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『おいおいあんなぁへえー』

早川 一光 19900620 発行:京都21プロジェクト,発売:ふたば書房,222p.


■早川 一光 19900620 『おいおいあんなぁへえー』,発行:京都21プロジェクト,発売:ふたば書房,222p. ISBN-10: 4893201255 ISBN-13: 978-4893201256 971+ [amazon][kinokuniya] ※

■引用

 「君の名は

 もうKBS京都ラジオの ”ばんざい人間”に出て十力月近くなる。
 よきスタッフに囲まれて 流れるようにスムーズに 番組をこなしてる――と皆さんお思いでしょうが どっこい
 そんなわけにはいきません
 最近になって ようやく
 「センセ ちよっと上手にならはって 安心して聞けますわ あの天気予報!」と言われるようになったけど ホンマは 放送日(土曜日)が近づくと 僕の胸の内は▽120
 ”今週は何をしやべろう”
 ”うまいこと 言えるやろか”
 ”トチラへんやろか”
 と ワラワラと田の稲穂のようにゆれる。
 番組の中でも番ニガ手なのは交通情報である――
 「なあんにもあれ 先生が言うわけではおへんがナ センセは名前だけ言わはったらええのにまた何で?」と思わはるやろ
 それがだナ それがむつかしうおす
 そら 私の眼の前のアシスタントの北出さんが 私の言い易いように いいやすいように
 「日本道路交通情報 京都の!」
 とあとをうながすようにいうてくれはるけど
 胸がドキドキして緊張の一瞬や▽120
 その日の担当者のお名前が出てこない――
 「先生みたいな厚かましいお人が?!」と不思議にお思いでしょうが
 その ”君の名”が出てこない
 もちろん 事務万事用意してくださる古川さんが 資料を机の上に置いてくださっているので それを読みさえすればいいのだが
 それがツーと出てこない」(早川[1990:119-121])

 「息子より父親へ――五年まえ

 「お父さん、お年寄りばかりに話をせんと、僕ら若い者にも語りかけては?」という俳気ない一言が、この本の誕生となった。
 「なるほど」と答える父。今年六十六歳。
 僕二十歳。
 今年成人式を迎えたが、最近の父も、大分気が短くなり、頑固になってきた。
 この問も、初めてかかってきた電話の相手に向かって怒鳴りつけていた。
 母とも、すぐ喧嘩腰になる。一段落した後、母は、
 「あの人、随分気が短くならはったわ。若い時は気の長い人やったのに……」
と言っている。言っている母も頭が半分白だ。
 こういう父母を眺めて、人間、老いていくのは自然なんだと、つくづく思った。
 今まで父が書いてきた本は、老いていく人に向けて書されたものだった。この次は、▽218 それを見守る周りの人へ、「老い」とは何か、どう接していけばいいか、理解してもらえばいいと思ったのだろう。書きながら、実際に自分もそうなっていく、あせりも出ていて、それがどことなく説得力のあるものになったとも思う。
 僕もこれから、両親と付き合いながら、学ばなければならない。この二人が、まろやかな年寄りになるか、かどかどしい老人になるになるか、楽しみでもある。
 読者の方々に、少しでも理解下さったら、僕の提案の効があったと嬉しく思う。
                              早川 岳人」(早川[1990:217-218])


UP:20140807 REV:20140805
早川 一光  ◇老い  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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