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『死を処方する』



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■Kivorkian, Jack 1991 Prescription Medicine: The Goodness of Planned Death, Prometeus Books, New York=19990305 松田和也訳、『死を処方する』、青土社、351+11p. 2200 [amazon][kinokuniya] ※

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自殺マシンで120人以上の患者を自殺ほう助した米国の殺人医師は既成倫理に宣戦布告する聖戦のヒーローか
一人の「殺人ドクター」が自殺ほう助容認キャンペーンを展開した結果,彼は医師資格を失ったものの,自殺ほう助を禁ずるミシガン州の州法が憲法違反とされ,1996年にはオレゴン州では州法で医師による自殺ほう助を認められた。
独特の自殺マシンを使用すれば患者は自らスイッチを押して致死薬を体内に注射,「急速にして静穏,かつ確実」な死に到るという。不治の病になった患者の自己決定権を尊重する「慈悲殺装置」だそうだが,フリー・マーケットで買い集めた部品で作った代物である。

最初の人体実験を描いた章「医殺の誕生」は13ページ。残り330ページは自殺ほう助を正当化するための主張で埋められている。その主張の原点は死刑囚に全身麻酔を施して生体解剖付し,臓器や組織を取り出して医学の発展に役立てるべしという不気味な着想である。米国とはこういう人物を産み,ある程度の社会的影響力をもつ。そんな米国社会の異相が分かる一冊である。読者の健全な批判力が問われる一冊でもある。 (仙台白百合女子大学 非常勤講師、老・病・死を考える会世話人 尾崎 雄)
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-- ブックレビュー社

医師は死を介助してはならないのか。安楽死を望む末期患者に自ら薬物を注射した医師の末期医療論。

■目次

1 処刑、七月一三日
2 その時、実際に起こっていたこと
3 ある理念の復活
4 宣告される死の種類
5 最善の処刑法
6 サクラメントからの凶報
7 死刑囚監房からの声
8 「まるでサーカスの曲芸だ!」――ある「生体実験」のエピソード
9 「ヒポクラテスの誓い」(ヒポクラティック・オウズ)ならぬ「偽善的な馬鹿ども」(ヒポクリティック・オウフス)
10 日の下に新しきものは無し――死刑囚と医学の関係小史
11 宇宙時代の医学、石器時代の倫理
12 道徳に対するリンチ
13 死の谷の慈悲殺――安楽死と自殺介助
14 真の慈悲とは何か
15 医殺(メディサイド)の誕生
 自殺機械「マーシトロン」を用いたJanet Adkinsに対する自殺幇助についての記述
 「今やいわゆる生命倫理学者たちから賞賛されるまでになった安楽死推進派の人々だが、彼らかの意図と行動が極めて臆病で、秘密主義で、場合によっては詐欺的なものであるのに対して、私の行動はオープンで、倫理的で、合法的で、そして完全かつ妥協を許さない誠実さを保っていた。」(p.310)
16 予後―医殺――進歩か、堕落か
 「死刑囚に、自分自身でマーシトロンを操作するかどうかを選ぶ権利を与えるのだ。その死刑囚にその価値があるかどうかは別にして、そのような形で(p.322)当人の自己決定権を尊重することによって、処刑という行為をより人道的なものにし、それを行わせている社会の道徳性を高めることができるだろう。
 多くの(おそらくは殆どの)死刑囚がその選択肢を歓迎するだろう、と私は確信している。少なくともそれによって、ほんの僅かではあるが、当面の状況と自分の死のプロセスを自分自身で統御することが出来るのだから。」(p.323)
17 医学のスペクトルの完成
補遺
翻訳者あとがき
参考文献
索引

■言及

〈T:129,V:○〉


UP:20120921 REV:20141025
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