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『税制のリストラクチャリング』

石 弘光 19900426 東洋経済新報社,267p.


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石 弘光 19900426 『税制のリストラクチャリング』,東洋経済新報社,267p. ISBN-10: 4492620338 ISBN-13: 978-4492620335 1700 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

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内容(「BOOK」データベースより)
消費税の見直し、土地税制、納税者番号制度、みなし法人課税、etc.―抜本改革を検証し、「世界の税制改革」の流れのなかで、わが国税制のあるべき姿を展望する。

■目次

1 検証・2つの抜本改革
 抜本改革の幕開けと挫折――中曽根税制改革
 出直した抜本改革――竹下税制改革
 抜本改革をどう評価すべきか
2 主役を演じた間接税
 間接税改革の視点
 間接税体系のデザイン
 模索された日本型付加価値税
 「消費税」の欠陥は何処か
 EC型付加価値税から学ぶ
3 直接税の公平確保のために
 不備な資産所得課税
 納税者番号制度の是非
 みなし法人課税は必要か
4 国際化の視点と税制
 世界の税制改革と日本
 最近の国際財政学会から――2つの報告
 EC統合と税制の調和

■引用

 第12章 世界の税制改革と日本
 「一九八四年以後、多くの国でかなりの幅で最高税率の引下げが実現している。とりわけ脚光をあびているのがアメリカで、最高税率を三三%に引き下げ、かつ残りの一五%、二八%として、計三段階のフラット化を実行した[…]。この措置は一般国民の人気を集め、レーガン税制改革を推進させた大きな原動力となったといえよう。」(石[1990:225])

 13章 最近の国際財政学会から――2つの報告
 「国際協調といっても、各国の関与の仕方にはおのずから程度の差がある。税制改革の際、間接的にお互いの制度を近づけていく受動的なものから、直接的な交渉によって税制の具体的内容を同一の方向にもっていこうとする積極的なものまで、いくつものケースに分かれる。
 間接的な協調は、一九八〇年代以降の世界の税制改革といわれる現象に代表される。つまり税率のフラット化、課税ベースの拡大、間接税のウェイト増大などが、暗黙のうちに各国の税制改革の共通の方向とされてきた。[…]
 しかし今日、お互いの税制を間接的に模倣し合うという受け身の対応が積極的な姿勢に転じざるを<0240<えない状況となっているのは明らかである。その状況とは、冒頭に強調した世界経済のグローバル化であり、そして域内の自由化を目指した一九九二年のEC統合である。この場合、当事者が直接に交渉し合う租税強調、あるいは内容的にもっと強化された租税調和が必要となる。
 従来、この分野は一連の国際課税上の諸ルール(源泉地あるいは居住地原則、移転価格、タックス・ヘイブンなど)をもとに、租税条約で問題が処理されるものと考えられてきた。しかし基本手貴に相互の税制を所与としたままで、二国間の条約締結によって問題を処理することは、もはや不可能な事態にまで経済活動が変わってきている。」(石[1990:240-241])
 クノッセンは「EC統合は認めつつも、税制の国際協調という流れの中で、果たしてそれでよいの<0241<かと疑いを投げかけている。つまり租税強調は各国政府に安易な租税負担増の動機を与え、多く非効率的な政府の温床になりかねない。それより各国独自の立場で自らの税制構築を目指しもっと競争すべきだという主張である。
 […]日本の税制抜本改革でも目標の一つとして、国際性がうたわれている。しかし、その中身は法人税率が国際的にみて高水準だとか、現行間接税が貿易摩擦を生んでいるとかの指摘にとどまっている。
 いま、世界各国は課税の中立性確保をスローガンに、国際協調を目指して既存の税制の枠組みを基本的に改めようとしている。これに対し、現在の日本ではこの種の問題意識が非常に希薄である。日本だけが孤立を保ち、世界的潮流の外に存在し続けられるとは思えない。税制の国際化に関し、われわれはもっと関心を払わねばならぬというのが、学会に出席しての著者の強い印象であった。」(石[1990:241-242])

 14章 EC統合と税制の調和
 「オランダの財政学者クノッセンは[…]税制の調和をカルテルに類似した概念と規定し[…]ている。[…]
 クノッセンは、このカルテル志向の本質から、税制の調和がいたずらに関係各国で高い税負担を維持させ大きな政府を助長しがちであるという性質を指摘している。そして政府内部での効率性、さらにはその規模抑制のためにEC各国でもっと税制上の競合(tax competition)が必要なことを主張している。」(石[1990:249])


UP:20081217 REV:20081227, 20090412
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