『レポートの組み立て方』
木下 是雄 19900330 筑摩書房, 234p.
last update: 20121217
■木下 是雄 19900330 『レポートの組み立て方』,筑摩書房, 234p. ISBN-10:4480051368 ISBN-13: 978-4480051363 \1260 [amazon]/[kinokuniya]
■内容
内容(「BOOK」データベースより)
情報を収集・精選して、明快・簡潔なレポート、読む人をうなずかせるレポートを書くには。そのコツを『理科系の作文技術』の著者が一般社会人・文科系学生のために説く。
■目次
1. レポートの役割
1.1 レポートとは
1.2 大学生のレポート
1.3 社会人のレポート
2. 事実と意見の区別
2.1 事実と意見――言語技術教育との出会い
2.2 事実とは何か 意見とは何か
2.3 事実の記述の比重
3. ペンを執る前に
3.1 レポート作成の手順
3.2 主題をきめる
3.3 目標規定文(主題文)
3.4 材料を集める
3.5 いろいろの制約
3.6 レポートの構成
4. レポートの文章
4.1 読み手の立場になってみる
4.2 叙述の順序
4.3 事実の記述・意見の記述
4.4 レポートの文章は明快・明確・簡潔に書け
4.5 パラグラフ――説明・論述文の構成単位
4.6 すらすら読める文・文章
4.7 文章の評価
5. 執筆メモ
5.1 原稿の書き方
5.2 出典の示し方
5.3 表と図
5.4 読み直し 修正
文献
問題の解答
索引
あとがき
■引用
◆レポートを書く上での最も基本的な心得は次の二つである。
(a) レポートには、調査・研究の結果わかった事実を客観的に、筋道を立ててまとめて書く。この部分がレポートの主体で、これだけで終わっていい場合もある。
(b) レポート中に書き手の意見が要求される場合には、それが(事実ではなく)意見であることがはっきりわかるように書く。意見の根拠を明示しておくことが肝要である。
つまり、レポートに書くべきものは、事実と、根拠を示した意見だけであって、主観的な感想は排除しなければならないのである。この点に、レポートといわゆる作文との大きなちがいがある。/レポートで事実を述べるのは、その事実に関してレポート作成者が持っている(あるいは、新たに得た)知識を読み手に伝えるためである。[1990:1-2]
◆前章でも<事実>、<意見>……、レポート・論文の類を書くときに第一に必要な心得は、この二つをはっきり別のものとして取り扱うことだ。[1990:15]
◆
(a) 自然に起こる事象(某日某地における落雷)や自然法則(慣性の法則);過去に起こった、またはいま起こりつつある、人間の関与する事件の記述で、
(b) しかるべきテストや調査によって真偽(それがほんとうであるかどうか)を客観的に判定できるもの
を事実の記述という。[1990:25]
◆話題をきめただけの段階で、つまり「……について論じる」ときめただけで、いきなり書きはじめようとしてはいけない。まずその話題について十分に考えをめぐらし、自分としてはこう考える、こういう結論に持って行きたい−−という見通しを立てなければならないのである。資料の調査も終わっていないこの段階で結論を確定するのは無理な話だ。したがってここで考えるのは仮の目標、いわゆる結論の試案である。その後の研究・調査の進行にともなってこの結論は修正される−−ある場合には正反対になる−−かもしれない。しかしとにかく、できる限りの予測と考察によってこの段階で結論を<想定>しておかないと、その後の資料調査(研究)を効果的に進めることができないのだ。
[1990:40]
◆話題の構成・選択に当たっては、次の四つのことを吟味する。
(a) その話題は自分にとって魅力的か。自分はそれに積極的な興味を感じるか。
(b) 自分はそれについて何かの考え−−意見−−があるか。
(c) 自分はそれについてある程度の予備知識をもっているか。
(d) その話題についてのレポートは、指定された長さ(原稿枚数)におさまりそうか。
最後の点、(d)に関しては、項目の組み合わせ方を変えれば話題は大きくも小さくもできることを注意しておこう。[1990:46]
◆目標規定文は
何を目標としてこのレポートを書くのか、そこで自分は何を主張するのか
を示した文(またはごく短い文章)である。これを明文化することには次の二つのメリットがある:
(a) 一字一句を吟味しながら簡潔な目標規定文を仕上げることは、主題−−レポートのエッセンス−−を明確化するのに役立つ。
(b) 目標規定文と照らし合わせながら資料を探索・取捨選択し、またレポートの構成を検討することによって、レポートがすっきりと筋のとおったものになる。[1990:55]
◆レポートで、主題を展開し、裏づけるための材料は、およそ次の三つの方法でえられる:
(a) 自分の頭の中から引き出す(眠っている記憶を呼び起こし、いくつかの記憶を結びつける)。
(b) 調査(自身でものに当たり、ことに当たって調べる)、観察、実験などの手段によって入手する。
(c) 図書、雑誌、新聞などの文献から引用する。テレビ、ラジオのニュースその他を見たり聞いたりするのも、これと同類と考えておこう。[1990:58-59]
◆インタビューについての注意
(a) 事前に相手の著作や業績を調べておく。
(b) 事前に先方の許諾をえる。日時や場所に関しては、こちらの希望(いくつかの日時や場所)を述べてみることは差支えないが、あくまでも先方の意向にしたがう。こちらの身分、インタヴューの目的を明らかにし、もし録音などの希望があればその可否を尋ねておく。訪問前に相手に具体的に質問事項を示すことができればいちばんいい。
(c) 質問事項を書いたメモを手にしてインタヴューすること。質問事項は、どうしてもその人に聞く必要があることを中心として、約束の時間内におさまるように計画する。
(d) 事後、かならず礼状を書き、レポートができたらそのコピーを送る。[1990:65]
◆
(a) レポートは、元来、自分の立てた方針によって材料(資料)をあつめ、その材料にもとづいて自分の意見をまとめるべきものである。
ところが、
(b) 1冊の本だけに頼ってレポートをつくると、その本の著者の意見(すなわち他人の意見)に支配されやすい。
(c) 仮に、その本の著者の意見ではなく、その本に事実として記述されていることだけを引用するとしても、次の二つの問題が残る。
(i)** どの<事実>をえらびだして記述するかの選択に、著者の考えがはたらいているはずである。
(ii)** <事実>として記述してあるものの中に、その本の著者が事実−−ほんとう(真)である−−と信じているにすぎないものが混入している恐れがある。
つまり、文献からの引用を主材料とするレポートは、一つの参考文献だけではなく、いろいろの立場で書かれた文献をひろく渉猟・吟味した上で書かなければならないのである。[1990:86]
◆他人に読んでもらう文書はすべて、
A 誰がこれを読むのか。
B 自分の書くことについて、その読み手はどれだけの予備知識があるだろうか。
C その読み手はどういう目的で、何を期待してこれを読むのだろうか。
D その読み手が真っ先に知りたいのは何だろうか。
という四つのことをよく考えて、書く内容をえらび、それらをどういう順序に書くかをきめ、表現の仕方を検討しなければならない。[1990:111]
◆……大学生の研究レポートは研究論文の習作という性格をもっている。したがって教師の側ではもっぱら学生が
(a) 実力相応に調査・研究を進めたかどうか、
(b) その結果を踏まえて自分の見解を組み上げたかどうか、
(c) そしてきちんとした構成、表現のレポートにまとめ上げたかどうか
に着目するのである。/つまり大学生のレポートでは、A、B、C、Dでいう<読み手>として、現実の読み手である教師ではなく、一般的な読み手−−自分と同格あるいはもう少し上の読み手−−を想定してかからなければないないのだ。[1990:112-113]
◆事実の記述だけを取り出して考えれば、必要な注意は次の三つに尽きる。
(a) その事実に関する情報の中で、何を書き、何を捨てるかを十分吟味せよ。
(b) それを、ぼかした表現に逃げずに、できるだけ明確に書け。
(c) 事実の記述には主観の混入を避けよ。[1990:132]
◆レポートにおける意見の記述についての注意は次の三つである。
(a) 誰の意見かを明示せよ。
(b) 自分の意見は、できるだけ明確に、ぼかさずに書け。
(c) 意見の根拠(となる事実)と、それからその意見を立てるに至る筋道とをきちんと書け。
「誰の意見かを明示せよ」というのは、他人の意見は<その人の>意見として引用し、自分の意見は、自分が責任を負う覚悟で<自分の>意見として書けということだ。レポートで決してしてはならないのは、他人の意見を自分の意見のような顔をして書く、あるいは他人の意見とも自分の意見とも取れるような形で書くことである。他人の意見は引用してもよろしい。しかし、誰の意見であるか、どこから取ったものであるかを明記した上で、その人の真意をそこなわないように気をつけて引用しなければならない。[1990:136]
◆明快な文章の第1の条件は、文章全体が論理的な順序にしたがって組み立てられていること、論理の流れが自然で、一つの文と次の文とがどういう関係にあるのかが即座にわかることである。第2の条件は、一つ一つの文が正確に書いてあって、文の中のことばとことばとの対応がきちんとしていることだ。[1990:144]
◆「簡潔に」というが、短ければいいというものではない。必要な要素はもれなく書かなければならない。必要ギリギリの要素は何々かを洗いだし、それだけを、切りつめた表現で書く。一語一語が欠くべからざる役割を負っていて、一語を削れば必要な情報がそれだけ不足になる−−そういうふうに書くのが、レポートの文章の理想だ。[1990:154]
◆レポートの中のパラグラフの配列には必然的な流れがあるべきだ。パラグラフの最初につなぎのことばが書いてなくても、冒頭の中心文を読めば、これから書かれることと、今までに書いてあったこととの関連が自然にわかるのが本来である。[1990:166]
■書評・紹介
■言及
*作成:片岡 稔