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『【新版】少数派労働組合運動論』

河西 宏祐 19901031 日本評論社,393p.


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■河西 宏祐 19901031 『【新版】少数派労働組合運動論』,日本評論社,393p. ISBN: 4535578982 ISBN:9784535578982 3567  [amazon]

■目次
序 本書の研究意図と課題

T 研究史
第一章 企業別組合研究における少数派組合研究の意義
  一 企業別組合研究史における論点
  二 企業別組合研究の残された課題

 U 少数派組合の理論
第二章 労働運動史における少数派組合問題
  一 企業別組合と組合分裂
  二 総評労働運動における少数派組合運動
  三 総評系少数派組合の現状
  四 「新左翼」労働運動における少数派組合
  五 「新左翼」少数派組合論の特徴
  六 「新左翼」系少数派組合の成果と課題
  七 総評系少数派組合と「新左翼」系少数派組合の交叉
第三章 組合分裂と少数派組合の量的傾向
  一 組合分裂と少数派組合の概要
  二 企業内複数組合併存下の労使関係
  三 少数派組合にみられる企業別組合運動の変革の可能性
  四 少数派組合の今後
第四章 少数派組合の理念・限界・成果
  一 分析対象の概要
  二 少数派組合の理念
  三 少数派組合の限界
  四 少数派組合の成果
補論 少数派組合員の意識
  一 少数派組合員の価値意識
  二 「新左翼」系少数派組合員の「初発の倫理観」

 V 少数派組合の実態
第五章 少数派組合の「経営外的機能」と存続条件
   ――電算中国地方本部の事例研究
  一 日本電気産業労働組合の歴史
  二 電算中国地方本部の概要
  三 対外的機能における存続条件
  四 対外的機能における変化の動向
  五 組合員の動機づけ機能における存続条件
  六 組合員の統合機能における存続条件
  七 一般化の展望――企業別組合の「経営外的機能」の可能性

 W まとめ
第六章 少数派組合の今後
  一 少数派組合の発展の可能性
  二 少数派組合に残された課題
付章 企業別組合の「経営内的機能」と職場集団

補章 企業別組合の性格規定

新版によせて

■引用
「要するに、わが国の労働組合の特徴は、何よりも組合員資格を特定企業従業員のみに限定している点に求めるべきで、これを企業別組合と呼ぶべきである。企 業内単一組合の場合はいうに及ばず、組合が分裂して複数になっても、各々がごく自然に企業単位に組合を結成している点にこそ、わが国の労働組合の特徴が見 出されるからである。すなわち、構成員結合原理として、「労働者階級連帯主義」を採用する横断的組合(職業別組合、産業別組合)に対して、それよりも「従 業員連帯主義」を採用している組合を企業別組合と呼ぶべきである。それを簡略に示すと次のようになる。

 組織形態              構成員の結合イデオロギー
 企業別組合…………………………………階級連帯主義<従業員連帯主義
 職業別組合(横断的組合)………………階級連帯主義+職業別連帯主義
産業別組合(横断的組合)………………階級連帯主義+産業別連帯主義

 このように考えれば、歴史的にも一貫した整理が可能となる。すなわち、戦前には全員組織を目標としながらも歴史的条件に規定されて、一部従業員を組織し たにとどまる一企業一組合や一企業複数組合の事例が存在し、敗戦直後は従業員全員組織がほぼ大部分を占め、組合分裂が頻発し始めた昭和二四年以降は、一企 業複数組合の事例が増加したと整理できる。そして、いずれの時期も、組合員の結合原理が「従業員連帯主義」である点は一貫していた、と指摘できる。このこ とから、企業別組合を「従業員全員加入の一企業一組合」として包括的に把握できる時期はこく短期間であること、企業別組合の要件を構成員資格に限定すれ ば、全期間にわたる企業別組合の一般理論の構築の可能性が開かれることもまた、明らかとなろう。」(p.29-30)

「すなわち、昭和二〇年代に組合分裂を頻発した時には、組合分裂の契機は右派的第二組合の結成のためであり、分裂後の経過は、日を経ずして少数派に陥った 左派的第一組合が、少数派であることに見切りをつけ、多くの組合運動の原則を投げ打ってでも、右派的第二組合に吸収併合される道を選択することであった。 当時の組合運動における価値観が、「一企業一企業別組合、一産業一産業別組合、一国一ナショナルセンター」という世界労連方式の、「統一と団結」を至上の 価値とするイデオロギーであったため、これに照らして、組合分裂が生じれば「敗北」であり、少数派組合の将来に発展的な展望はないと考えられたからであ る。むしろ、少数派組合状態に拘泥することは、「分裂主義者」として批判される傾向さえあった。
 だが、昭和三〇年代に入ると、やや異なる傾向が生じてきた。すなわち、少数派に陥った左派的第一組合が、右派的第二組合への吸収、併合を拒否し、あくま でも、少数派組合としての存続を志向する方が組合運動として価値があるとの考え方が、むしろ一般的となってきた。
 昭和四〇年代になると、さらに新たな傾向がつけ加わっている。すなわち、組合分裂後も、左派的第一組合が多数派を維持したり、少数派に陥った第一組合が 再び勢力を回復し、第二組合の吸収や解体に成功する例が出現している。さらに、労働運動全体の右派的再編成の進行や、官僚主義的統制の強化に失望した青年 労働者層が、組合無関心層へと逃避することなく、積極的に「左派分裂」を敢行して、左派的少数派組合を結成する傾向が発生している。
 かくして、少数派組合は、従来のように、多数派組合に併合される過渡的現象ではなく、それ自体として組合の望ましいあり方とさえ考えられるようになっ た。
 以上から、少数派組合を研究対象とすることが、企業別組合研究の発展にとって重要な意味をもつことが明らかとなるであろう。」(p.36-37)

「以上の四例にみられるように、これらの組合はいずれも、労働組合運動の「常識」となった大上段にふりかぶった理論やテクニックの受容からではなく、企業 内の微細だが必要性に迫られた、その意味では従業員にとっては「重大事」(解雇など)に直面したことから活動を開始し、労働運動の素人の感覚(「人間とし て許せるか」の感覚)に依拠した運動を続けている。この「人間性に根ざした、ごく自然な初発の倫理感」という要素が、そのまま「既成労働運動」に対する鋭 い批判的条件となっており、それが、勢力としての「新左翼」労働運動に結びついている点に、現在の労働運動の著しい特徴をみることができよう。」 (p.147-148)

「ところで、企業別組合、非企業別組合とも、そのなかには一九七〇年代以降、さまざまな動機と結合軸にもとづいて結成された、さまざまな形態の労働組合が ふくまれている。これを概観すれば、職種別組合、臨時工労働組合、パート労働組合、さらに心身障害者組合、女性労働組合、失業者労働組合、中高年者労働組 合、などがある。最近ではコミュニティ・ユニオンの結成も相次いでいる。これらは未だ運動内容も構造・機能的特徴も形成途上にある未定形のものが多い。し たがって、これらは現時点では〈新型労働組合〉と一括してよび、将来、構造的・機能的性格が確定した時期に再分類するほうが適当である。」(p.371)

「ともあれ、多少とも筆者の少数派組合研究に言及した論者のほとんどすべては、少数派組合が多数派組合へと発展するための論理と条件、道筋を示せと批判、 または注文している。少数派としての立場と視点にこそ組合運動の意味を見出すべきだとする、真にラジカルな論評に接する機会には恵まれなかったのは、幸い なことなのか、あるいは不幸なことなのか。」(p.379)

「栗田健のこの主張は、相変わらず少数派組合の全面的否定論の文脈で語られており、引用の前半の部分については、日本の労働者構成についての栗田健の錯覚 にもとづいていることは、別のところで反論した(栗田健が「大部分」と考えている「中枢」の労働者は、すでに述べたように、日本の労働者構成の中の「小部 分」にすぎない)。それはさておくとして、引用の後半部分については、筆者が実態分析から析出した〈労働者文化〉は、戦闘的な少数派組合員に見出される闘 争的文化(または対抗的文化)であって、日本のすべての〈労働者文化〉を代表するものではないことは事実である。一方、栗田健のように、この種類の〈労働 者文化〉を全面的に排除して、「中枢」=〈全従業員一括加入型〉のなかの〈労働者文化〉のみを日本の〈労働者文化〉のすべてとみるのは、べつの意味での誤 りを犯すことになる。したがって、栗田健の指摘を、"多様な労働者がつくりだす多様な〈労働者文化〉の発見"という文脈に読み変えて、可能な限り、日本の 労働者類型を試み、それぞれに内在する多様な〈労働者文化〉を実証研究のなかから析出する試みをとおして、日本の労働者像の把握に努めることが、今後の重 要な研究課題として設定されるべきであろう。」(p.380-381)


UP:20070831
日本の労働(組合)運動 ◇
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