HOME > BOOK >

『日本経済の難問を解く――労働力不足・日米関係・東京問題』

竹内 宏・長銀総合研究所 19911206 PHP研究所,237p.


このHP経由で購入すると寄付されます

■竹内 宏・長銀総合研究所 19911206 『日本経済の難問を解く――労働力不足・日米関係・東京問題』,PHP研究所,237p. ISBN-10:4569534384 ISBN-13:9784569534381  \1400 [amazon][kinokuniya] ※

■内容(「MARC」データベースより)
日本経済は、情報文明の到来という強力なインパクトにより力強い成長を続けてきた、がこれからの日本経済は? 労働力不足、東京一極集中、日米関係の三つの難問を解くことにより、日本経済の斬新な長期展望を描く。

■目次
序章 ダウントレンドの不安の中で日本経済の繁栄への戦略を問う
 花開く新しい情報化文明
 出生率の低下と深刻な労働力不足
 ・外国人労働者の導入と急がれる省力化投資
 ・気がかりな労働力の質的の低下
 なぜ高地価と高賃金が生まれたのか
 ・国内への投資よりも海外への投資が魅力的な理由
 ・地価を下げる手段が取りにくい理由
 米ソ両大国の衰えと「乱世」の時代の到来
 ・世界の警察官・アメリカの経済的負担
 ・日本はどうすれば世界から敬愛されるか
 ダウントレンドを乗り越えるために
 ・出生率を高める方策と既得権益に対する大胆な改革

第1部 アメリカの再生が日米関係を破滅から救う
第1章 日米関係・危機の構図を読む
 日米経済摩擦の歴史的経緯
 ・個別貿易摩擦の時代
 ・経済摩擦の時代
 ・複合摩擦の時代
 ・アメリカとECの対日政策の違い
 日米衝突は不可避か
第2章 日本とアメリカは宿命のライバルか
 日米関係の現状を読む
 ・湾岸戦争後のアメリカの世界戦略
 ・拡散した日米摩擦
 ・経済問題だけなら構造協議と個別競争で対応可能
 ・問われているのは日本政治におけるモラル
 ・アメリカの変わらなさ
第3章 アメリカの何が問題なのか
 「アメリカン・プロブレム」とは何か
 ・ジャパン・プロブレムからアメリカン・プロブレムへ
 ・「アメリカン・プロブレム」の特徴
 ・根深い「アメリカン・プロブレム」
 アメリカの国内統合をめぐる意識のゆらぎ
 ・人種をめぐる対立
 ・ミドルクラスの分解
 ・深刻な階層分化と財政負担の増大
 ・湾岸戦争で明らかになった事実
 「実験国家」アメリカと再生への試み
 ・さまざまな社会運動への参加意欲(個人レベル)
 ・社会へ貢献するための工夫(企業レべル)
 ・地域問題解決へ向けての努力(自治体レベル)
 政治サイクルからの検証
 ・国内政治をめぐる2つの潮流
 ・社会的目的の時代
 ・「内向き」と「外向き」の外交サイクル
第4章 〔シナリオ&シュミレーション〕アメリカの行方
 アメリカの方向を決める要因とは
 ・国内の社会意識と軍事・外交政策の変化
 経済成長と財政赤字の関係
 ・理論的な説明
 ・財政赤字の推移
 ・シュミレーションモデルと結果
 ・外国資本流入の結果
 3つのシナリオとシュミレーション
 ・現状維持のシナリオ
 ・最悪のシナリオ
 ・ベスト・シナリオ
第5章 アメリカの再生のために日本が果たす役割とは
 アメリカの自助努力を支援する4つのレベルからの方策
 ・ベスト・シナリオを実現するために
 日米関係を揺るぎないものにするための3つの方策(国家レベル)
 ・アメリカへの安定的な資本供給
 ・消極的な市場開放
 ・ハイテク分野での技術協力
 直接投資と文化・社会交流の重要性
 企業レベルで実現できる4つの方策
 ・対米直接投資の増加・現地化の推進
 ・ハイテク分野での技術者の受入れ
 ・社会貢献活動の体制整備と実践
 ・マイノリティー・メディアとの関係強化
 反米・嫌米感情を排す

第2部 膨張する東京が都市のフロンティアを切り開く
第1章 世界に類のない大経済圏が出来た
 明治以降の1.5時間圏の推移
 ・問題提起
 ・「4宿」から浜松、長岡、福島へ
 ・鉄道の開業が殖産興業を支える
 ・行動範囲を飛躍的に広めた新幹線の登場
 世界でもユニークな東京200q圏
 ・日本の4割を担う
 ・東京200q圏の都市群の厚み
 ・200q圏の核としての50q圏の塊り
 進行するダイナミックな変化
 ・世界のセンターの性格を強める都市・23区
 ・50q圏で進む新しい都市づくり
 ・外延化する工場・研究所立地
第2章 望ましい国土形成に向けてのシナリオと方策
 中枢都市づくりのシナリオ
 ・問題提起
 ・現状維持は関東臨海部集中型
 ・東京の機能の受け皿となる条件
 ・中枢都市集中型の経済シナリオとは
 実現への方策
 ・100万都市の自主権強化と道州制
 ・「ふるさと住民税」の考え方
第3章 大東京圏の21世紀初頭のビジョンを描く
 大東京圏のさらなる成長プロセスと都市間分業
 ・問題提起
 ・さらなる放射状に、西に充実する高速道路網
 ・200q圏のめりはり
 ・新工業地帯とリゾート
 ・200q圏内を超えて
第4章 東京都心部の新たな可能性を探る
 東京都心の空洞化は日本経済の衰退化を招く
 ・問題提起
 ・旺盛な都心オフィス需要
 ・2000年の都心人口は20万人
 ・小規模開発の継続とスラム化の危険性p  職・住・遊両立化のシナリオ
 ・指定容積を有効に使うだけで
 ・丸の内・大手町のマンハッタン化
 ・「広域容積移転」による残す街並みと再開発する街並みの調和
 地下空間の活用法
 ・交通インフラ整備の考え方
 ・地価インフラ構想
第3部 労働力不足が日本の産業・経済を変える
第1章 深刻化する労働力不足
 労働力不足の背景と実態
 ・日本経済を揺さぶる「1.53ショック」
 ・豊富な労働供給のなかの労働力不足
 ・人手不足の要因は景気拡大とミスマッチ
 ・建設業をはじめ上昇する欠員率
 ・中小企業ほど深刻な人手不足
第2章 労働力不足で産業・企業が大きく変わる
 変化する日本の産業構造と生産体制
 ・弱体化する効率的な生産体制
 ・広がる工場・事務所の地方分散
 変化が著しい生産現場
 ・進展する省力化・自働化
 ・知能技能者(ニュー匠)の出現
 ・流動化する労働者
 ・進展する無人化への道
 労働力不足によって加速する国際化
 ・始まる人手不足進出
 ・活発化する海外直接投資
 ・移転が進みやすい産業分野
 ・高まる海外生産比率
 ・海外生産80兆円時代
 変貌するサービス業
 ・機械化、情報化による省力化
 ・マニュアル化で安くて便利を可能に
 ・セルフ・サービス化――お客を乗せるのがコツ
 ・我慢の時代
 ・ドゥ・イット・ユアセルフ化
第3章 労働力不足時代の企業経営
 生産現場のルネッサンス
 ・省力化・自働化の一層の推進
 ・改善される仕事の仕組みと工場アメニティの促進
 ・生産拠点のネットワーク化
 ・試作・実験的工場へ
 ・技術者の待遇改善
 国際分業構造の確立
 ・企業内国際分業の深化
 ・必要なグローバル強調生産システムの形成
 ・人高時代への挑戦
 変革する企業経営
 ・見直される雇用慣行
 ・活かされる外国人労働力
 ・強化される企業間提携
第4章 シナリオ分析による今後の労働力不足の展望
 予想される3つのシナリオ
 ・最悪のシナリオ
 ・現状維持のシナリオ
 ・ベスト・シナリオ
 ベスト・シナリオのための対応策

■引用
◇1991年(本書発売)当時の景気認識
「日本経済は、これから数年の間、力強い経済成長を続ける力がある。その最大の理由は日本が現在、極めてスケールの大きい技術革新の真っ只中にあって、旧いアメリカ文明から新しい情報文明へと、文明が大転換するときだからだ」(p12)
「これから、すばらしい情報機器が続々と開発されて、生産、流通、生活等、日本経済のあらゆる側面が大変化を遂げ続けることは確からしい。(中略)半導体や超LSIや様々な情報機器やソフトを作る工場が続々と建設されて、日本は新しい情報文明の一大拠点となる。それにともなって、投資も消費も伸び、生産性は向上し、生活は一層快適になるに違いない。」(p13)
「日本経済はこれから7〜8年ぐらいは、情報文明の強力なインパクトに支えられて成長し続ける力がある。」(p24)
〔☆引用者註:本書が発売された1991年12月には、(当時まだ実感されてはなかったが)1986年11月から続いた景気拡大(通称「バブル景気」)はすでに終了していた。以降日本経済は、「失われた10年」と呼ばれるほどの深刻な不況(苦境)に直面することになった。本書を作成した長銀総研の親会社、日本長期信用銀行は1998年に破綻。〕

◇日本経済の「不安要因」としての「高賃金問題」
「国内の労働力供給が絶対的に減少してくるのに対し、経済成長にともなって、これからも労働力需要は増加する一方である。このままにしておくと、賃金が上昇を続け、海外企業との競争に勝てなくなる。」(p14)
「今後90年代には労働力不足、それに伴う福利厚生も含めた賃金が上昇し、国際的批判やゆとりある生活のための時短の進行という時代を迎える。労働力を非常に大切にする時代、換言すれば人の価値がいっそう高まる “人高”時代ということになる。高賃金をはじめとしたそうした時代は、もはや日本国内で作る気をなくす産業が増加する時代ともいえるだろう。」(p216)

■書評・紹介

■言及



*作成:角崎 洋平 
UP:20090208 REV:20100102
科学技術と社会・所有・国際競争・国家戦略・…  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
TOP HOME (http://www.arsvi.com)