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『ターミナルケアの場面(看護とカウンセリングU)』

吉田 哲 19890530 メディカ出版,178p.


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■吉田 哲 19890530 『ターミナルケアの場面(看護とカウンセリングU)』,メディカ出版,178p. ISBN-10: 4895731081 ISBN-13: 978-4895731089 \2100 [amazon][kinokuniya] ※ t02

■内容
(「BOOK」データベースより)
「がんばりましょう」「がんばってね」―激励中心の看護は、時には患者に失望感・絶望感さえ与えている。とくに終末期の患者看護では、看護者の柔軟な姿勢、人間性、共感的理解のあり方などが問われる。本書は、終末期およびその周辺の患者への対応を検討し、心理的援助の実践を目指す。

■目次
まえがき
第T部 心理的援助とは
第1章 心理的援助とその方法
 1.心理的援助とは
 (1)ある患者のかかわり
 (2)心理的援助とは
 2.共感的理解の重要性
 (1)説明や説得、激励が、なぜ役に立たないか
 (2)共感的理解の伝達
 3.共感的理解、コミュニケーションの基本的ポイント
 (1)聞くということ――正確にリピートする
 (2)理解し、消化すること
 (3)対応するということ――的確さと微妙さを求めて

第2章 心理的援助の現実とこれからの教育
 1.心理的援助の臨床としての専門性
 (1)臨床経験年数は積み重ねになっているか
 (2)専門性と日常性
 2.意識的教育と無意識的教育
 (1)意識的教育レベルと無意識的教育レベル
 (2)その人の土台を根底から揺り動かす学習
 3.心理的援助の実践学習
 (1)理屈ぬきの事例学習
 (2)終末期事例検討をとりあげるにあたって

第U部 終末期の事例検討
第3章 いちばん大事な時に、先生がおいでにならなかったでしょ―患者の不当感、不満感にどう対応するか―
<事例>
 1.「水(点滴)」を入れすぎたんですって」
 (1)患者にとっては、すでに終わったことか
 (2)患者の言うことを認めるか、否定するか
 2.「いちばん大事な時に、先生がおいでにならなかたでしょ」
 (1)「運が悪かった」は、理解したことになるか
 (2)「いちばん大事な時に」はどんな意味がこめられているか
 3.「みんな知らない先生でしょ、わからない方だしね」
 (1)複数の意味を感じとれる時には
 (2)不当感、不満感は解消されたか
 4.「気持のうえで落ち着かないことはない?」
 (1)終末期を意識しづぎた対応
 (2)もっと自然な対応を

第4章 立ち直っていくのか、それとも、いや、あの、どういうふうに戻りが戻ってくるのか―病状悪化と患者の取り組み―
<事例>
 1.「放射線はもうだめだと思うんだよ」
 (1)「放射線はもうだめだ」は治療をあきらめたということか
 (2)医療関係者の言葉を敏感に受けとめている
 2.「どんどん体力落ちちゃってるんだよね」
 (1)患者の訴えるニュアンスをどれだけ拾うか
 (2)「どんどん」という患者の根拠
 3.「いったいね、立ち直っていくのか、それとも、いや、あの、どういうふうに戻りが戻ってくるのか」
 (1)患者の病状への認識と期待
 (2)病気と闘うかなり積極的な姿勢

第5章 最近の看護婦さんはそんなにやってくれないもんな―患者は看護婦をどう見ているか―
<事例>
 1.「がまんしてるけど、もう、どういうふうになっているのかな」
 (1)患者が言うのは自分のことか、医療側のことか
 (2)どちらにもあてはまる対応を
 2.「最近の看護婦さんはそんなにやってくれないもんな」
 (1)患者の言うことは客観的事実か
 (2)ひるまずちゃんと内容を聞く
 3.「看護婦さんにもわからないから、もう看護婦さんもあんまりやる気がないわけなんだよ」
 (1)「やってくれる」は患者にとって満足するもの
 (2)看護側の微妙な心理は患者に伝わる
 4.「だって、おたくだってそうでしょう。そう思ってるんでしょう?」
 (1)看護側のプロジェクション
 (2)へたにつくろうよりストレートに

第6章 もう、がんばれないよ―絶望的な表情が意味するもの―
<事例>
 1.「これは、いつまで続けるんですか」
 (1)ストレス性胃潰瘍のストレスとは
 (2)徐々に慣らしていくこと
 2.「もう、がんばれないよ」
 (1)激励がさらに患者に負担をかける
 (2)妻の激励を制するべきところ

第7章 ほんとは、ぼくは落ちこんでいるんだ―患者の落ちこむ事情は何だったか―
<事例>
 1.「ほんとは、ぼくは落ちこんでいるんだ」
 (1)精神的な訴えは軽く受け流そうとしているか
 (2)患者の訴えをカウンセリング的にしっかり聞くとすれば
 2.「そういう人は、いっぱいいるんでしょうけど……。まあ、しょうがない……」
 (1)あれこれ考えずに、まずひとつのことをしっかり聞く
 (2)精神的落ちこみは人間として弱いのか

第8章 医者は知識ありますからね、看護婦は信用できませんよ―患者の腹立ち、いら立ちはどこからきているか―
<事例>
<この会話についての看護婦の感想と反省>
 1.看護婦自身の会話分析のポイント
 2.「医者は知識ありますからね、看護婦は信用できませんよ」
 (1)患者の腹立ち、いら立ちはどこからきているか
 (2)患者の診断的判断をどう受けとめるか
 (3)会話を正確に振り返る
 (4)患者の過激な言葉に振り回される必要はない
 3.「いつも、お熱ないですねとか、いつもと変わりないですかとか言いますが、そんなんじゃ納得しないですよ」
 (1)パターン化された返答の響き
 (2)終末期の患者にはとくに注意を

第W部 終末期その周辺の事例検討
第9章 私も馬鹿ね、変なことまで思ってしまうのね―患者の病識はどこにあるか―
<事例>
 1.「ゆっくり休みことができないんですよね」
 (1)事柄に意識がいってしまうことの問題
 (2)主婦、母親としての生きがい
 2.「おばあちゃんも元気でやってくれるけど……。子どものことも心配で」
 3.「まったく私も馬鹿ね、変なことまで思ってしまうのね」
 (1)今、患者の病識はどこにあるか
 (2)サラリと流し、将来にそなえる

第10章 最近、こわいものに追いかけられている夢をよくみるのね―手術の後遺症か、非情な運命の原初的経験か―
<事例>
 1.「最近、こわいものに追いかけられている夢をよくみるのね」
 (1)手術の後遺症か、非情な運命の原初的経験か
 (2)告知されなくとも身体は大権しているということ
 2.「子宮や膣はちゃんとあるんでしょ。子どもは産めるんでしょ?」
 (1)すぐばれる嘘は避けられないか
 (2)「ほんとうのことを言わない」と「嘘をつく」の区別
 3.「でも、彼と最近うまくいっていないの」
 (1)「よく話し合う」は万能か
 (2)人間的な配慮を常にもって

第11章 「オレ横向くかな、オレがんばっているよ」と言い、自力で横を向く―16歳、下肢切断患者の術後直後の心理をどう理解するか―
<事例>
<このケースについての考察>
 1.患者が頻繁にナースコールをする意味
 (1)患者が頻繁にナースコールをする意味
 (2)ひとりでがんばるということ
 (3)看護側の認識、思いを言葉にして対応する努力の必要性
 2.患者が大声で怒鳴ったり、なじったりしてきたら、どう対応するか
 (1)患者の混乱と動揺の障害受容
 (2)こんな時の激励
 (3)患者の気持ちを受け入れるには最大限の強調語とともに

第12章 マイトマイシンって薬なんだけどね、何の薬かと思って―患者の尋ねる意図はどこにあるか―
<事例>
<会話後の看護婦の感想>
 1.「マイトマイシンって薬なんだけどね、何の薬かと思って」
 (1)質問する患者の意図
 (2)まずどこに対応するか?
 2.「薬って、わりと『○○シン』てつくのが多いんだよね」
 (1)看護側の憶測
 (2)知識は知識レベルとして正確に

第13章 もう一息早く入院したほうがいいかなと思ってね―患者の楽観的な見方にどう関われるか―
<事例>
 1.「しょうがないもんね、こういう病気だからさ」
 (1)今回の入院に対する患者の学習
 (2)患者の人柄の表れか
 2.「そんなに悪くはなかった、いつも言うようにね」
 (1)楽観的な患者の見方
 (2)患者のなかの厳しさと楽観のバランス
 3.「具合悪くたって、かぜだと思うからさ、それがいけないんだけどね」
 (1)看護側はこの患者にどう迫れるか
 (2)「もう一息早く入院したほうがいいかなと思ってね」を、今後、患者は生かせるか

第W部 終末期事例の報告と今後の課題
第14章 「なかなか死ねないものね」それとも「なかなか死なないものね」 元東大病院 輪湖史子
 1.事例紹介
 2.患者との会話と問題設定
 3.検討会でのコメントおよび反省
 (1)「死ねない」と「死なない」の弁別の必要性
 (2)患者に「死のう」と思わせる苦しさとは何か
 (3)「やんなっちゃう」気持ちとその現れ方
 (4)「眠れない」と言う患者の真意
 4.検討会を終えて―当初の問題設定に対する反省と今後の課題など―
 (1)問題点を正しく抽出できること
 (2)応答が類型的になってしまう要因
 (3)患者の“まともさ”を信じることについて
 (4)おわりに

第15章 がん末期患者の看護―対応の難しかった場面のプロセスレコードを検討して 山田赤十字病院 大西千春 川端美行 東堂美代子 河井恵美子 吉村アサ枝
 1.事例紹介
 2.臨床経過
 (1)入院までの経過
 (2)入院後の経過
 3.プロセスレコードとその分析
 (1)胸水の貯留がみられ、他の症状も改善されず苦痛の日々が続く
 (2)微熱が続き全身状態も悪かったが、本人の強い意志で外泊する
 (3)全身の衰弱が進み、夜も眠れないようになる
 (4)「あーあー」「痛い」といった発語だけで、返答もなく、気力でもちこたえている
 4.おわりに

第16章 終末期事例検討において浮かびあがるいくつかの特徴―今後の研究・実践の課題として―
 1.患者の病識がどこにあるか、患者の言動でほぼ推察できる
 2.患者がいかに人間性が豊かであるかということ
 3.会話の中からは看護側の人間性が感じられない
 4.患者の精神的不安定、精神的乱れはどこからくるのか
 5.激励中心の対応から基本的に脱出する必要はないか
 6.あいさつ言葉の見直しを

あとがき

■引用

■書評・紹介

■言及



*作成:岡田 清鷹 
UP:20081015
ターミナル・ケア、ホスピス  ◇身体×世界:関連書籍 1980'  ◇BOOK
 
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