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『税制改革で変わる日本経済』

中谷 巌・本間 正明・八田 達夫 19880929 東洋経済新報社,214p.


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■中谷 巌・本間 正明・八田 達夫 19880929 『税制改革で変わる日本経済』,東洋経済新報社,214p. ISBN-10: 4492610162 ISBN-13: 978-4492610169 1400 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

■説明

内容(「BOOK」データベースより)
効率と公平は満たされるか。ひずみは拡大しないか。21世紀へ向けての税制のあり方を提示。

■目次

第1部 税制改革で変わる日本経済の基盤
 税制改革の理念と現実 本間 正明
 間接税は必要ない 八田 達夫
 国際国家へ飛翔するパスポート 中谷 巌
第2部 改革すべきは何か
 徴税機構に問題はないか
 新消費税導入の根拠を問う
 新たな階層分化―ニューリッチとニュープア
 ボーダーレスエコノミーでの税制のあり方
 税制改革の意思決定プロセスに問題あり

■引用

◆本間 正明 19880929 「税制改革の理念と現実」,中谷・本間・八田[1988:5-24]

 「米国ではレーガン大統領による抜本的な税制改革の試みが先行しつつあった。「第二の革命」とまで言われるレーガン税制改革は、「公平、簡素、経済成長」という三つの目標をたてて強いアメリカを再生しうる新たな税制をつくろうとする野心的なねらいをもっていた。このレーガン税制改革は一九八六年一月から実施に移され、成功裏に終わることになる。
 ロン・ヤス関係をほこった中曽根前首相がこれに影響を受けないわけがない。昭和六〇年の九月に発議をし、シャウプ勧告以来の税制改革の諮問を税制調査会に行ったのが、中曽根税制改革の試みの発端であった。」(本間[1988:5])

◆八田 達夫 19880929 「間接税は必要ない」,中谷・本間・八田[1988:43-71]

◆中谷 巌 19880929 「国際国家へ飛翔するパスポート」,中谷・本間・八田[1988:73-93]

 「日本が税制を決定する場合には、アメリカがどうなっているか、ヨーロッパはどうか、あるいはアジアとの関係はどういう実情にあるかをしっかりと把握したうえで、日本だけが突出しないようにしなくてはいけない。
 この点に関していえば、自民党の税制大綱も政府税調の答申も多少の配慮はしていて、たとえば所得税の税率構造を簡素にしたり、法人税については現在四〇%の法人税率を三七・五%になる方針を打ち出している。<0082<
 しかし、これでも依然、アメリカに比べると、かなりの格差が残る。改正後の所得税の最高税率が日本で六〇%、アメリカで二八%では岡本綾子さんはなかなか日本に戻ってこないだろう。また、アメリカでは法人税率が三四%であることに加え、減価償却制度も日本よりかなり有利である。
 だから、完全に平準化が行なわれたとは言いがたいが、方向としては日米の格差も多少は縮小することになろう。この点では、それなりの評価ができると思う。」(中谷[1988:82-83])

◆中谷 巌・本間 正明・八田 達夫 19880929 「改革すべきは何か」(鼎談),中谷・本間・八田[1988:97-214]

 八田「ヒト・カネ・モノとよく言いますけれども、それの移動の度合がいろいろ違うと思う。法人のように、非常に簡単に場所を移せる場合には、これはいくら番号があっても、本質的に同一の税率にしないといけないあるいは税率を非常に引き下げていかなければいけない。
 人間の場合には、動けるけれども、動く度合が法人ほど楽ではない。教育とか、言語とか、文化、親の面倒を見るとか、そういうさまざまな問題がある。もちろん、将来に関しても移動性が高まっていくわけですね。[…]しかしそこの段階に至るまでは、ある程度、所得税の累進度が外国よりも高いということは許容できるだろうと思う。」(中谷・本間・八田[1988:184]、八田の発言)

 八田「非常に荒っぽく言うと、アメリカの場合、連邦政府は所得税、州政府は小売売上税、市町村は固定資産税中心である。
 […]どうしてかいとうと、同一国内ですから、人の移動が実に簡単なわけである。そのため、ひとつの州だけ非常に累進的な税になってしまうと、カネ持ちはみんな逃げてしまう。それが理由で州単位では小売売上税中心になっている。
 まさに中谷さんがおっしゃっていた問題があるわけです。国全体で累進的な所得税をやるのは可能だ。しかし、一構成要素だけが非常に累進的なものをやったら、もうだめになってしまうという問題がある。人が移動しやすいと、それが問題になる。
 もう一つの問題は、大きな町の周りにいろいろなテミュニティーがあって、カネ持ちの地区があるとする。そういうところは公共サービスが非常にいいわけですね。学校の質もいいし、公園も立派だ。だれでもそこに住みたい。そこで累進的な所得税だったならば、貧しい人がたくさん入ってくる。だから市町村レベルでは所得税はやりにくい。アメリカの市町村税は、固定資産税が中心です。」(中谷・本間・八田[1988:184]、八田の発言)

 「本間[…]たとえば言語のバリアだとか、生活の快適さというか、たとえばシルバーコロンビア計画みたいに、みんなが集団で行くとかという形でやるのならともかく、一般の人のオポチュニティーはそんなに高くない。
 中谷 ある意味で、一般の人のオポチュニティーが高くないから問題なので、国際的に移動する能力とか力がある人は常に有利なことを選択できるけれども、選択できない人が多いから問題がある。
 本間 だから、それこそまさにオポチュニティーが高い人ほど得をするような状況が生まれてきて、実質的に税逃れができる。」(中谷・本間・八田[1988:197])


UP:20081107 REV:20081108,20090731
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