『いま税制改革をしなければ日本は生き残れない!』
山下 元利 19870429 かんき出版,214p.
■山下 元利 19870429 『いま税制改革をしなければ日本は生き残れない!』,かんき出版,214p. ISBN-10: 4761252111 ISBN-13: 978-4761252113 [amazon]/[kinokuniya] ※ t07.
■著者
山下 元利(やました・がんり)自民党税制調査会副会長・小委員長
■目次
第1章 税調をめぐる攻防
公約違反問題で紛糾した小委員会
百人以上も出席する党税調小委員会
山中会長「政府税調相手にせず」の真意
第2章 財政発動で内需拡大を狙う
このままでは構造化してしまう大量失業問題
地方に公共投資を分散し難局を乗り切る
財政再建への手だては全てつくした
第3章 今、なぜ税制改革が必要か
5年間続いたギリギリの行政改革
所得・法人税の増税では高齢化社会に対応できない
10年前に始まったEC型付加価値税の研究
EC型と日本型の違いはこれだけある
発想の一大転換を今こそすべきだ
なぜ所得税の減税が必要か
なぜ法人税の減税が必要か
まちがっている「売上税で不景気になる」の見方
第4章 私の背中―父・税制・田中元総理
田中元総理が元気になった
政治家・田中角栄氏の今日的評価
人間としての生き方を教えてくれた父
第5章 資料編
〈シャウプ勧告以後〉国税関係の主な税制改正
昭和62年度税制改正の大綱
■引用
第3章 今、なぜ税制改革が必要か
なぜ所得税の減税が必要か
「最高税率は、所得税、住民税をあわせると八十八%。
「私は税金のために働いているようなものです」
高額所得者が、インタビューに答えて自嘲気味にそう言うのをよく聞くことがある。これを六十五%にする。
何も、金持ちをかばうわけではない。しかし、自由主義経済において、「もっと豊かになろう、働こう」という意欲は大事にせねばならない。
「努力をしてもしなくても大して変わらない」
「より一生懸命働こうとしても税引後自分に残るものはそれに比例しない」
というのは悪平等ではないか。それによって意欲を失うことが心配だ。
この六十五%でも、まだ、世界最高の税率だ。フランスは六十五%であったが最近五十八%に下げた。英国が六十%、西ドイツが五十六%、そしてアメリカにいたっては三十八%だ。
二つの国があって、税率が片や八十八%、片や三十八%だったら、どちらの国に住み<0118<たくなるか? 三十八%の国の方が。働く意欲もわいてくる。”そんな八十八%の高税率の国なんて住もうと思わないし、そんな国では愛せない”と言われてもしかたがない。 […]
日本人はよく我慢しているな、と思っている。たとえばアメリカが最高税率を八十八%にしたら、皆逃げ出してしまうのではないだろうか。国民性の違いといえばそれまでだが、、最高税率が上がるだけで、直接関係ない低所得者までが意欲を失ない、経済が停滞してしまうほどだ。
税制改革によって、税率を十五段階から六段階に簡素化し、しかも、課税最低限は二百五十九万五千円にまで引きあげる。その目的は、働く者の意欲を高め、消費を増やし、内需を拡大して経済を活性化させることにある。」(山本[1987:118-119])
■言及
◆立岩 真也 編 2009 『税を直す――付:税率変更歳入試算+格差貧困文献解説』,青土社