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『日本型税制改革』

橋本 徹・山本 栄一 編 19870525 有斐閣,309p.


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■橋本 徹・山本 栄一 編 19870525 『日本型税制改革』,有斐閣,309p. ISBN-10: 4641064830 ISBN-13: 978-4641064836 2300 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

■商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
抜本的税制改革への提言!財政再建・長寿社会に直面している日本の税制を、国税・地方税を問わず洗い直し、活力ある税制改革の在り方を大胆に提言した労作。

■目次

序章 税制改革への道
第1章 抜本的税制改革は可能か――所得税・間接税改革を論ず 本間 正明
第2章 長寿社会の税制をめざして 藤田 晴
第3章 国際競争下の法人税改革
第4章 地方分権をめざす地方税改革
第5章 所得税――勤労所得と資産所得
第6章 法人税――その構造と負担
第7章 相続・贈与税等の資産課税
第8章 間接税――個別消費税と負担問題
第9章 売上税の導入問題
第10章 事業税・住民税――国税と地方税の配分
第11章 固定資産税等と地価対策
第12章 過密と過疎の税制――自主財源の確保と地方交付税
第13章 アメリカの税制改革
第14章 ヨーロッパの付加価値税
第15章 英米の地方税改革
終章 税制改革の歩みに学ぶ

■引用

◆第1章 抜本的税制改革は可能か――所得税・間接税改革を論ず 本間 正明 18-36
 「日本の賃金体系は年功序列的な色彩に強く支配された構造になっており、賃金プロファイルが年齢とともに増大していく仕組みになっている。この点を反映して、社会全体の所得分配構造もまた先進諸国ではきわめて平等な部類に属する。
 それにもかかわらず、日本の現行所得税制はきわめて累進的な構造をとり、再分配的機能を全面的に押し出す形になっている。[…]この累進度は諸外国に見られないほどのきつさなのである。
 この年功序列的で所得分配が平等化した日本社会における厳しい累進構造は、ライフステージ間の税負担の配分に大きな歪みをもたらしている。[…]<0020<
 所得税の累進構造の見直し、ライフステージ間の税負担を平準化していくことなしには、中堅サラリーマンの重税感を緩和することは困難である。」(本間[1987:20-21])

◆第3章 国際競争下の法人税改革 牛嶋 正 53-69

 「1.1 法人課税の存在理由
 今世紀の比較的早く時期に法人税が先進国の税制に導入されて以来、法人税の課税根拠或いは税体系における位置付けや役割について多くの議論が重ねられてきたにもかかわらず、まだ、これらの問題について理論上も政策上も十分なコンセンサスを得たわけではない。しかし[…]わが国をはじめとして多くの先進国の税制において、法人税はきわめて重要な位置を占めており、事実が先行した形となっている。[…]
 この点に関して、シャウプ勧告のなかでも次のような叙述が見られる。即ち、「日本のみならず、多くの他の国においても、法人税に対してほとんど<0053<根拠または理論らしいものすらなくして、単に、それらが政治的にも人気があり、税務行政上も容易であるうえに、多くの収入があげられるという理由から、重い課税が行われている」ことを指摘し、法人税が問題の多い税目であることを認めながら、わが国の税制に法人擬制説に基づく法人税の導入を勧告している。このようなシャウプ勧告に見られる姿勢は、現実に個々の法人企業が毎日の経済活動において国および地方公共団体から公共財の供給を通じてさまざまな便益を享受しており、加えて、有限責任会社として事業できる特権とか、資金調達での有利性などが付与されていることから、法人税の課税根拠ないしは法人税のい存在理由は十分に認められるとする立場に立つものである。
 このように法人税の実在を認めるとき、もはや課税根拠について議論を展開するよりも、法人税が税体系のなかで望ましい役割を担うためにどのような税構造をとり、また、どのような課税方法であるべきかを議論することの方が現実的であるとする立場が導出されるだろう。現在、政府の税制調査会を中心にすすめられている法人課税の見直しも、基本的にはこのような立場に立つものといえる。
 1.2 統合主義と絶対主義
 この問題に検討を加えるにあたって、従来から二つの代表的考え方があった。それは、法人擬制説と法人実在説であるが、マスグレイブは二つの立場を統合主義と絶対主義というよび方をしている。このいずれの立場に立って、法人税の税構造や税体系での位置付けを議論するかによって、分析の内容はかなり変わることになるだろう。また、この二つの立場は、「すべての税は自然人のいずれかが最終的に負担することになる」という考え方を貫くか、それとも「法人は株主と分離した実体であり、法人とは別個の絶対税を相応に負担する独自の担税力うもつ」という考え方をとるかによって区分されるだろう。
 ただ、絶対主義に立つとき、個々の法人の担税力をなにで測るべきかという厄介な問題が提起され、仮にそれを測る尺度が見つかったとしても、次に、<0054<その担税力に応じて個々の法人間にどのように税負担を配分すべきかという問題が提起される。そのため、絶対主義の立場に立って、具体的な法人税構造を導出することは非常に困難なこととみなされる。そこで、以下の分析では統合主義の立場に立ち、その他の、担税力は自然人のもとで測ることとし、むしろ法人間の税負担の配分は、その経済活動に応じて国或いは地方公共団体から受ける公共財の量に基準を求めることとする。」(牛嶋[1987:53-55])

◆戸谷 裕之 19870525 「法人税――その構造と負担」,橋本・山本編[1987:108-127]

 「以上、述べてきたような法人税の根拠は、どれもいま一歩説得力に欠けるかもしれない。しかしながらわが国のように、所得税う基幹に据える社会においては、法人税は資本所得に対する所得税の源泉徴収という考え方がもっとも整合的であると思われる。」(戸谷[1987:110])

■言及

◆立岩 真也 編 200908 『税を直す――付:税率変更歳入試算+格差貧困文献解説』,青土社 ※


UP:20081018 REV:20081107, 20090503
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