『税制改革――その軌跡と展望』
藤田 晴 19871225 税務経理協会,312p.
■藤田 晴 19871225 『税制改革――その軌跡と展望』,税務経理協会,312p. ISBN-10: 4419009640 ISBN-13: 978-4419009649 1900 [amazon] ※ t07.
■内容(「BOOK」データベースより)
竹下内閣の誕生に伴って税制改革は、新しい局面をむかえた。本書は、挫折した中曽根税制改革を批判的に検討し、活力ある福祉社会に相応しい租税体系の確立をねらいとして、一般消費税の導入を含む抜本的改革が不可避であることを明らかにした。
■著者紹介(奥付による)
藤田 晴(ふじた・せい)
大阪大学経済学部教授
税制調査会特別委員
年金審議会委員
■目次
第1部 総論
税制改革はなぜ必要か
税制改革における日本とアメリカ
第2部 消費課税の改革
一般消費税導入論の系譜
日本型売上税の構造
EC型付加価値税
日本型売上税の評価
第3部 所得・法人課税の見直し
サラリーマン減税政策の評価
非課税貯蓄制度の改革
法人税の改革
第4部 社会保障と税制
年金税制の改革
所得税と福祉控除
福祉目的税
■引用
第3部 所得・法人課税の見直し
第7章 サラリーマン減税政策の評価
1 累進課税の緩和
1改革案のねらい
「わが国における個人所得税の負担水準は、マクロ的負担率等の国際比較によれば、けっして重いものではない。それにもかかわらず、納税者の負担感、重圧感が問題になっているのはなぜであろうか。昭和六一年の税制改革答申は、その背景として、働き盛りの中堅給与所得者層を中心とした税負担の累増感の問題と、サラリーマンと他の所得者との間における負担不均衡感の問題を重視している。そして、これらに対処するため、個人所得税負担を軽減するとと同時に、制度的枠組み自体を変革することを、所得税改革提案の中心的なねらいとしている。」(藤田[1987:140])
「税制改革答申によって提案されている税率構造の変革は、二つのねらいを持っていた。第一は、大半のサラリーマンが包摂される収入階層に対して適用される、一本の基本税率を設定することである。第二は、所得税と住民税を合わせた最高総合税率を、かなり思い切って引き下げることである。これらのうち第一点は、サラリーマン層の働き盛りにおいて、累進課税による税負担の増加が著しいため、収入の上昇がかならずしも生活のゆとりに結び付かず、税負担累増感がもたらされている<0143<[表]<0144<のを是正するためだと説明されている。また第二点は、過度の累進課税の結果、勤労意欲や事情意欲等の阻害、所得分割等による租税回避の誘発、経済活動の海外移転や人材の海外流出等の弊害が生じるのを、避けるためだと述べられている。」(藤田[1987:143-145])
一九八六年の税制改革答申について。
「ここでの基本問題は、法人所得に対する累進課税の是非である。これについては、答申ははっきりと否定的な立場をとり、税率は基本的には単一の比例税率であるべきだと主張している。その理由としてあげられるのは、累進課税論の基礎にある限界効用の逓減や所得再分配という概念は、本来自然人である個人にだけ当てはまるものだということと、税制は企業規模についてはできるだけ中立的であるのが望ましいということである。」(藤田[1987:211])
■言及
◆立岩 真也 2008-2009 「税制について」,『現代思想』 資料
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◆立岩 真也 編 200908 『税を直す――付:税率変更歳入試算+格差貧困文献解説』,青土社 ※