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『人種・国民・階級──揺らぐアイデンティティ』

Baribar, Etienne ; Wallerstein, Immanuel 1990 Race, nation, classe: Les identites ambigues, Editions La Decouverte
=19970306 若森 章孝・岡田 光正・須田 文明・奥西 達也 訳 大村書店 448p.

last update:20100715

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Baribar, Etienne ; Wallerstein, Immanuel 1990 Race, nation, classe: Les identites ambigues, Editions La Decouverte = 19970306 若森 章孝・岡田 光正・須田 文明・奥西 達也 訳 『人種・国民・階級──揺らぐアイデンティティ〔新装版〕』,大村書店 448p.  ISBN4756310192 ISBN-13: 978-4756310194 [amazon][kinokuniya] ※

■内容

多発する民族紛争の中で人種主義は、資本主義の階級分割や国民国家の諸矛盾とどのように結びついているのか。アイデンティティの解体・再構築と近代のパラドックスを解き明かす。」

■目次

序文 EB
 第1部 普遍的人種主義
  第1章 「新人種主義」は存在するか? EB
  第2章 資本主義のイデオロギー的緊張 IW
  第3章 人種主義とナショナリズム EB
 第2部 歴史的国民
  第4章 民族性の構築/人種主義、ナショナリズム、エスニシティ IW
  第5章 国民形態/歴史とイデオロギー EB
  第6章 資本主義世界経済における世帯構造と労働力の形成 IW
 第3部 諸階級/両極化と重層的決定
  第7章 資本主義世界経済における階級コンフリクト IW
  第8章 マルクスと歴史/実りのある思想と不毛の思想 IW
  第9章 ブルジョワ(ジー)/その概念と現実 IW
  第10章 階級闘争から階級なき闘争へ? EB
 第4部 社会的コンフリクトの軸心移動
  第11章 独立後ブラック・アフリカにおける社会的抗争/人種と身分集団の概念の再考 IW
  第12章 「階級の人種主義」 EB
  第13章 人種主義と危機 EB
 あとがき IW
 [解説]近代性の再把握と史的システムとしての資本主義
 訳者あとがき/若森章孝
 新装版への訳者あとがき/若森章孝

■引用

◇序文 EB より

 「人種主義は、現代世界において退行的ではなく、進行的である。[…]しかしながらこれは、一般化された経済の論理や個人的権利の論理と矛盾しないであろうか? けっしてそうではない。われわれ二人の考えでは、ブルジョワ的イデオロギーの普遍主義は(それゆえブルジョワ的イデオロギーの人間主義も)、とりわけ人種主義や性差別主義の形態をとる、ヒエラルキーと排除のシステムと両立しないことはないのである。」(p.18)

◇第1章 「新人種主義」は存在するか? EB より

 「現在の人種主義は、イデオロギー的には[…]「人種なき人種主義」という枠組みのなかに一括される。つまりそれは、その支配的テーマが生物学的遺伝ではなく、むしろ文化的差異の還元不可能性にあるような人種主義なのである。またこの人種主義は一見したところ、ある特定グループなり人びとの、他の者にた(p.37)いする優越性を仮定するようなものではなく、むしろ「たんに」境界の消滅の有害さだけを、生活形態や伝統の両立不可能性だけを仮定しているような人種主義なのである。つまりそれは差異主義的人種主義(racisme differentialiste)(P・A・タギエフ)と正当にも名付けるべき人種主義なのである。[…][この新しい人種主義の理論においては]人種は生物学的に区分し得る単位ではないということ、結局のところ「人間の諸種族」など存在しないということが即座に承認されている。」(pp.37-38)

◇第3章 人種主義とナショナリズム EB より

 「つねに「良い」ナショナリズムと「悪い」それとが存在している。[…]ところが、こうしたナショナリズムの内的分割は、「祖国のために死ぬこと」から「祖国のために殺すこと」にいたるまでの広がりと同じく、本質的ではあるが、同時に分割困難なものでもある。」(p.85)

 「確かに一つの人種主義の哲学が存在するのではない。というのは、人種主義の哲学は必ずしも体系的な形式をとるとはかぎらないからである。今日われわれが直面している現代の新人種主義は、多種多様な歴史的・国民的形態をとっている。「人種闘争」の神話、進化論的人間学、「差異主義的」文化主義、社会生物学などがそれである。このような布置のまわりを、人口学、犯罪学、優生学のような社会的ー政治的言説や技術が取り囲んでいる。」(p.100)

■書評・紹介

■言及



*作成:近藤 宏
UP: 20100715
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