正義も問題とならないと考えられるのが通例である。「正義」は、すべての人々が自分の権利、つまり、当然自分が受け取るべきものを受け取る状況として定義されるのが通例だからである。それだから、非常にしばしば、正義と仁愛(あるいは愛)とは相互に対照的なものであるとされる。対照的なものであるとする根拠は、仁愛が単なる不完全責務の義務であり、従って、誰にも権利を授けないということである。しかし、私が既に示したように、これが本当のところ、躓きの石であることは明らかである。他人にその人が当然受け取るべき以上のものを与えるように「要求される」としたら、その十分な理由はどうしたら得られるのか。これは答えの出しにくい問題だからである。(p.157)
倫理学のもっとも基本的な問題でありながら、これまで系統的な書物が一度も書かれたことがなかったという不思議なブラックホールが存在する。愛と正義の関係である。例えばアリストテレスの倫理学で愛と正義はどういう関係になっているかを論じた者はいなかった。日本で人情と義理というのも、ほぼ同じ関係である。専門用語で言えば、不完全義務と完全義務の関係である。
完全義務というのは、一〇〇%守るべき義務で、怠れば制裁があるというものである。不完全義務というのは、困っている人を助けるとい義務が典型的な例で、雪道で五〇〇円玉を落としたのでバスに乗れなくなったというお婆さんを見捨てても罪にはならないが、不完全義務を怠ったことにはなる。すると最低限の倫理が完全義務で、誰にも達成できるとは限らないができれば達成したいという最高限度の倫理が不完全義務だと言う解釈も可能である。(「解説」より p.187)
■書評・紹介
■言及
*作成:
篠木 涼
UP: 20080109 REV: 20191117
岩ア 弘泰
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「哲学/政治哲学(political philosophy)/倫理学」
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