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『現代女性学の探究――二十一世紀にむけて共生時代を生きぬくキーワード』

長谷川 啓・橋本 泰子 編 19960410 双文社,159p.

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last update:20190227

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■長谷川 啓・橋本 泰子 編 19960410 『現代女性学の探究』,双文社,159p.  ISBN-10: 4915477215 ISBN-13: 978-4915477218  [amazon][kinokuniya]

■内容

家族の受容、結婚制度の解体、男女の関係、性の問題、母子関係にまつわる病理の深層、「青い鳥症候群」の若い女性の生き方等を解明することを目的とした、あらゆる分野、視点からの論文集。

■目次

第一章 売春は「悪」か――売春をめぐる言説の過去・現在     加納 実紀代
第二章 虐待児の母親たちの心理                 石川 知子
第三章 二世代に渡る祖母殺しの真相
第四章 日本の家族の変容
第五章 異文化社会における日本女性――西オーストラリア州パース市
第六章 婚姻制度と婚姻の自由
第七章 〈妻〉という制度への反逆――田村俊子『炮烙(ほうらく)の刑』を読む
 終章 特別講演録

■引用


第一章 売春は「悪」か――売春をめぐる言説の過去・現在
1.戦前における売春廃止運動とその論理
 売春は女の最古の職業といわれる。それが事実かどうかは明らかではないが、ともかく人間の歴史のかなり早い段階から売春が存在していたのは確かである。売春とはなんだろうか。
 日本の売春防止法は、「『売春』とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう」(第1条)と定義している。
 日本で売春が登場したのは8世紀の律令国家の時代で、鎌倉・室町時代には遊女屋に抱えられての売春が常態となり、売春女性の隷属が始まる。そして、1898年に家父長制が、確立されると共に女性の貞操が厳しく問われることなり、姦通罪が制定された。しかし、一方で公娼制によって男の買春を容認したので、ここで男性には性的自由、女性には抑圧という性のダブルスタンダードが成立した。
 このように戦前の日本は、この「売春=必要悪」の認識を抜け出せず、戦争中には「従軍慰安婦」制度という恐るべき性的奴隷制度を生み出した。

2.売春法の成立――本土と沖縄
 敗戦=占領は日本の女性に解放をもたらした。公娼制度も「日本民主化」のを主眼としたGHQの占領政策によって、1946年1月24日廃止される。しかし、沖縄では、戦後も売春が横行し、廃止運動も遅々として進まなかった。そして1972年の本土復帰の時になって、やっと売春防止法が完全施行された。

3.売春は「悪」か
 「売春=悪」が問い直されている。なかでも1970年代から欧米では「売春=労働」論が提起されてきた。これは売春は労働力の再生産に貢献している点では主婦の家事労働とかわりない。売春はプロ野球選手やプロレスラーの仕事と同列である。売春婦をエイズ防止のためのセックスのプロと位置づける等の論である。こうした「売春=労働論」は、当然「売春が人としての尊厳を害し」という売春防止法前段の『悪』とする根拠を失わせる。売春は『人としての尊厳』を害さない。人権を侵さない。もし売春が「人としての尊厳」を害する『悪』だとすれば、世のあらゆる労働も同様に「悪」だということになる。

4.「人としての尊厳」と性
 性道徳論による売春否定は「ふしだら」との烙印を売春女性に押すことになりがちだが、「人としての尊厳を害す」という人権論も当の女性の自己認識にマイナスに働く可能性はある。それは性道徳論によるものよりもかえって大きいとさえ言えるかもしれない。性道徳論による烙印が主として『外側』からの押し付けであるのに対し、人権論は女性の内面に関わるものだからだ。性を特殊化しない「売春=労働」論は、そうした問題を解消する上で意味があると言えるだろう。

5.グローバルな視点で女性の人権を
 「売春=労働」はつまりは売春を資本主義社会のなかに「正当に」位置づけ、「堂々と」売春できるようにすることだ。それによって今売春女性が「烙印」のゆえに泣き寝入りさせられている状況が改善される可能性はある。しかしそれによって売春がますます増えるおそれはないだろか。ますます『商品化社会』が進行するということはないだろうか。

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第二章 虐待児の母親たちの心理
1.はじめに
 子供への虐待を防げるか否かは母親が幸福であるか否かで決まってくるといわれている。もちろん、「幸福」が主観的なものである事は言うまでも無い。

2.児童虐待の概念
 アメリカでは、1974年に「児童虐待の予防と治療に関する法令」が連邦議会において制定された。この法令には『児童の虐待ならびに養育の怠慢とは、児童に幸福な生活を送らせる責任のある人物による、18歳以下の児童に対する、肉体的ないしは精神的な外傷、性的虐待、養育の怠慢ないしは過誤を指す。そのような状況においては児童の健康ないしは幸福な生活が損なわれあるいは脅かされる事は明瞭である』と定義されている。

3.虐待児の症例
1 「身体的虐待」に該当するケースの症例
2 「心理的虐待」に該当するケースの症例
3 「身体的・心理的虐待」両方に該当するケースの症例

4.現代社会と育児行為
4-1 生物学的・小児精神医学的にみた育児行為
 ヒトの新生児の誕生は「生理的早産」であり、生後の1年間は「子宮外胎児期」であるとして、形態と機能とがズれて成熟するこの矛盾した形成過程こそがヒトの特徴である。無能で誕生したヒトの新生児は、一年かかって感覚運動機能を発達させ、対象物の・視・聴覚運動機能を発達させ対象物の把握・直立歩行などの人間的な行為が可能となる。

4-2 電話相談の現状の意味するもの
 家事育児は母親が専念すべき義務であり、これを怠るのは『悪い母親』であるという伝統的な女性観や育児観が、現代ではそのまま通用し難くなっていることを意味しています。核家族が普遍的な家族形態となり、女性の社会進出が進展しつつある時代の育児のあり方が改めて問い直されている。

5.終わりに
 虐待する母親の大半は、彼女自身が母親から子供時代からずっと冷たく愛情の薄い育てられ方をしていたり、肉親の縁薄く育ったりしている。そのため、育て方が分からなかったり、知らなかったりする場合が多い。
 結婚・出産を含む家庭生活の維持が、ややもすれば女性側の自己犠牲の上に成り立っている現状を徐々に改革し、生物学的な性差を認識した上での男女平等の実現により、母親に育児を楽しむゆとりが与えられる時代が切望されている。

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第三章 二世代に渡る祖母殺しの深層
1.はじめに
 Y子は、祖母・娘・孫の三世代に渡る家族や孫娘の葛藤など、複雑に絡み合った心理的な問題を背負うこととなる。その理由とはなにか、一体原因は何か、どのようにして、心理療法で解決したかについてみていく。具体的には、「箱庭療法」で祖母殺しをテーマに展開し、追い求めていた父親の助けで、安定した自己像を確立していく過程をみていく。

1.具体的症状の列挙
2.具体的症状の列挙
3.具体的症状の列挙
4.具体的症状の列挙
5.症例検討
 子供は両親の離婚を経験することによって、様々な不安や怒りを味わい、自分が違った身の上になることのひけめ、さらに、どちらかの親に見捨てられたという恨みも強く心に残る。離婚によって失われた父母の代理が、どんなふうに得られているかの方が、子供のパーソナリティの発達にもっと重要だという考え方が家族精神医学者達によって強調されている。
 こどもは親を選択できない。離婚する場合も、自分達の生き方のみにとらわれず、子供たちにも責任を持つ必要がある。そして日本でも離婚率は欧米並に増加しており、子供たちが両親の離婚によって受ける心の傷が軽少ですむような、社会作りが望まれている。

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第四章 日本の家族の変容
1.変わる社会の中で
 近年女性の生き方が大きく変化している。それは人類の半分を占めるものの変化であり、つまりは大きく社会を変える結果となっている。また女性を取り巻く社会の状況がこのように変化するなか、家族や女性に対する考え方そのものに変化がみられるようになり、女性の意識も大きく変わっている。しかし、女性達が自らのみちを自由に選択して突き進んできたとは必ずしも言えず、そこには多くの障害も存在している。また変わろうとしていく女性に対して、戸惑う男性や社会の構図も存在する。

2.女性と家族の変容
 「家」はその永続性と超世代性を原理としており、そのために日本の家族は直系家族の形をとってきた。つまり、見たこともない祖先と見ることもない子孫を含む「家」は、武士階級の家父長への考え方とあいまって、明治以降はいわゆる庶民の家族も形作り、さらには政治機構の末端の役割も果たすようになった。
 そのような「家」制度が第二次世界大戦後否定され、個人の尊厳と両性の平等を謳った日本国憲法第24条を前提に新民法が1948年に公布された。戦後日本の家族はその理想の姿を欧米の家族に求め、家族観を変化させ、家族が縮小していった。
 さらに高度経済成長期は大量生産・大量消費のライフスタイルを生み出し、家族の在り方そして女性の生き方を大きく変化させた。その例として、女性の晩婚化と出産率の低下が挙げられる。また男女の在り方にも変化がみられ、夫婦別姓や家事分担、共働き等の考えを女性が持つようになった。

3.女性のライフサイクル
 明治生まれの女性はその生涯の大半を子供や家族のために費やしていた。嫁となり、また嫁として期待されたことは、一家の働き手となって懸命に働く事であった。これは、かつての日本社会は第1次産業に従事する人が多く、農業や漁業を生業とする場合には女性も非常に重要な労働力と考えられていたからである。
 昭和期になると、平均寿命が70歳ぐらいになり、子育てを終了してからの時間が生まれ、子育て解放期が誕生した。
 昭和後期になると、平均寿命が81.4歳になり子育て解放期あるいは老後と呼ばれる時間を多く持てるようなった。

4.女性と子ども
 女性が必ずしも子育てをすべきであるということはなく、女性にしかできないということでもない。しかし、歴史的経緯や社会の仕組みが現在の日本社会においては、女性と子育てを強く結び付けている。女性のライフスタイルが変化し、例えば女性がそとで働くなどこれまでと違った生き方をしてみようとするとき、子育てということが立ちはだかってくる。
 社会の価値観が多様化することは、女性も男性も生き方の選択肢が広がっていくことである。子育ての在り方は元来多様なものである。日本においても、社会が変わり家族が変わっているのであるから、子どもの在り方・接し方にも変化が起きて当然である。

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第五章 異文化社会における日本女性――西オーストラリア州パース市
1.日本を脱出する理由
 日本を飛び出して、自分の可能性を海外で試そうという若い女性が増えている。異なる社会・文化的背景に飛び込んだ日本の若い女性は、日本社会は男性中心で、強い自己主張をするとまわりからよく思われないと考えている。海外へ飛び出そうとする女性の多くは、日本では会社・学校の社会集団に上手く適合できず、海外で生活する方が自分を生かせると考えている。しかし、海外で生活しても、日本にいる家族の意向・特に両親や友人などのまわりの評判を気にして自分の行動をコントロールする傾向がある。これは、日本においての行動傾向をそのまま海外にまで持ち込んでいることを意味している。

2.ホストファミリーから見た日本人学生

ホストファミリーから見た海外へ進出している若い日本女性の特徴
1 上昇志向・成功しようとする意気込みがある
2 家族や会社から自由になり、外国で教育を受けるために日本で一生懸命働いている。
3 礼儀正しく好奇心がある
4 友達を創ったり、自由を楽しんだりしてオーストラリアを楽しんでいる
5 予想を越えた気前の良い贈り物をする
6 両親が離婚したり別居したりする事を恥としている

しかしこれだけでは、オーストラリアにやって来た動機が不明瞭である。ここには、若い日本人女性の親の意思が働いているようにみえる。日本が経済的に豊かになった現在、親の世代にかなえられなかった夢や、自分たちが今満たされてない欲求を子どもたちに楽しんでもらいたい事が反映している。第二に精神的「甘え」、これは、いつも家族や周りの人間が何とかしてくれる状況にある。このように「甘え」が彼女達の満たされない不満を生み、漠然とした目的意識で日本を脱出しても、問題が解決されぬまま、海外生活を送ることが多い。
3.女性に望まれること
 オーストラリアでは女らしさ、幸せな結婚が望まれているが、これは、日本でも同じである。日本との違いは、若い女性の仕事上の成功、自立した生活を送ることも結婚や女らしさと同列に期待されている事である。また、女性が男性と異なることや女性の権利だけを主張するのではなく、女性と男性が同等で、差別無く教育を受け、同じ権利を持ち、同じ賃金をもらい、同じ方法で職を得るようにすべきと親の世代は考えている。日本においても、自分の娘や女性にこれらと同じことを期待するが、実際にこのような考えを教育し、実践されているかというとオーストラリアよりは、その度合いは低いといえる。

4.友達は自分で探すもの
 異文化での適応には、言語能力の高さは影響を与える。それ以外にも、「何のために異文化にいるのか」をよく認識し、困難や意思疎通の壁を克服するために、排他的にならず、異なる文化のなかの身近な人々に素直に支援を求めたり、信頼関係を維持するよう意識する事が必要である。

5.オーストラリアン・ハズバンド
 オーストラリアは全人口に対する女性の割合が少なく、伝統的にレディーファーストで女性を大事にする。そんな背景を持つためか、オーストラリアの男性は家庭的で、家の中の仕事をこなし、良き父親、良き夫であるという男性が多い。そこへ日本から出てきた若い日本人女性が、オーストラリアに来てもたいした自分の目標も見出せず、思っていたよりも辛い事が多い。そんな状況を脱するために、オーストラリア人男性との結婚に安易に踏み切るというケースがよくある。しかし、そこには自己中心的な男性に捕まって、思い描くような幸せな結婚生活どころか、自尊心が低いとみなされ、虐待されていることすら気付かないという事態に陥っているケースもみられる。

6.おわりに
 日本の若い女性が、「このままでいいのか?」というジレンマは、誰しも思い当たる事だと思う。日本にいても自分の不満を認識し、問題を解決できなければ、外国に行き、生活環境を変えても時間の経過とともに再びその問題に行き当たるのである。日本から運んできた問題、自己実現やアイデンティティの確立が先延ばしにされた事が、異文化における適応にブレーキをかける。異文化に良く適応し、しかも自分自身と日本人としてのアイデンティティを見失わない人ほど、日本においても自己信頼や自己確立感が高く、気分転換も上手である。問題の解決のために外国で生活するのではなく、問題を日本で解決し、次の目標のため、楽しむために海外生活を体験する方が、合理的ではないだろうか。積極的に異文化を体験し自分の目で、文化差や日本の女性を取り巻く環境と海外の女性の現状を比較する事もこれからの生き方に良い指針を与えるものと考えられる。

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第六章 婚姻制度と婚姻の自由
1.はじめに=「強制」から「選択」へ
 日本においては、「結婚」を婚姻として法が保護してくれるための要件が民法によって定められている。この事は、婚姻としてどこまでが「強制」され、どこまでが個人の「選択」として認められているのかを、そしてそれを法が保護してくれるためには、どのような「結婚」であればよいのかが、きちんと制度化されていることを意味している。

2.婚姻の成立と婚姻の自由
2-1 「両性の合意」の意味
 婚姻について、日本国憲法は「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」(24条1項)と規定し、「両性の合意」があれば婚姻が成立するとしている。ここから、当事者間に合意さえあればどのような関係であっても、その「結婚」は法的に保護されるようにみえる。けれども、民法はさらにいくつかの婚姻の実質的要件を定め(民法731条以下)、それに加えて、婚姻の成立には届け出が必要であるとし(民法739条)、個人の選択の幅をかなり狭めている。

「結婚」を婚姻として正当化するための要件
1 当事者の合意の確認
2 婚姻適格性の審査
3 性関係の合法性の承認
4 婚姻の成立の明確化の証明・公示手段の確立

2-2 同性間の婚姻
 日本においては、婚姻は「社会的に夫婦と考えられる一男一女の終生にわたる肉体的精神的結合」と捉えており、したがって、同性間の婚姻は、「社会観念上、婚姻的共同生活」とは認められず、そのような意思を有しても、それを婚姻の意思とは認められない。ここで問題となるのは、同性間の結合に何らかの法的な保護を与えないことは、それを婚姻と呼ぶかは別として、憲法24条の趣旨からしても、合理的ではないことだけは間違いないといえる。

2-3 一夫一婦制
 日本の婚姻制度は、一夫一婦制度が原則とされ、この点に関しては民法732条で、重婚を禁止しているだけでなく、刑法184条で「配偶者のあるものが重ねて婚姻したときは、2年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻した者も、同様とする。」と規定している。

2-4 婚姻適齢
 民法731条は「男は、満十八歳に、女は、満十六歳にならなければ、婚姻をすることができない。」と規定しており、一定の年齢以下の者に対しては、婚姻の自由が認められていない。

2-5 未成年に対する親の婚姻同意権
 民法737条1項は「未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。」と規定している。ただし、その同意は「一方の同意だけで足りる。」としている。この規定は、未成年者の社会的経験の乏しさゆえに、婚姻についても十分な判断能力がなく、「誤った配偶者の選択」をする可能性の高い未成年者に対して、「最も愛情と理解の深い父母の同意を要件とすることによって」未成年者を保護するというものである。

2-6 相手方の制限――近親の場合
 民法734条一項は、「直系血族又は3親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。」と規定している。この制限の理由については、道徳的な観点や優生学上の見地からの説明がされてきた。
 婚姻制度は、身分秩序の基礎を形作るものであり、世代間秩序を混乱させることには慎重でないといけない。

2-7 再婚禁止期間
 民法733条一項は、「女は、前婚の解消又は取消の日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」と規定し、女性のみ再婚を一定期間禁止している。これは、前婚解消後に生まれた子の父子関係が困難になるのを避けることを目的にしたものである。
 しかし、この制度は、法的再婚は禁止できても、事実的再婚までは禁止できない以上、「法律上の父性の混乱は避けれても、事実上の父性の混乱」まで避けることはできない。もし、子の利益となる父性確定のためには、嫡出制度こそ見直すべきで、女性の婚姻の自由を制限しているだけでなく、子の利益にもならないような規定は、廃止すべきである。

3.婚姻の効力と婚姻の自由
3-1 氏の選択の自由 
 民法750条で、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と規定し、婚姻後の夫婦の性は同姓である事を要求している。この規定からすると、同姓である事は強制されるものの、夫の氏か妻の氏かを選択できるようになっているために、一見平等のようにみえるが、実際は、約98%の夫婦が夫の氏を選択するために、妻の改姓を余儀なくされている。しかし、女性の社会進出に伴い、これまで、婚姻の自由がこれ程までに制限されることが注目されることはあまりなかった。なぜなら、婚姻の実質的成立要件に関連する自由の制限は、婚姻をする大部分の人たちにとって無縁のものだったからである。けれども、氏の問題は、これらの制限とは異なり、婚姻をする人の半数が経験する自由の制限であった。

3-2 婚姻と性的自由
 婚姻は性質上性的自由をある程度制限せざるをえない。しかし、法律の解釈のなかで「性的要求権」までの自由の制限があると考えたり、性的自由を制限されていない配偶者の不貞方の相手方に対してまで、制裁として損害賠償を認めるのは明らかに過度な性的自由の制限である。

4.内縁(事実婚)と婚姻の自由
 日本の婚姻制度は、協議離婚制度や財産の夫婦財産制に見られるように、「法律婚であっても、その法定されている効果は、国家が婚姻保護などの観点から一定の内容を当事者に強制するというよりは、むしろ当事者間の協議にまかされる白地規定が多く、実効性のない内容となっている」ために、婚姻をするメリットがなく、したがって、内縁が選択されやすかったといえる。

5.おわりに
 「結婚」を自分の価値観やライフスタイルにあった形で選択することができ、いかなる「結婚」のあり方を選択しても、自由が制限されたり、侵害されない婚姻制度が実現するように努力しないといけない。

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第七章 〈妻〉という制度への反逆――田村俊子『炮烙(ほうらく)の刑』を読む
1.〈良妻賢母〉への挑戦
 〈良妻賢母〉思想は〈男は仕事、女は家庭〉という近代的な性別役割分担制度を支える、近代社会の形成にとって不可欠なものであり、〈近代家族〉の成立と不可分なものであった。

2.父権制秩序への反逆者――父権の解体
 妻は夫の所有物で姦通罪のあった時代に、父権の解体を迫る妻の自己決定権を要求し、父権制秩序そのものを象徴する姦通罪を拒否した、真に過激な言説である。

3.父権制秩序からの越境――〈男〉からの自由と独立
 この『炮烙(ほうらく)の刑』は、〈男〉による所有化を拒み、自由と独立の自立の精神を獲得した、〈男という制度〉からの自決権奪還の物語、いいかえれば父権制秩序からの越境物語といっても過言ではない。


以上。コメントは作成者の希望により略。

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*作成:田中洋平(立命館大学政策科学部4回生)
UP:20020801 REV:20170426, 20190227
フェミニズム (feminism)  ◇性(gender/sex)  ◇2002年度講義関連  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK

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