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『死刑執行人の苦悩』

大塚 公子 19880619 創出版,222p.

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last update:20180630

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■大塚 公子 19880619 『死刑執行人の苦悩』,創出版,222p. ISBN-10:4924718734 ISBN-13:978-4924718739 1262+ [amazon][kinokuniya] ※ c0134

■内容

創出版HP

http://www.tsukuru.co.jp/books/2007/11/post-1.html

97年夏、永山則夫ら4名の死刑囚の刑が執行された。死刑という名の“殺人”に関わった刑務官はどんな思いでいるのか。望まない殺人者となる彼らの苦しみを、本書は初めて公開、全国に衝撃を与えた。


■目次

 まえがき
第一章 死刑執行に立ち会うのは誰か
 1、廃止は時間の問題
 2、黒子・刑務官
 3、地球より重いちいさな包み
 4、即日言い渡し
 5、数秒で外される踏み板
 6、泥酔する刑務官
 7、一度に二十三人の執行命令書にサインした大臣
第二章 東京拘置所ゼロ番区
 1、希望に燃えて刑務官に
 2、通称ゼロ番区の一日
 3、二十一歳の死刑囚
 4、「おれ、死刑になっちゃったよ」
第三章 陸奥の刑場
 1、眼下に広がる美観
 2、死出の鉄路の旅
 3、死刑囚の集結地
 4、囚人への情
 5、処刑の日の重苦しい空気
 6、拒否出来ない執行命令
 7、他に仕事のあてがあれば……
 8、天井から垂れ下がるロープ
 9、悟りを教えてくれた死刑囚
 10、立ち会いはごめんだ
 11、回復不能な精神の疲労
 12、満杯の死刑囚房
 13、愛妻には決して話せない
 14、第一子誕生までの不安な日々
 15、「悔しい」のひと言
 16、墓場まで沈黙
第四章 力づくの処刑
 1、重病者との会見
 2、「死にたくない!」の叫び声
 3、孤独をなぐさめる小鳥
 4、規則が生んだ悲劇
 5、悔いの残る“人生の選択”
 6、十日に一人が執行された頃
 7、最後の抵抗
 8、妻も初めて聞いた“告白”
第五章 死刑囚とのきずな
 1、“看守”は権力の最下位
 2、執行官が負う深傷
 3、執行を促した死刑囚
 4、なげやりな日々
 5、なつかしい訛り
 6、“G”の生い立ち
 7、何度もふり返って刑場へ
第六章 法の無情
 1、等しい命の重さ
 2、話すことも供養
 3、善人に立ち直った頃に執行
 4、思いがけない証言
 5、締め技でとどめ
 6、せめて安心立命の境地で
 7、「どうせ死ぬんだ」
 8、わがままを詫びての旅立ち
 9、完全遮断の内と外
 10、死を待つ者への思いやり
 11、外に漏らせば厳重注意
 12、楽しみは訪問者
 13、胸にすがりつき号泣
 14、夢に見た母親
 15、家族も憎悪される社会
 16、母との別れ
第七章 言い渡しをする立場
 1、傲慢な法律
 2、眠れぬ夜はいまも
 3、その瞬間、堅く目を閉ざして
 4、恥ずかしい制度
 5、処刑された男が肩をたたいた
 6、三島由紀夫の訪問
 7、法務大臣もいやがる署名
 8、死刑は誰もがたまりません
第八章 執行人家族の涙
 1、少女時代からの夢
 2、父からのプレゼント
 3、初めてのずる休み
 4、泥まみれのプレゼント
 5、誰にも命令されない人生
 6、ずっしりと重いみやげ
 7、大量の死刑確定者
第九章 連載は終わったものの
 1、一通のパンフレット
 2、死刑確定囚の感想
 3、あとがき

■引用

 「刑務官の服務規程に、「死刑の執行をする」という項目はない」(p.12)

 「国家は国民に人を殺してはならぬと法律に定め、殺人を禁じている。その国家が、死刑という名の殺人を止めようとしないのは、なんという矛盾であることか」(p.32)

 「当時宮城刑務所には刑務官が百人ほどいて、三名ずつ順番に執行を担当することになっていた。順番といっても、どういう順番が組まれているのかは刑務官にはまるでわからない。
 「執行の朝、保安課長から自分の名前を呼ばれるまで、ぜんぜん見当もつきません」>59>
 三名というのは、首に縄をかける役と、膝をひもで縛る役そしてハンドルを引く役である。直接手を汚す、最もいやな役である。このいやな役が、死刑囚舎房担当の刑務官にはいちばん多くまわってきていたようだったとCさんは言う。
 「こっちには殺す理由はなにもないのですから、そりゃあもう言葉では言えませんよ」
 死刑囚たちがかつて殺人事件を起こしたのには、それぞれ動機があって人殺しをしたのだ。金が欲しい、女を犯したい、恨み、憎しみ、さまざまな動機だ。いずれもがけしからぬ理由であれ、殺すときは殺そうという気になって人殺しをしたのである。
 ところが、死刑執行官を命じられた刑務官には殺人の意志はない。そればかりではない。Cさんのように死刑囚舎房の看守という立場の刑務官には、死刑囚をあわれむなどの惻隠の情が強い。」(pp.59-60)

 「刑務官の>62>服務規程に、死刑執行を命じられたら拒否してはならない、という一項があるわけではない。それどころか、死刑の執行をするというはっきりした項目はないのだ。しかし、いやだとは言えない。
 「どうして拒否できないか、理由はいろいろあります」
 まず第一に上司の命令には逆らえないということ。逆らえる雰囲気などないのである。
 第二に、もしいやだといえば、それはただちに刑務官を辞めるという意志表示につながるということ。刑務官は辞めないが、死刑執行はお断りというのは通らない。刑務官の服務規程に、理由なく上司の命令を拒否してはならないと解釈できる一項がある。理由があれば断れるが、人殺しはいやだから死刑の執行はやりたくないというのでは理由にはならない。妻が妊娠しているとか、身内の不幸で喪中であるとか、こういった場合のみである。」(pp.62-63)

 「執行命令を出す法務大臣は、執行官を務めなくてはならない刑務官のことを知っているのだろうか。
 被害者の人権、人格はむろん守られなくてはならないことである。犯罪者が自己の罪を償うのは当然である。けれども、犯罪者に罪を償わせるために、Cさんのように、人間性をまったく無視された任務を命令される刑務官の人権、人格はどうなるのだ。」(p.84)

■書評・紹介


■言及



*作成:櫻井 悟史
UP:20071112 REV:20080622, 0831, 1209, 20100504, 20150203, 0330, 0801, 20180630
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