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『科学の社会史――ルネサンスから20世紀まで』

古川安 19890715 南窓社,262p.


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■古川安 19890715 『科学の社会史――ルネサンスから20世紀まで』 南窓社,262p. 3399 (以下ISBNは2001年の増補改訂版のもの)ISBN-10: 4816502661  ISBN-13: 978-4816502668 [amazon][kinokuniya] ※

■目次
まえがき
凡例
序章 社会における科学
     西洋文明の衝撃と日本
     科学の社会的次元――本書の視点

第1章 2つのルネサンスから近代科学へ
     科学革命とギリシアの遺産
     12世紀ルネサンス
     イタリア・ルネサンス

第2章 キリスト教文化における近代科学
     ベイコンの科学観
     ピューリタン革命と近代科学
     科学の信仰的動機――自然探求者の弁
     機械製作者としての神

第3章 大学と学会
     科学革命と大学
     大学の起源と発展
     大学の興隆

第4章 自然探究と技術
     科学と技術の伝統
     科学のための技術
     技術のための科学

第5章 啓蒙主義と科学
     「光の世紀」と神なき科学
     進歩主義の興隆
     科学の大衆化
     メスメリズム運動

第6章 フランス革命と科学の制度化
     フランス革命と科学
     エコール・ポリテクニクの出現
     ナポレオンの改革
     ナポレオン帝政下のフランス科学の興亡

第7章 ドイツ科学の勃興とその制度的基盤
     フランス科学の「衰退」とドイツ科学の「興隆」
     改革への道
     研究型大学の登場
     ギーセン教育制度
     チーハーの台頭

第8章 科学の専門分化と職業化
     科学の専門分化
     科学の職業化とは何か
     技術者の世界の変化――工学者の誕生
     科学の職業化の過程

第9章 産業革命とイギリス科学
     イギリス産業革命における技術と科学
     化学工業にみる科学と技術の融合
     ヴィクトリア前期のイギリス科学

第10章 アメリカ産業社会における科学
     アメリカの大学と産業
     産業の科学化――GEとデュポンの基礎研究
     科学の産業化

第11章 科学とナショナリズム
     科学における国家意識
     万国博覧会の波紋
     大学付属研究所の出現
     国家の「生存闘争」に向けて――国立試験研究機関PTRの登場
     カイザー・ヴィルヘルム協会の創設

第12章 戦争と科学
     軍事技術と科学
     第一次世界大戦と科学者共同体の再編
     化学戦の展開
     科学者と軍事研究

終章 科学・技術批判の時代


図版出典
関係地図
事項索引
人名索引



■引用・まとめ
太字見出しは、作成者による。
フランシス・ベイコン
フランシス・ベイコン(Fransis Bacon, 1561-1926)
ベイコン思想における自然への姿勢
主体‐客体の分離、自然支配、自然改造の観念
『ノブム・オルガヌム(新機関)』(1620)
「知と力はひとつに合一する。……自然はこれ[知]に服従することによってでなければ、征服されない」

ベイコン主義Baconianism
帰納も実験もベイコンが初めて考案したものではないが、そこには人間による自然のコントロールという姿勢が今まで以上に明確に主張され、管理された実験による体系的なデータ収集、その中から本質的関係を探り出し、公理へと導く方法が具体的に提示されている。それは人々に具体的な形で提示された科学的発見の方法(彼のいう「自然解明の技術」)であった。(p.35)

次の世代のボイル(Robert Boyle, 1627-1691)が新実験科学(New Experimental Philosophy)の旗のもとに進めた自然研究も、その根幹はベイコン主義であった。(p.36)

ベイコン思想における自然への姿勢
主体‐客体の分離、自然支配、自然改造の観念

ベイコン思想のさまざまな起源

キリスト教との関係
人間は自然探究によって神の偉大な力を知ることはできるのだが、被造物の考察それ自体からは神の本質や属性は知ることができない、というのが彼自身の立場であった。(p.38)
「信仰に対しては信仰のものであるものを与えよ」。 この意味で彼は、いかに人間の自然に関する知識が力になろうとも、それは聖書の前には無力であると考えていた。被造物の内に神の属性の刻印を見出してそれを崇めることに意義を認めたボイルに例示されるように、後のベイコン主義者の解釈は、上記のような形で信仰と科学の分離を促したベイコンの視座と異なる部分がある。18世紀以降のベイコン主義には宗教色を払拭する傾向が強まるが、やはり一種のベイコン主義者とみなされるフランスの啓蒙主義者たちは、理性を宗教から切り離すばかりでなく前者を後者に優先させた。(p.38)

17世紀イギリス科学のピューリタニズムとの関係
マートンによる、ピューリタンのエートス…功利主義・経験主義・理性主義、ベーコン的科学観との一致

ピューリタンにとって、神の創造した本来の自然を研究することは、神の知恵と力と善を理解するための有力な手段とされた。(p.39)

プロソポグラフィー

マートン・テーゼへの賛否両論

いずれにせよ、この時期の信仰と科学活動の動機は深いかかわりがあり、プロテスタンティズムの改革運動の大きな流れの中で、ベイコン的な科学観が社会的に広く容認されるようになった、という事実を明らかにした点はまず評価されるべきであろう。(p.40)

イタリアやフランスにおける科学の存在
カトリックの科学者の存在と影響…「クリスチャン・エートス」

イギリスのティム(Thomas Tymme, 1620没)
「天と地を生み出した全知全能の創造主は、2冊の最も重要な書物をわれわれの眼の前に差し示された。1冊は自然という書物であり、もう1冊は聖書である。」(p.41)

ローマ・カトリック教会によるガリレオの異端審問裁判は、キリスト教が科学を弾圧した典型的なケースとして今日一般に喧伝されている。しかし最近の研究が明らかにしているように、むしろそれは個人的・政治的な要素が複雑に絡んだ事件であったのが真相であり、「宗教vs理性の闘争」という単純な対立図式でとらえてしまうと誤解を招きやすい。(p.42)

絶対時間・絶対空間の概念や、重力の原因についてニュートンが巡らした思索の根底には、絶えず神の概念があったことは明らかである。自然の探究は、絶対神の創造物の探究であり、全能なる神の偉大さを知るための営みであったのだから。信仰と科学活動のハーモニー――これが当時の自然探究者の重要なモチーフであった。それは、われわれ現代人が常識的にもっている科学観とは異なる。(p.43)


ボイル…機械論哲学Mechanical Philosophy
偉大な機械製作者としての神


*作成者 篠木 涼
UP: 20080625
科学技術と社会・所有・国際競争・国家戦略・…身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
 
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