■Blum, Linda M.(リンダ・ブルム) 1991
Between Feminism and Labor: The Significance of the Comparable Worth Movement, University of California Press
=19960714 森ます美・居城舜子・川東英子・津田美穂子・川島美保・中川スミ・伊藤セツ・杉橋やよい 共訳,『フェミニズムと労働の間――コンパラブル・ワース運動の意義』,御茶の水書房,303+29p. ISBN-10: 4275016327 ISBN-13: 9784275016324 5460
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■内容
(「BOOK」データベースより)
コンパラブル・ワース運動のケース・スタディにもとづいて、コンパラブル・ワースが、階級運動とジェンダー運動を統合した労働者・フェミニスト同盟の形成に対してもつラディカルな可能性を探求する。
■内容
(「MARC」データベースより)
性によって分離された女性職の賃金を上昇させるための戦略=コンパラブル・ワース運動のケース・スタディに基づき、それが階級運動とジェンダー運動を統合した労働者・フェミニスト同盟に対して持つラディカルな可能性を追求。
■著者紹介
Linda M. Blum
1988〜1995年 ミシガン大学社会学部助教授 社会学・女性学
1995.9〜1996年(現在) タフツ大学社会学・人類学部客員準教授
1996.9〜 テニュアの助教授としてニューハンプシャー大学(社会学・女性学)に就任予定
■目次
第一章 正義は信頼できる
コンパラブル・ワースに関する議論の背景
労働運動
〈労働運動の新しい課題〉
〈階級政策についての議論〉
フェミニスト運動
〈階級〉
〈ジェンダー〉
第二章 アメリカのジェンダー政策――アファーマティブ・アクション、フェミニスト運動、コンパラブル・ワース
アファーマティブ・アクションの説得力と成果
〈連邦政府〉
〈労働組合〉
〈雇用主の対応と雇用パターン〉
フェミニスト運動における階級とジェンダー
〈前史:一九六〇年代以前の女性の権利論争〉
〈第二波:現代フェミニズムのジェンダーと階級〉
コンパラブル・ワース運動
〈州と地方における運動の誕生〉
〈雇用機会均等委員会の活動〉
第三章 「強攻策」――サンホセにおけるコンパラブル・ワース運動
アファーマティブ・アクションからコンパラブル・ワースへ
〈女性事務職員たち〉
〈図書館職員たち〉
〈レクリェーション指導員〉
〈労働組合:女性専門職と事務労働者〉
政治と科学――職務評価研究
〈職務記述〉
〈職務評価委員会〉
〈傾向線〉
〈ストライキ〉
第四章 「証拠を残さず」――コントラコスタ郡におけるコンパラブル・ワース運動
郡におけるコンパラブル・ワースの起源
〈初期における事務職員の運動〉
〈近年の事務職員の運動〉
〈専門職女性〉
〈コンパラブル・ワース連合:アファーマティブ・アクションを利用して〉
科学と政治――実行への闘い
〈第一ラウンド:調整給の獲得〉
〈第二ラウンド:特別対策部会〉
〈他の戦術〉
〈その他の障害〉
第五章 制約された選択――女性職における女性の利害
平等と差異
男性職への女性の進出――再分離と失業の可能性
女性職に留まる女性たち――経済外的利益
女性職への男性の進出――経済的・経済外的結果
第六章 コンパラブル・ワース運動の限界
ジェンダーにもとづく利害
階級にもとづく利害
階層制
科学と政治――草の根の運動 対 技術的な改革
第七章 階級とジェンダー運動のラディカルな可能性
理論(ディスコース)と実践
ひき続き重要である階級概念
皮肉な結果
資料
添付資料A 労働力における女性の位置の推移
添付資料B サンホセのインタビューと参考資料
添付資料C コントラコスタ郡のインタビューと参考資料
訳者あとがき
参考文献
組織名略称一覧・索引
■紹介・引用
▼
コンパラブル・ワースあるいはペイ・エクイティは、性によって分離された女性職の賃金を上昇させるための戦略である。男性と女性が行う異なる職務は、技能、努力、責任、労働条件の必要なレベルの観点から比較されうる。したがって、コンパラブル・ワースに関する議論によれば、女性の職務に対する支払いは、同等に格づけされた男性の >004> 職務に対する賃金と比較されるべきである。[……]コンパラブル・ワースは、国際的にも、いくつかの国において女性労働者のための有効なアプローチとしてあらわれた([……])。ペイ・エクイティが低賃金の女性にもたらした実際の利益はあきらかに重要であるけれども、しかし私の関心は、これらの利益以上に、それが階級およびジェンダーに関する政策に及ぼす長期的なインパクトにある。
コンパラブル・ワースは、ジェーン・アッカー(Joan Acker 1989)が見事に論じたように、ジェンダーが階級構造に組み込まれる方法に挑戦している。その主要な前提、すなわち、女性は男性と同様に価値があり、市場が女性の労働に付与する価値にかかわりなく、女性も平等に適正な生活賃金(living wage)を得る権利があるという前提は、現存の不公平なシステムのイデオロギー的土台に異議を唱えている。この挑戦の最後の成功は、政治的論議と女性労働者の意識の双方を、ラディカルな方法で変化させる能力次第で決まるであろうと、私は信じている。この本において、私は、低賃金女性を結集し、政治化するためのコンパラブル・ワースの潜在力を検証することによって、そのラディカルな可能性を探求する。
コンパラブル・ワースの運動の主要な担い手は、低賃金女性の結集に影響を及ぼすことを期待されている二つの組織化された運動、すなわち労働運動とフェミニスト運動である。前者は、従属する階級の利益を効果的に表明する主要 >005> な代弁者であり、後者は、女性のジェンダー利益を効果的に表明する主要な代弁者である。[……]コンパラブル・ワースのラディカルな潜在力は、二つの運動についての議論を広げ、二つの運動の間の積極的な同盟を促進し、それぞれの運動をより進歩的な方向へと押し進めることを助けるコンパラブル・ワースの能力のなかに存在している。(pp.3-5)
*作成:
村上 潔(立命館大学大学院先端総合学術研究科)