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『死刑――FOR BEGINNERS』

前坂 俊之 文・橋本 勝 イラスト 19910510 現代書館,174p.


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■前坂 俊之 文・橋本 勝 イラスト 19910510 『死刑――FOR BEGINNERS』,現代書館,174p. ISBN-10:4768400566 ISBN-13:978-4768400562 \1260 [amazon][kinokuniya] c0132 c0134

■内容

■目次
まえがき
1 死刑と無期の間
 長山則夫のケース
2 死刑の現状
 死刑になる犯罪
 死刑と無期の分かれ目
 死刑囚の日常
3 死刑執行
 恐怖の日々
 死刑執行の日
4 死刑囚の最後の瞬間
 密行される死刑
5 死刑存廃の争点
 死刑は必要か
 死刑に威嚇力があるのか
 死刑を執行する人たちの苦しみ
 死刑存続が多いという世論調査は信用できるか
 戦争と死刑
6 誤判による死刑は少なくない
 冤罪はおこりうる
 開かずの門、再審の扉
 誤った死刑
7 日本における死刑の歴史
 残虐な刑罰の少なかった古代日本
 死刑のなかった平安時代
 武士の世と死刑の復活
 苛酷な死刑の戦国時代
 そして江戸時代……
 死刑も文明開化!?
8 世界の死刑事情
 死刑廃止条約
 死刑が止められない国々
 死刑を止めた国
あとがき
参考文献

■引用

「死刑を執行する人たちの苦しみ
 もう一つ、死刑存廃の議論で、忘れてはならないのは、誰が直接手を下すかということである。世論調査で死刑はやむを得ない、という人たちは、実際に死刑囚の首にロープをかけ、殺人作業に従事する人たちの気持ちを考えたことがあるだろうか。
 死刑制度を一番恥じているのは、この人たちであり、廃止を願っているのも、またこの人たちなのである。
 次の証言はある拘置所の看守部長の手記である。
 「拝命の日から一つの重苦しい気がかりが胸につかえてどうしようもありませんでしたが、とうとうそれが現実となって現われてきました。
 それは私が死刑執行に直接手を下したことです。もっとも恐れていたことをとうとうやらされてしまったことです。その日から私の心にナマリがくいこまれたように憂うつがとれません。私はあまり酒をたしなまない方ですが、時々その時の状況が目に浮かんできて、堪えられなくなり、酒量を過ごすことがあるようになりました。
 妻はクリスチャンであり、このことを話したら、妻がどんなに大きなショックをうけるか、と思うと、とてもその勇気はありません。
 おそらく、私に職場を変えるか、離婚を希望するだろうと思い、私の今の小さな幸福を守るために絶対に妻に秘密にしておきたいと思っています。>90>
 国家公務員法があって、私たちは命令を守らなければならない義務があるかも知れませんが、人の命を奪う残酷な仕事をやらなければならないものであろうか。憲法第36条の趣旨からいっても、こんな残虐な行為を公務員が行ってもいいものだろうか。
 恐怖におののく死刑囚に手錠をかけ、足をくくり、教誨師さんの慰めでやっと呼吸している人間の首に縄をかけ、絞首する、もっと端的にいえば、ニワトリの首をひねると同じ行為を人間に対してやるのですから、私にはどう考えても残虐行為としか思えない。
 教育刑を唱える矯正職員がこんなことをやらねばならぬ義務があるのでしょうか」(『刑政』1956年3月号)
 1990(平成2)年6月22日の衆議院決算委員会で、志賀節議員(自民)は「1回の死刑に対して死刑執行に従事する刑務官は何人必要とするのか」と質問した。これに対して、今岡一容法務省矯正局長は「5人以内の範囲で、死刑の執行手当ては1回につき7200円」と答えた。
 人殺し代がわずか7200円。こんなはした金をもらってもうれしい人がいようか。大部分の刑務官は、恐るべき体験を忘れ去りたいと酒を飲み、泥酔するという。
 大阪拘置所長で12人の死刑囚の最期を見送った高橋吉雄元所長はこう話す。
 「刑務官は教育者というプライドを持っています。死刑執行はその刑務官の誇りをズタズタにする。死刑囚と日常的に接している刑務官のほとんどが口でははっきり言わないが、死刑制度に反対しています。
 死刑囚と刑務官という立場の違いはあれ、>91>極限の日々を送り、心を開き合った仲なのに執行に当たってはこの親しい人間を前手錠でつるし『ピクピク』とけいれんする無惨な姿を見送らねばならない。このために、退職した人も多いのです。死刑廃止こそ刑務官の共通した悲願です」と訴える」(pp.90-92)

■書評・紹介

■言及



*作成:櫻井 悟史 
UP:20080908 REV:
死刑  ◇「死刑執行人」  ◇身体×世界:関連書籍 1990'  ◇BOOK
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